誰が本命?
『おはよう、良太。』梅野が声をかける。
『よぉ!』僕は軽く挨拶をした。
まだ心の中はざわついた感じがしている。
『どうかしたの?』梅野が僕の顔を覗き込む。
『いや別に。』僕は心の中まで見透かされそうで、
思わず視線を逸らした。
『何か今日の良太変だよ?』梅野がそう言うと同時に、
『おっす!』飯島が声をかけてきた。
『おっす、良太、梅野。』飯島は僕の背中をポンと叩く。
『よっ!』僕は軽く挨拶をする。
『どうした?』飯島は梅野と同じように
僕の顔を覗き込んでいる。
そして飯島と梅野は顔を見合わせている。
その二人を見るたびに、僕の心はざわつく。
『おは~、良太。』
後ろから大きな声で、僕の名前を呼ばれた。
僕は振り返えると、坂井有紀が走ってやってきた。
『奈津子に飯島もいたんだ。』
『有紀、良太の事知ってるの?』
『うん、昨日ね!それより二人はクリスマスの予定は?』
『私?』梅野は有紀の顔を見てこたえる。
僕のざわざわは激しくなってくる。
『私はまだクリスマスの予定なんてないよ、有紀は?』
梅野の有紀に対する返事に僕のざわざわは少しおさまった。
『私はどうかな?ねっ、良太。』
『えっ?』
僕は思わず、有紀の顔を見る。
梅野と飯島も僕と有紀の顔を見る。
『どういう事?』梅野が僕の顔を見つめる。
『どういう事って言われても・・・俺もわからない。』
『わからないってどういう事?』
梅野は僕に食ってかかってきた。
『あはは、奈津子。冗談よ。私も予定なしよ。』
『ほんと?良太。』
梅野は僕を見つめるが僕は頷くだけだった。
『昨日、良太と一緒に見たんだ。奈津子と飯島が
宝満川に二人きりで話していたところをね。』
飯島と梅野を顔を見合わす。
『クリスマスの打ち合わせじゃなかったの?』
有紀は飯島と奈津子を見る。
『昨日は・・・』梅野が言いかけた時にチャイムが鳴る。
『遅刻しちゃう!奈津子、走るよ!』
有紀はそう言うと、また正門に向かって走りだした。
僕達も急いで走りだした。
今日一日の授業も終わり、僕は飯島としみじみと
偉そうだけど今年の総括っぽい話をした。
『今年もいよいよ終わりだな。』
『まだ正月の前にクリスマスがあるけどな!』
『なぁ、良太。俺、昨日梅野に告白した。』
『えっ!』
『驚く事でもないだろ?俺は小学生の頃から
梅野の事を好きだったんだから。』
『あぁ、そうだな。返事は?』
『返事、気になるか?』
『まぁ、気にならないと言えば嘘になるな。』
『返事はまだ無い、お前は梅野の事どう思っている?』
『俺は・・・』
俺は梅野の事をどう思ってるんだ・・・
小学生の頃からの付き合い。
ただそれだけなのか?
俺の好きな人・・・やっぱり『希ちゃん』なのか?
『俺はわからない。』
『わからない?何が?』
『何て言ったらいいのか・・・』
そう言うと黙り込んだ僕に、飯島は敢えて答えを求めなかった。
『俺は梅野とクリスマスは一緒にいたいと思っている。』
飯島はそう言うと、スパイクの紐を結び終え、
グラウンドに飛び出して行った。
俺は飯島みたいにはっきり誰が好きだと言えない。
『一体誰が好きなの?希ちゃん?梅野?それとも他の誰かなのか?』
その答えを一つも見つけられないまま季節だけが過ぎていく。




