作戦開始
サッカー部の練習が終わると同時に有紀は、
部室の前で飯島を待ち伏せしていた。
『おつかれ~、飯島!』
『あれっ、坂井。どうした?』
『今から帰るの?』
『そうだけど、良太はまだ中にいるよ。』
『良太はいいの。ちょっとこっちに来て。』
『俺、良太と一緒に帰る予定なんだけど~。』
『今日は私と帰るの!わかった?』
そう言うと有紀は、隠れていた奈津子に目配せして、
飯島の手を無理矢理引っ張って連れて行った。
10分後、良太が部室から出てくると飯島の姿はなかった。
替わりに奈津子が立っている。
『あれっ、梅野。飯島見なかった?』
『飯島なら用事が出来たから、先に帰るって言ってたよ』
『そっかぁ、あいつ一言くらい言って帰ればいいのに。』
『急いでたみたいだから、仕方ないんじゃない?』
僕はそれでも納得いかず、ふて腐れていると、
梅野が僕に聞いてきた。
『良太、帰りに何か用事ある?』
『別に何もないけど・・・』
『一緒に帰らない?』
『あぁ、一緒に帰ろう。』
そう言うと僕と梅野は二人で校門に向かった。
『そんなに引っ張るなよ。』飯島は有紀に言う。
『痛かった?まぁ、その程度の痛みくらいでそんな顔しないの!』
有紀は掴んでいた飯島の腕を放す。
『何だよ、坂井。何かあったのか?』
『飯島、あんたクリスマス何も予定なかったよね?』
『予定入ってなくて悪かったな!』飯島はふて腐れる。
『予定入ってなくてよかった!』
『何だよ、それ。』
『あのさ、クリスマス一緒に過ごさない?』
『はぁ?坂井と?』
『あのね、最後までちゃんと話を聞いてよね。』
『何だよ、全く。』飯島はうんざりとした顔をしている。
『クリスマスに奈津子と私、飯島と良太の四人で遊ばない?』
『四人で?どこに行くんだよ。』
『まぁ、映画でもいいし、ゲーセンでもいいじゃん。』
『つまり、四人で遊ぶという事だけで、あとはノープランかよ。』
『そういう事~。』有紀は飯島とは対照的に明るい表情で話している。
『梅野と良太は参加するのか?』
『奈津子は確定。良太は飯島が来るなら参加確定でしょ!』
『そぉ~かぁ?』
『当日、何をするかは飯島、考えておいてね。
あとプレゼントもよろしく!じゃ~ね。』
そう言うと有紀は右手を軽くあげて、走り去って行った。
飯島はただそこに立ちすくむだけで、走り去る
有紀の背中を頭を抱えて見ていた。
『まぁ、クリスマスに梅野も来るならそれもありか。』
校門を僕と梅野は揃って出ていった。
二人ならんで帰るのは久しぶりだ。
『あのさ、良太。』
梅野は僕を見つめて話しだした。
『どうした?梅野。』
『いやぁ、部活どうだった?』
『部活?どうっていつも通りだよ。』
僕は梅野を見つめる。
『良太、あのさぁ~。』
『さっきからどうしたんだよ?何かあったのか?』
『あのね、クリスマスって、何か予定ある?』
『クリスマス?特に予定ないなぁ~!』
『やっぱり・・・そう。』
『やっぱりって何だよ、予定なくて悪かったなぁ!
家でテレビ見て寝るだけだよ。』
『本当に予定は全くないの?!』
『じゃあ、梅野がクリスマス付き合ってくれるか?』
『えっ?』
『えっ、じゃないだろ。クリスマス予定入れて欲しいなら、
梅野付き合えよ。』
『そういう事はもう少し早く言って!』
『はぁ、何で怒るんだよ~!』
『もういい!』
梅野は怒って帰って行った。
僕は何が何だかわからないまま、そしてこのやり場のない思いを
転がっている空き缶にぶつけた。




