それぞれのクリスマス
待ち合わせは街にある大型ショッピングモールの入り口。
飯島は待ち合わせの10分前に着き、1人そわそわしている。
3人とはいえ梅野と過ごせるクリスマス。
『早いねぇ~!やっぱり良太は来てないんだ・・・』
飯島の背中越しに有紀が声をかける。
『よっ、坂井。あれ、梅野は?』
『心配しなくても奈津子ももうすぐ来るよ。
あんた本当、奈津子一筋だねぇ~。』
『何、言ってんだよ。』
『まぁ、そうなってもらわなきゃ私も困るしね!』
『どういう事だ?』
『気にしなくていいよ。あっ、奈津子来たよ。こっちこっち!』
有紀は梅野を見つけると手招きして梅野を呼ぶ。
『ごめん!遅くなって!』梅野は息をきらして言う。
『そんなに慌てなくても。』飯島は笑顔で梅野に言う。
『だって2人が待ってると思うとね。』梅野は笑顔でこたえる。
『ねぇ、奈津子。やっぱり良太は来ないの?』有紀は梅野に言う。
『ここに来る時に寄ってみたんだけど、良太は家にいなかったよ。』
『良太、何か用があるとは言ってたけどな。』
『家にいなかったの?飯島、どこに行ったのか知ってる?』
『さっきも言ったけど、何か用があるしか聞いてないし。』
『そうなの?奈津子は何か聞いてる?』
『私も何も聞いてないわ。』
『私達と遊ぶ事より、他に重要がある訳?』
有紀は不満を顔に出ている。
『有紀、来ないんだから仕方ないないじゃん。
それより映画始まっちゃうよ。』
『なんだか今日は私はお邪魔じゃないかな?』
『何言ってるの、有紀!あなたが言いだしっぺなんだからね!』
梅野は有紀の手をとり、チケット販売窓口へ引っ張っている。
その頃僕は特にどこに行く理由もなく、
ただ冷たい風の吹く街の中を歩いていた。
クリスマスイブと言うだけあって、
街は恋人達や多くの家族づれを見かける。
いつも以上に距離が近い恋人達を見ると、
何故、僕はここにいるのだろうと考えてしまう。
『とりあえずゲーセンでも行って時間潰すか。』
僕は街の中で一番大きなゲーセンに入る。
ゲーセンの中も恋人達が異様に多い。
『おーい、良太!』ゲーセンに入るとすぐに僕は声をかけられた。
振り返るとそこには、小学生の頃同じサッカーチームで
一緒にフォワードのポジションをしていた五十嵐が立っていた。
五十嵐は校区が別だった為に隣町の中学校へ入学した。
五十嵐とは小学生最後の試合以来、久しぶりに会う。
『よぉ、五十嵐!久しぶりじゃん!』
『良太も元気だったか?』
『まぁ、ぼちぼちやってるよ。五十嵐は?』
『俺も同じだなぁ、サッカー続けてるか?』
『あぁ、ポジションは変わったけどな。』
『へぇ、フォワードからどこに変わったんだ?』
『今はミッドフィルダーだよ。五十嵐も続けてるか?』
『もちろん!相変わらずフォワードだよ。
ミッドフィルダーになったのか!良太らしいや!』
『俺らしいってどういう事だよ。』
『ラストパス上手かったじゃん。』
『そぉ~か?』
僕と五十嵐がお互いの事を話していると
『五十嵐くん。』と呼ぶ声がした。
振り向くと、そこにはセミロングのかわいい女の子が立っていた。
『あっ、さやかか。』
『五十嵐、彼女か?』
『まぁな、紹介するよ。光井さやか。
俺らのサッカー部のマネージャー、さやか、これが噂の良太だよ。』
『どうも。噂って何だよ?』僕はいつもと変わらない挨拶をした。
『光井さやかです。良太君ね。いつも啓太から話は聞いてる。』
『何の話?』
『お前を倒さないと、県大会に出られないって事!』
『何だよそれ?』
『だってそうだろ?俺達は今はライバルだしな。』
『まぁ、そうだなぁ。』
『お互い頑張ろうや。そう言えばお前、彼女は?』
『いないよ、今日も一人だよ。』
『小学生の頃、よく試合に見に来てた二人いたじゃん。』
『あぁ、でも一人は転校したからなぁ。』
『そっかぁ・・・』
『五十嵐君、そろそろ行こ。』
『おぅ、じゃあまたな良太!』
そう言うと五十嵐と彼女はゲーセンの奥に行った。
『五十嵐、俺は肝心なところではラストパスをカットされるんだよ。』
僕は知らず知らずの内にため息をつき、店内を見渡した。




