すれ違う思い。
『良太君、久しぶり!もう私の事なんて忘れてると思ってたよ。
サッカー続けているんだね、奈津子ちゃんから手紙で教えてもらったよ。
私もサッカー部のマネージャーになりました。
奈津子ちゃんもサッカー部のマネージャーになったって聞いたから。
もし私が引っ越さなかったら私が良太君が入ってるサッカー部の
マネージャーになってたかな?奈津子ちゃんも良太君も頑張ってるね!
写真見せてもらったよ!私も負けないよ~!』
忘れてなんかいないよ、希ちゃん。
僕はこの手紙を梅野に見せてあげようと思い、学校に持っていった。
思えば純粋に希ちゃんから手紙が欲しかったのか、
それとも梅野と話すための口実なのか、
それは今では忘れてしまった。
僕はいつものように、部活へ出て練習をする。
梅野はいつものように、僕らの練習を見ている。
部活が始まる前に梅野を呼び出した。
『梅野、今日部活が終わった後、ちょっと時間あるか?』
『えっ、何?時間あるけど。』
『じゃあ、部活終わったら待っててな!』
『うん、わかった!』
梅野は笑顔でこたえた。
梅野のこんな笑顔を見たのは本当に久しぶりだった。
今日の部活は身体がいつもより動いている。
久しぶりに梅野と話す機会がくる。
本当に久しぶりだ。
いつものようにグラウンドを走っている。
もちろんいつものように、僕の横には競うように飯島が走っている。
『お前には負けたくないんだよ。』 飯島は僕に言う。
『何でそんなに俺と張り合うんだ?』
『なんでかな?ただ何となく負けたくないんでね。』
『そっか、俺もお前には負けたくないね。』
僕はそう言うと、飯島と張り合うようにグラウンドを走り回った。
飯島は息をきらしながらも、僕に着いてくる。
僕は更に走るスピードをあげて、飯島を引き離す。
だけど、飯島は少し離されながらも着いてきた。
1年生の中では、僕に続いてゴールした。
息をきらして、グラウンドに横たわる飯島の傍に行き、
『やるじゃん!』と声をかけ、
飯島の手を取ると立ち上がらせる。
『サンキュ!』と飯島はそう言うと笑顔を見せる。
そう言えば飯島の笑顔を間近で見るのは初めてかも知れない。
梅野がグラウンドの隅で待っている。
何か考え事をしているように俯きながら、何を考えているんだろう?
『悪い、遅くなった!』
『いいよ、そんなに待ってないし。』
僕と梅野は一緒に校門を出た。
『梅野は飯島と付き合ってるのか?』
その一言を聞きたかったけどなかなか言い出せなかった。
心の中とは裏腹に僕は、部活の事や中間試験の事を話題にした。
そしてあの公園に着くと、二人でブランコにのる。
『ねぇ、話って何?』梅野が先にきりだした。
『あっ、うん、あのさ、梅野は何でサッカー部のマネージャーになったんだ?』
『えっ、突然、何?』
梅野は僕が聞いた事が予想もしていなかったのか戸惑っている。
『マネージャーになった理由は・・・特にないわ。
ただ何となくね。話ってこの事?』
『いや希ちゃんから聞いたから、写真も送ったんだろう?』
僕が笑いながら言うと、
『ふ~ん、希ちゃんから聞いたんだ。』
『希ちゃんもサッカー部のマネージャーになったんだって。』
『それで?なに?』
『それでって?』
梅野の顔を見ると退屈そうな顔をしている。
『希ちゃんの話、終わったの?終わったなら帰るわ。』
梅野は座っていたブランコから立ち上がる。
『あのさ・・・』
僕は帰る梅野を引き留めるように声をかけた。
梅野は振り返りこっちを見る。
『あのさ・・・梅野は飯島と付き合っているの?』
僕は梅野を見てそう聞くと、
『はぁ~、何言ってるの?バカバカしい!』
梅野の怒りは頂点に達したようだ。
『もう帰る!』
梅野はそう言うと走って帰っていった。
次の日の朝、校門の前で梅野と会った。
昨日の事を気にした僕は横を通り過ぎる梅野に、
何も言えなかった。
梅野はこっちを見てたが、僕が話かけてこないと感じると
下を見つめていた。
そして、事件は放課後に起きた。
突然、梅野はマネージャーを辞めたいと、女子の先輩に退部届を出した。
先輩が理由を聞いても、最もらしい理由は何一つもなく、
ただ『辞めたい。』との一言だけだったらしい。
僕は昨日の事が原因である事はわかっていた。
梅野は簡単に物事を辞めるような奴じゃない。
僕は梅野のあとを追った。
だけど僕の前に現れたのは梅野ではなく、飯島だった。
飯島は僕の姿を見つけると、
走って近寄り、いきなり胸倉を掴み、
『梅野に何をしたんだよ!』と怒りに震えた声を出した。
『お前には関係ないよ。』
『関係無いだと?やっぱりお前絡みかよ!』
僕は黙って飯島の掴んだ腕を払いのけ、梅野を探した。




