ラストパス
『えっ、良太?』有紀はびっくりしている。
『良太って名前、あいつだけじゃないだろ?』
『良太・・・』梅野が小さく呟く。
後ろの席では会話が続いており、三人は聞き耳を立てる。
『良太にやきもちか?どうして?』
『だって五十嵐君、あの良太って人と話している時、楽しそうだったし。』
『相手は男だろ?友達だよ。』
『でもライバルなんでしょ?』
『まぁな!ライバルだな。』
『五十嵐君、負けないでね!』
『良太がミッドフィルダーになったって事はかなりやばいけどな!』
この言葉に三人は固まった。
『五十嵐君に良太、やっぱり、良太だ・・・』
梅野はぽつりと呟く。
有紀と飯島は梅野を見つめる。
『良太と話していた聞いてただろ?あいつ、フォワードだった時から
点を取るのもそうだけど、ラストパスは最高なんだよ。』
『うんうん。』彼女は頷いている。
『という事はあいつのラストパスに反応出来るフォワードが
いるって事だろ、ミッドフィルダーなら色んな所に
パスを出せるからな~。』
『じゃあ、五十嵐君、良太って人とそのフォワードの人に
絶対負けないで!』
『あぁ、絶対負けないから心配するな、さやか!』
この会話を聞いた三人はさっきよりも更に俯いた。
『飯島、あんたの事だよ、ラストパス受ける人は。』有紀は呟く。
飯島は持っているスプーンを置くと、おもむろに立ち上がり、
後ろの席に行こうとしている。
有紀と梅野は『負けないで!』の言葉に反応して飯島が立ったと思い、
服を引っ張って止めようとしている。
その姿に、後ろに座るカップルが気付き三人を見てくる。
飯島は梅野と有紀の手を振り払い、後ろのカップルの所へ行く。
『あのさ、突然で悪いんだけど良太って、筑紫学園中の宮内良太の事?』
カップルの男性の方が、怪訝そうな顔で飯島を見る。
『あぁ、そうだけど。君は誰?』
『良太の友達なんだけど、良太の事探してるんだ。
よかったらどこにいるか教えてくれない?』
『良太と友達?筑紫学園中?』
『そうだよ、同じ学校で、同じサッ・・・』
言おうとした飯島を制して、有紀が話しかける。
『ほんと突然ごめん、良太はどこにいた?私達はぐれちゃって!』
『良太ならこの近くのゲーセンで会ったけど・・・』
『ほんと!ありがとう!私は良太と同じ学校の坂井有紀、
隣がサッカー部マネージャーの梅野奈津子、そして友人Aの飯島学。』
有紀と梅野は二人におじぎする。
『何だよ、友人Aって!』飯島は口を尖らせる。
『俺は筑涼中サッカー部の五十嵐啓太、
こっちはサッカー部の光井さやか。』
五十嵐とさやかも三人に挨拶をする。
『よろしく!ところで良太は一人だった?』有紀は五十嵐に聞く。
『一人だったよ、それと梅野さん、ちょっといいかな?』
『なに?』
『筑紫学園中のフォワードって、どんな人?』
『二年生の松田先輩と柊先輩だけど。それがどうかしたの?』
『いや、二年生じゃなくて一年生のフォワードは?』
『えっ?なんでそんな事聞くの?』
『五十嵐君、やめなよ。』さやかが間に入る。
『いや、良太がミッドフィルダーになったって聞いたから、
あいつのラストパス受ける奴がどんな奴か知りたかったんでね。』
『それは内緒!』
『これでも良太とは小学生の時に同じサッカーチームで
ツートップをはってたからね。』
『そうなの?』有紀は驚いている。
『あいつの、良太のラストパスは小学生の頃から
最高のパスを出してたからね、ライバルとしては尚更知りたいじゃん!』
五十嵐は笑いながら言う。
『それだったら尚更教えないよ。』梅野も笑顔でこたえる。
『ガード固いなぁ!流石マネージャー!じゃあ、今度覗きにくるよ。』
『どうぞ!』五十嵐と梅野は笑っている。
『じゃあ、私達そろそろ良太のとこに行くね。
ありがとう。五十嵐君、光井さん。』
有紀はそう言うと出口に向かった。
有紀を追うように、飯島と梅野も出口に向かう。
三人は店内を出て、有紀は梅野と飯島に言った。
『奈津子、飯島。次に行く所は決まったわね。』
『あぁ、あそこのゲーセンだな!』
『まだいるかな?』
『とりあえず行ってみよう!』
三人は駆け足でゲームセンターに向かった。




