喧噪の中に
『ねぇ、五十嵐君。何でフォワードが誰なのか聞いたの?』
『良太のラストパスは結構厳しいとこに出すんだよなぁ。
だからそのパスに合わせられるという事は相当技術があるって事。』
『そうなんだ~!』さやかは感心している。
『あっ!今思い出した!良太め、あいつ俺を騙したな!』
『えっ?騙した?何を?』
『良太、彼女いないって言ってただろ?あの梅野ってマネージャー、
小学生の頃、よく良太の試合見に来てたからな。』
『えっ、それが何?』
『あの三人、良太の事を探しているみたいだったろ?』
『そうだね。はぐれちゃったのかな?』
『そうだとすると良太とあの友人A、それに坂井って子と梅野っていう
マネージャー。ダブルデートだろ?』
『あっ、そうかぁ!』さやかは益々感心した。
『良太め、更に倒したくなったぜ!』
五十嵐は三人が出て行った出口を見て呟いた。
三人は走ってゲームセンターに向かい店内に駆け込んだ。
クリスマスの装飾が、鮮やかに店内を包み込み
周りはカップルの話し声が響いている。
『良太はいるかな?』
『まだいるかも知れないし、探そう!』
三人は店内の至る所を見てまわったが、ここで
僕は見つからなかった。
だってもうこの場所にはいなかったからね。
『良太、いないね。』
『五十嵐、本当にここで良太の事を見たのかな?』
『光井さんもここで良太に会ったんだから、
居た事には間違いないと思うよ。』
『もしかしたら帰ったのかな?それとも別の場所に行ったのかな?
飯島、良太の行きそうな場所知らない?』
『う~ん、良太の行きそうな場所か?わからないよ!』
『そっかぁ。』三人は落胆しゲームセンターを出た。
『どこに行こうか?』飯島が二人に聞く。
『う~ん。』有紀は悩んでいる。
『梅野は?』飯島は梅野に聞く。
『奈津子どうしたの?何だか顔色悪いみたいだけど・・・』
覗き込むように有紀は梅野を見ている。
『うん、大丈夫だよ。』
『梅野、本当に大丈夫?』
『うん、ちょっと休めば平気だから・・・』
『奈津子も体調すぐれないみたいだし、
良太も見つからないし、解散しない?』
有紀は二人を見て言った。
『クリスマスだけど仕方ないよね。』
飯島も有紀の意見に賛成した。
『私なら大丈夫だから。』梅野は申しなさそうに言う。
『奈津子、気にしないでいいよ。まだ初詣もあるしね!』
有紀は奈津子を励ますように言う。
『そうだよ、今日は無理するなよ。』飯島もあとに続く。
『うん、ありがとう。』
『じゃあ、次は初詣に!』三人はそう言うとそれぞれ別れて帰った。
飯島は随分あとになって、この事を僕に言った。
『あの日、俺が梅野を自宅まで送っていたら、
あんな事にはならなかっただろうと・・・』
『それもまた運命だよ、飯島。』




