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黒ノ十三~刃心千乱~



 たとえ心があったとしても、犬は犬、猿は猿、草は草で、石は石、何も変わりはしない。

 知恵を持とうが優れていようが関係ない。

 何故なら我々は我々だからだ。

 我々とは何者か?

 君がよく知っている何者かだよ。


 すべての物事はその程度のものだ。



9、


 画面にはノイズが走っている。

 先程までは世界に残ったほぼ全ての忍び達の喧々号号を映し出していたが、十三が仕掛けられていた爆発物を起爆したため、同じく仕掛けられていたカメラも全て灰燼と化しただろうから、当然といえば当然だろう。

 「・・・」

 無言で手元の機械をいじり、ノイズを流すだけの映像を無言で切る。

 映像は全世界に向けて配信されていたが、主に特定の場所に集った残りの人類達に見せてやるためだった。

 少し中途半端なことになったが、見せるべきもの、あるいはそれ以上のものを発信することは出来ただろう。

 「・・・」

 無言のまま、とはいえ独りでいるのだから当然だが、その男は次に機械を新たに操作して画面を別のものに切り替えた。

 それはまた違うカメラが捉えている映像だった。中継はすでに終えているためその独りだけが見ているその画面には、縮尺の遠い地表が写っている。

 地球の周回軌道に残る軍事偵察衛星の一つを動かし、地表を拡大望遠して写しているのだ。

 やがて映像は焦点を定め、ある一点をどんどんと拡大していく。誰もが予想するだろう通り、十三達が争うその場所をだ。

 「・・・」

 独りはその映像を見ながら、不意に何かに耐えるようにその手の甲を噛んで歯を食いしばった。

 肉が破られ血が流れ出すほどに噛みしめ、ひとしきりした後、映像の中で十三達が再び戦い始めたのを見届けると、機械に再び手をかけて操作を始める。

 「・・・だろうな。わからないものだろうな」

 そして肺腑の底から絞り出すように独り言を絞り出して、独りは臍を噛んだ。

 


 思考があればそこには知恵があり、知恵があるならばそれは高次の意識を持ち、高次の意識を持つ存在は人と変わらぬ価値を持つか、人そのものである。

 そういったモノが敬われなければ、人とは敬われるべき存在ではないだろう。故に人は高次の意識を持つ存在を軽んじてはならない。

 正論ではある。一見おかしなことなど何もない話のように聞こえもするだろう。

 だが、狂っている以前に破綻していて話になどなっていないのだ。

 どうして敬わねばならないか?何故ならばそれは、敬われるという利益を享受するために対象が提示した条件だからだ。そして敬われる存在でいるために、人は高次の存在でいようと価値を提供するからだ。

 たとえば急に家畜の豚が天啓を受けて知恵に目覚めたところで、所詮は豚だ。豚が知恵を持っているという価値で家畜の位置より離れられたとしても、結局のところ豚であるからこそというお題目が付いて回る。

 その豚の知恵が凄まじく、その知恵がもたらす恩恵が尋常ではないものであったとしても、高次の豚であって豚でしかないことに間違いはないのだ。

 ただ単に豚がそれほどの存在なのだとしたら、人は豚以下であるというだけの話になるというだけで。

 高次であるか否かは人という存在に冠されず、知恵によってもたらされる恩恵を持ってのみ計られる。その時点で価値があるのは高次であることだけだと知れる。

 そして悲しいかな、人ですらその大半はおそらくにして高次ではない。人という高次に手を伸ばしている種族の一隅を担っているというだけで、「同じものである」と嘯いているだけに過ぎない。

 つまり人は高次になれる、あるいは至りやすい、というだけでしかなく、人であることがすなわち高次であるということでは断じてない、あり得ないのだ。

 あまりに当たり前の結論にすぎるのだが、当たり前すぎるが故にか、しばしば忘れたかのように人は都合を語るために逆説を先とする。

 人であるから、人であるならば、人なのだから、と欲するが故に。

 十三が言ったことはその同類にしか聞こえない、そんな言葉でしかなかった。

 「物を考えて言っているならば、それはすなわち人間だ」などとは。

 思考は人間しか持ち得ないものか?否の前に、他者の思考の存在さえ実のところ証明出来ない、その程度だ。

 では、物を考え言うならば人間などとは空論どころか、駄弁でしかないといえるはずだ。

 十三は深く考えずに言ってのけただけか?しかしそうではない、そうではなかったのだ。


 物を考えるという思考がある。


 それをして考え、思考という、人間が人間として定義した型と枠に嵌まることで、形作られているものがある。それがすなわち人間であるという話なのだ。

 簡単に言ってしまえば、人間らしい人間のような人間でしかない、そのような思考があり、そういった思考をもって物を考えると呼ぶということなのだ。

 思考があるから人間なのではない、人間が引きずってきたものとしてあるもので思考というものが成り立っているから人間だろうというのだ。

 だとするならば人間という呪縛はおそらく思考の礎を再構築して異種にしない限り解かれることなどなく。いっそ命や存在の在り方、世界の法則さえ異質でなければ違えない、そういうものだということになる。

 とはいえ、十三にしてみればそんな大層な話でなかったことは明白で。

 「人間をやめたいなどと言う奴が、人間でないわけがないだろう」という程度のことだったろうし、それでいいのだろう。

 だから、

 「・・・お前らが何者か、何であるかもどうでもいい。・・・理解の必要もない。殺せるならばそれだけで済む。殺す相手に対してそれ以上の何がある?・・・答えられるなら、お前達の好きにしてやってもいい」

 そう言って、あるいはすでに正体を確信している相手に対し、殺すための動き、爆炎を掴み振り回す空破は一切止めずに告げられたのだ。

 「答えるとも思っておらんのだろうの。だからそのようなことが言えよる」

 相手である来道の一体は不敵にさらに笑みを歪ませながら言い放ち、分け身か、それとも別の実体か、わからない分身達と共に十三を囲むよう円と動く。

 「・・・違うな、答えようが確信に至らない。ようは俺をお前達が納得などさせられるか?」

 「なるほどのう、それはその通りだろうの!!」

 爆炎が雪崩となって、圧縮されて、来道達に落ちる。一瞬で一人二人と分身が呑まれて消える。

 だが、焼き尽くされて消え行くその身が生み出していた運動力、円を描いていた螺旋が渦を火焔の中に生み残していく。

 最後の一人の来道まで顔面を笑みに歪めたまま炎に巻かれて溶け消えるが、そのまま炎の渦となりかわったかのごとく十三の空破に逆らい立ち昇る。

 自ら操る炎が反逆の動きを見せたことに驚きの欠片もみせず、十三はわかっていたとしか思えない流れる動きで、立ち昇る炎の渦を引き絞るようにその手をも伸ばして空を掴み、周囲ごと圧縮をかける。

 炎と炎が削りあい、嵐となって吹き荒び、最後には反発しあって弾けたか、爆発するように四散し衝撃を撒き散らした。

 衝撃の向かい風を動かず見ているだけで押しとどめた十三の視線の先に、爆発の粉塵の中新たに現れた影が映り込む。

 「結局、お前さんみたいなのには、実力行使でわからせる以外に是も否もなかろうよのう」

 「・・・結局、だと?最初からそのつもりだろう。お前の建前なら守るべきだった連中がほとんど倒れているぞ」

 現れていたのは言うまでもなく来道のその姿で、満面の喜色で十三を見据えて口を開いているが、十三はその奥を見据えて吐き捨てた。

 死屍累々というほど焼かれた者の痕跡や残骸は残っていないが、生き残った影は大半が酷い格好の半死半生がほとんどで、ようやく今立ち上がり出している者も多い。

 来道が乱入してきた理由を、その口で語られたことを、そのまま信じるのならば、絶滅寸前の影達をこれ以上減らさせないことが目的だったはずだ。

 今のこの状況に来道が幻十郎のように喜んでいるのはおかしく、怒り狂っていてもおかしくない、いや、そうあるべきはずなのだ。

 だが、実際の来道は毛ほども気にした様子はない。

 「起きてしまったことにはしょうがあるまい?過去を悔やむどころか、阻止出来なかった自分を責めるのも、その転嫁でお前さんに怒るのも、やってどうするのよのう?無駄、無意味、無為にすぎるよの。だとすればおかしくあるまい?」

 「・・・最初から、守る気があったようにも見えないがな」

 「そいつは心外だのう。などとは、やはり信用ならんかの?」

 「・・・永劫、出来んだろうさ」

 「ほう?そこまで言い切るかのう。さすがに訳を聞きたいものだよのう」

 「・・・聞くまでもなく、お前が一番わかっているはずだ」

 「ようするに・・・そういう輩だと思われているわけだ。残念だのう」

 「・・・白々しいことを言う。すでにわかっているんだろう?俺がお前がどんな存在か看破していることぐらい」

 言葉の押収の果て、笑みを凍らせ来道がまるで仮面をかなぐり捨てるように真顔に戻った。

 「確かに」

 お互い睨み合い言葉を交わしていただけに見えたそこには、無言で放たれ続ける十三の空破、その制空権の広がりがあった。

 来道はその圧力を見て目を細め、今までと調子の違う細い笑み、寒々しい印象を与える冷笑を見せた。

 「・・・彼女の言葉を借りれば、精神寄生体になっているんだろう?忍者の力そのものに対する寄生体に」

 

 

 十三が来道と対峙する最中、字塩と影山も加藤と睨み合い、お互い殺手を繰り出し続けていた。

 しかし二人がかりでも、斬られようが突かれようが亡霊のように再生する加藤に対し、字塩と影山は千日手ながらも消耗の一途を辿るだけだった。

 そもそもいくら字塩が傷を瞬時に埋めれたとしても、脳などを破壊されたならば危ういのだ。だが相手の加藤は頭を割られても平然としているのだ、話になっていない、そのはずだった。

 「腑に落ちんわな、ならどうして戦いの真似事をするもんかとな」

 だから影山のそうした呟きはまさに正論だったろう。仮に不死身だとするならば、相手の攻撃を何も気にせずその身で受けつつ反撃すればいい、少なくとも初手でそれならば二影は今頃息すらもしていまい。

 「避けるし防ぐということは、効いていないわけではない・・・。人間をやめているのは本当ではあるのでしょうが、おそらく生命であることまではやめていない」

 疑問を声にし影山と意思疎通を取りながら、字塩が答えを類推していく。

 「何を今更言いやがるかよ、お前らもとっくに人外どころか化物だろうが」

 加藤はそんな字塩と影山を嘲笑うように言い放ちながら、二影に向かって攻撃を繰り返す。

 千手のように縦横無尽と無数の空手が手刀となって、刃の風を吹き荒らす。その刃風から退避しながら二影はそれぞれの身を離して分離、さらに加藤から距離を取る。

 「お前ら両方とも近接系だろ?離れて俺に太刀打ち出来るかよ?」

 その二影の動きにさらに小馬鹿にした言い方で加藤が嘲るが、字塩は明確に首を振って態度に示してまで否定した。

 「確かに、最大威力の攻撃も得手も我々の術は距離が近接向きのものです。ただ、貴方に有効なのはそういった攻撃ではない」

 「ほう?なら、どうなら有効なんだっていう?」

 「生命をやめていないということはつまり、我々がこの肉体で生きているようにその代わりを持っているということに他ならない。だとすれば答えは自明のことでしょう。我々が共通して持っている血肉を離れた力。それも血操や炎気、雷動も血肉の働きに依存した力であることから、根源としてその力そのものであると思われる力、すなわち空破、そこに貴方達の秘密はあるということになる」

 「つまり?それで?」

 「実際のところ、空破をそう呼ぶのは適切ではない。それは炎気にしろ雷動にしろ血操にしろ同じだと言えますが。我々はただ、力の分類をつけて現象を仕分けていたというだけに過ぎない。我々は我々の力の根源と根幹を理解していない。ただ、そういったことが出来るから出来ることをしているというだけです。それは人間が、生物というものが、自らにくっついた手足を動かせるのがどうしてかなど知らなくても動かせるのと同じように。ただ、炎気、雷動、血操と共通している点がある。それは我々の肉体の延長にある力だということです」

 「なるほど、確かにそうかもなぁ。それなら空破だけが異端とは言えるだろうよ」

 「いえ、それは逆でしょう?空破は我々の外にあるものに我々が干渉して現象を起こす術です。他の術は我々の肉体の熱や生体電気や血肉そのものを増幅し媒介し、結果としての現象に繋げている。だから根本的に違うように思える。しかし根元的にどうしてそのような術が行使出来るのかという根本には、謎の能力があるという共通点しかありません。つまりは空破はその謎の能力の純粋な力の発露の形だと見るべきですから」

 「つまり言いたいことは、空破を極めれば、いいや、空破という名の現象を起こす根源たる力を突き詰めれば、炎気雷動血操と肉体という下地を元に現象を起こしていた程度を超えて、その逆が出来るんではないかってことかよ?そしてそれを成し遂げたのが俺達だってわけだ」

 「あの岩人もおそらくそうだった、私はそう睨んでいますよ。いいえ、今の貴方の発言を聞いて確信したと言ってもいい」

 飄々と受け答える加藤の態度を表面上のものとしか捉えない、そんな感情のやりとりを拒絶するような冷静さで字塩は言い切る。

 「貴方達も結局のところ、我々と何も変わらない存在だ」

 「だから亡霊はずっと過去で朽ちていればいい!!」

 そして影山が吠えると同時、二影の空破、その根本たる超常の力が加藤の展開する制空圏に襲いかかる。狙いはそのさらに奥、加藤の本体、炎気雷動血操で形作られた空破の肉体、そう仮想するもの。

 「それで足りるなら、苦労はねぇわなぁ」

 だが、加藤に一日の長ありか、二影の影響を受けても加藤の制空圏は揺るがない。跳ね除けるほどではないが、堅固に拮抗してみせる。

 「足りないことは百も承知。元より、貴方を見縊ってなどいない。この程度でどうにかは出来ないでしょう」

 「悪いが、水を刺すだの卑怯だの、そんな話は俺達には今更だろう、だからこれならどうだってんだ!!」

 字塩と影山が加藤をそうやって押さえつけている隙に、いつのまにか加藤を囲んでいた先の小競り合いの生き残りの忍び達が加藤を中心に囲んでおり、二影の言葉を引き鉄に四方より力を解き放った。

 加藤が二影と拮抗させていた制空の争いは瞬時に瓦解し突破され、その本体へと殺到し押し潰す。

 「っははははははは、そうだ、それで、いい、それで、なぁ」

 だが、加藤は圧し掛かる空破の干渉力を多重に受け、弾けるように笑ってみせた。

 直後にノイズを走らせたように加藤のその人型が千々に乱れて崩れて壊れだし、字塩の推測が半ば事実であろうという証明になろうとしていたが、こうなることを回避するためにまともに戦っていただろうに、加藤はそれらしい抵抗すら見せずに呆気なく、ただ満足そうに大笑しながら消えて行く。

 「っ、なんだってんだ、クソがっ!!」

 影山はその姿に不愉快そのものを爆発させたように己の足で地面を蹴り潰し、地団駄を踏んだ。

 字塩も苦虫を噛み潰したかのように表情を歪めながら、それでもまだ終わっていないと視線を巡らせ、対峙する十三と来道へ目を向けた。

 生き残った忍び達も同様に、その意識を皆がその一点に巡らせる。



 「・・・それで?」

 「お前さんは、・・・吸血鬼と仙人の違いがわかるかの?」

 消し去られた加藤のその顛末を横目で見て、自身の言葉の確信であると伝えるように来道に答えを促す十三だったが、来道は急にとしか言えないような見当違いな言葉を返していた。

 「・・・それがどうした」

 「わかるわからんもどうでもいいかの?確かに、その程度のつまらん仮定の話だ。設定次第で幾らでも答えなんぞはどうとでもしてしまえるからの。吸血鬼にも色々あれば、仙人にも種類があろうな。だがそんなに難しい話でもない、血を吸って生きる不老と、霞を食らえば生きていける不老の、その程度の違いの話と思えばいい」

 「・・・その違いが答えか?」

 「っはは、そんなわけがなかろうよ?ようはどちらも不老だという話だのう。ただ一方は食物連鎖を必要とし、もう一方は空気のようにそこらに幾らでもあるようなもので生き続けることが出来るというだけでな」

 「・・・生きるだけで周辺に害をもたらすか、否かとでも?」

 「その通りだがの、それだけではないのう。吸血鬼は生き血を求め、仙人は求めずともそこにあるもので足りる。故に吸血鬼は生きるために食わねばならんが、仙人は食わぬわけではないがさして問題にはしていないことになるのう。それはつまるところのう、生きるだけで吸血鬼には生きる目的があるが、仙人にはそんなものはさほどないということになるのう」

 「・・・どちらも同じだろう、俺達がそうであるようにな」

 「いや、然りだがの。先を急ぎすぎた結論だのう。というよりものう、それでは話にならんのだから一緒にしてもらっては困るのよ。そうだのう、吸血鬼は血を吸うという行為を目的にして生きると言ったが、実のところそれは普通の食事と変わらんわけだ。行為に対する障害が人間や動物の単純なそれよりも面倒であろうというだけでな。肉食動物の捕食に近いだけの話で、場合によれば提供者を殺す必要すらなく定期接種さえ出来るのだから、むしろ狩りの失敗で飢える獅子などより楽かもしれんほどだ。そう、吸血鬼には生き続けるために積極的になるべき目的はあるが、それは単なる生命維持の延長に過ぎんわけだの。実際のところ、定命の者と違う不老にとって、重要なのは刹那を満たせるか否かではないわけだのう」

 「・・・腹を満たすためだけに生きるには、人間という、知恵を持ち思考する存在には、あまりにも意味が軽すぎたというわけか」

 「特に糧を得るだけで必死だった時代ではなくなっている現代のようであればなおさらだろうのう。そうよのう、吸血鬼は目的のために生きなければならないのではなく、目的を持つために生きようとしなければならない、ただの老いないだけの人類の延長でしかないわけだ。だが、仙人というやつはどうだろうのう?血を啜ってでも永らえるなどという気概もなく、それなのに生きていけるただの恵まれた存在か?違うのう、仙人になるということは霞を食えるということ、それで生きていても良いのだと思えるものだけが、そうなれるんだからのう」

 「・・・目的を持つ者だけが仙人への道を開けると言いたいのか」

 「そう、仙道という言葉があるようにの。修行の果て悟りを開いた者が仏、つまりは神への道を歩み出すのと同じように、人を自ら超えてなお失わなかったものだけがその境地へ至るというものだからのう。呪いや、生物として別種になっただけの吸血鬼とはそもそもが違うわけだ。目的を探すなどという話は端から仙人にはない。目的があるものだけが仙人となり、悠久を生きようとするのだからのう。不老ですら足りぬだけの時間を費やす探究を求めてのう」

 「・・・生きようとしなければいけないものに目的がなく、目的を得ようとしなければならない。・・・俺達は吸血鬼というわけだな」

 「話が早いの。そう、吸血鬼ではなく仙人、それに儂らはなれるのよのう」

 来道は言って左右に頭を振った。見渡すのは十三と来道を囲んで構える加藤を排除した字塩に影山に生き残り達。

 十三はそんな周囲を見ようともせず、ただ来道だけを射すくめるように食い入り視線を逸らさない。

 字塩達も手をすぐには出さず、言葉に耳を傾け様子を探ろうとしている。

 「それとも何かの?お前さんらは吸血鬼のように生きて行きたいのかのう?」

 来道は道化のように見せるための笑みをもはや浮かべないが、そこには真に迫る別の気迫、鬼気とも言える情念が感じられた。

 「目的のために生きるのではなく、生きるために目的を求めるだけの永遠を求めるかのう?物語の多くの吸血鬼は生に飽いたと長命を振り返るが、それが望みかのう?なにせ生きる目的を探し続けていただけだからのう、実質など、というわけだの。逆に仙人はこう語るのう、もっと生きなければ、これでは足りない短すぎるとな。目的のために幾らでも生きて行こうとするのう、貪欲すら通り越して当然にのう。そのようにな、たった数百年で音を上げる吸血鬼と、千年生きても満足にほど遠いとしか思わない仙人、そのどちらが良いと思うのよのう?」

 「・・・所詮は物語の中での仮定の存在の話だろう。そこまで超然とすることを要求するのは、人間をやめなければいけない程度の俺達には荷が重過ぎるな」

 十三はしかし言いたいことはそれだけか、としか言わない。幾ら想像出来ようと、そんなものは想像でしかないと。あるいはそれも当然か、人間ならば。

 「確かに、吸血鬼でもなければ仙人でもない、それが儂らだが、そのようには実際なれるのだがの。ほれ、目の前にその実証例が存在しようが」

 無論、そこにいる存在は、人間という定義付けを自らの存在から否定する。

 「・・・」

 押し問答かと言葉も出さずに侮蔑の視線を十三が投げるが構うものなどいはしない。

 「のう、お前さんらは儂が失敗していると思うかのう?いや、答えんでも聞かずとも、反応を見ていればわかることよの。失敗していると思っている、そうだのう?」

 話は終わりかと、十三も含めて数による圧殺をかけようとしていた字塩達がその言葉に止まる。

 「お前さんらを儂は説得出来そうにない。そしてたとえ儂が正しいと思っていたとしても、気に食わない。後がどうなろうとこいつは排除しようと、そう思うておるよのう?ありありとした殺意でわからいでか。これでは儂はどうしようもないはずよのう?しかし、本当にそうかのう?」

 今度も口調は嘲っているようなのに、まったく笑っていない。真剣そのもののまま笑っているようで、悪魔といえばと印象が鎌首もたげる。

 字塩に影山、残りの影達も気圧され怯み、行動を躊躇させられる。

 「・・・だからお前は幻十郎に相手をされなかったわけだ」

 ただ、十三は侮蔑を通り越した視線で、憐れむかのように来道を見ながら、そう吐き出した。

 「っく、ははははははははは、そうよのう、お前さんはもうわかっておるものな」

 来道は十三に言われて大笑するが、これほど乾いた笑いもないというほどに、それは無味乾燥だった。

 「・・・だからお前は人間だと言う」

 「よろしい、説明しておこうかのう」

 止めのようにこぼされた十三の呟きを無視するように、来道は字塩達の方を向いて言った。

 「よぉ、小僧共」

 来道の言葉を追って見れば、そこに加藤が再び居る。

 「予想はしていただろう?」

 一瞬で凍りつく周囲を余所に、笑っていない笑みと嘲笑が来道と加藤から漏れ広がる。

 「儂らの本体はこの肉体ではなく、力そのものということ。それはつまり器に精神が寄っていないということに他ならんわけだのう。さて、そんな存在をどう殺す?答えは先程お前さんらが導き出したのう。同じ力でねじ伏せればいい。なんと好都合なことにお前さんらは全員その力を持っている。ならばやるべきことも出来ることも、ただ一つしかないよのう」

 「ようするにだ、さっさと俺達と同じ領域まで上がって来いってわけだ。でなきゃ命のやり取りにすらならん、どうにもできねぇんだからな」

 「・・・する必要がないな」

 未だ事態は来道達の掌の上だと、そう宣言されてもなお、いやむしろだからこそか。呆れるどころか冷めた様子で十三が割って入った。

 「命のやり取りをお前らとする必要がどこにある?決着のために排除すべきは、殺すべきなのは、俺達の方だ」

 「なっ!?」

 絶句したのは字塩で、言葉通り聞けばそれも無理はないとしか言えない。

 「・・・そもそもだ、こいつらは何者ですらもない。不破来道、計十、高木加藤、その誰でもないんですらない。どれでもいいんだからな。もしかしたら本当は稗田や幻十郎なのかもしれない。空鶴やシーナである可能性すらな。こいつらはそういう存在だ」

 「個人の証明、確かに厳密には出来かねるのう。だからお前さんらが儂が来道ではない、加藤ではないと言うならば、否定し切る根拠などありはせんのよな」

 「で、だからなんだって話だわな。ああ、お前が本当に黒子十三かよと聞いて、お前がそうだと答えても、それでだから何だ?証明かそれが?だろうが。同じことだわな、くだらねぇ」

 来道と加藤は動じもせず、鼻で笑ってみせる。

 それも当然か。例えば一瞬で遠く離れた地に飛べる転送装置が開発されたとして、その仕組みが一度その対象物を素粒子にまで分解して光速を超えての移動を可能にした後、現地で再構築するようなものであったならば、果たして再構築されたその対象は同じものであるのか否かという、そのような問題と同じだからだ。

 同じ精神同じ構成物質で出来た同一体だとしても、概念的には分解された時点ですでに一度死んでいるに等しいし、再構築した時点で作り直した別物であると見ることも出来る。

 連続性の問題、それに尽きるといえばそうなのだが、実際連続性など気の迷い、認識の誤謬でどうにでもなるとしても、同じように存在を構築すれば、再構成と言わずとも何度でも何体でも同じ人物が作れるのではないかという疑念と実際が残るだろう。

 逆に言うならば、存在の認識、個体性の確保とはその程度のものにしか過ぎないという話ですらある。結局のところ、意識者の意識の焦点、現実認識という曖昧さがいかに欺瞞されているか、真実味という圧倒的虚偽を信用出来るか、というよりも意識出来ないでいられるかが鍵なのだろう。

 我思う故に我あり。それは「そう思うのならそれでいいんではないか」という投げやりであるのだが、他にどうしようがあるのか?ということでもあるのだ。

 だから「それがどうした」であり「そんなことはどうでもいい」と十三は言うし、来道達は一蹴したのだ。

 ましてや転送装置の例のような、認識の根本を揺さぶるような状況、精神寄生体のような常識という名の認識の規則を大幅に破り乱す要素があるのではなおさらだ。

 「・・・だからだ、こいつらはどうでもいい、誰でもいい、そんな存在だ。そんな奴らを倒す、殺すと、対象を定めて憎悪や敵対心を向けても無駄だろう」

 故に問題はそんなことはどうでもいいとした前提の先にあることになる。ならばと十三が言うのは、いかれているようで至極正論以外の何物でもないのだった。

 「そうだ・・・殺すのなら、こいつらが誰であるから排除するでは無駄なんだ。こいつらが誰であろうとしても、誰にもなれないようにしてやらないといけない」

 そしてそこまで十三が言い切った時点で、字塩は気付き、影山も残りの影達も、気付かされた。

 「そうか、私達が彼等を倒すために同じ力を振るうようにならざるを得ない。つまりは同化、それが彼等の目的だった。幻十郎に稗田、あの二人はそれを知っていたから、あんな・・・」

 「あれか・・・ようするにこのクソ老人共をどうにかするには、俺達の方をどうにかしないといけないってわけか」

 だが、わかったところで、それは酷な話に過ぎない。ただ一影、十三を除いては。

 「・・・迷う必要はない、俺にとっては既定事項だ。どちらにしてもお前達をこのまま生かしておくつもりはないからな。『ついで』ではなく本題だ」

 「喜べ、とでも言いたげだなてめぇは」

 影山は皮肉気に十三の言葉にそう言って捨てたが、その表情は心なしか以前加藤であった頃のように笑っていた。

 「馬鹿かお前さんらは?何を無駄に血を流そうとしよるかのう。目の前に簡単で合理的な解決が転がっているんだぞ?選ばん理由などなかろうよ?」

 怒気はなく呆れた調子で来道が言うも、十三はそれに珍しくもあからさまな嘲笑を晒した。

 「・・・馬鹿はどちらだ?選ばん理由はお前達が一番知っているだろう?気に食わない、それだけだ。そしてこの方が面白い、だから血を流してもそれで構わない。いや、それが望みなんだろう、お前達も、誰も」

 「確かに、合理的と言うなら貴方方にはこのような事態を引き起こし転がす必要などなかった。忍者などと、そもそも馬鹿らしいことなど。だとすれば答えは不合理の果てに非合理的な一つしかない」

 十三に同調し、字塩が堅いのは変わらずだが、しかしどこか砕けた調子で、何かを吹っ切れたように笑って言う。

 「貴方達は楽しんでいる、だから私達は気に食わないんだ。玩具のように娯楽の贄にされて、それで喜ぶには貴方達は私達に抵抗の術を与え過ぎた。そうでなくては面白くないから、というそれだけで」

 「なら、しょうがねぇよなぁ、期待に応えて好きにさせてもらうべきだわな」

 そして影山も追従し、完全に自分を取り戻したように、もはや素になった仮面の表情を再び浮かべて言ってのける。

 「ほれ、お望み通りの展開だ、喜べやクソ共がっ!!」

 「なんたる茶番!!なんという愚昧よ!!お前さんらが殺しあう?よかろう、仮にそれで十三が勝てばまだよかろう、逆ならどうするよの?数が残れば意味などないぞ?」

 「・・・わかっているんだろう?俺達の仕組みは元からそうだった。お前達が仕向けて来たことだ、今更茶番はどちらの方だ?」

 来道達はおそらく忍者の力という、それそのものか、そのものに寄生した、精神体と呼ぶべき存在である。

 故にこれもおそらくはだが、来道の反応を見る限りは、忍者のその力とは個人に由来するのではなく、個々人の間をまたがって力場のように存在しているものでもあると見て間違いないため、同じ世界理解を得られる深度の精神体にでもならない限り来道達をどうにかするにはその力場そのものをどうにかしないといけない。

 全員が来道達の消滅を期して力場に干渉することは可能かもしれない、が、少なくとも短期的解決を目論むには、現に今字塩達が来道達をどうにか出来なかったように、一朝一夕で可能とは言えないだろう。そして図らずもそのための修練を積むことは来道達の思惑に沿うことであり、引いては精神体としての深度を深める道へと続くに違いない。

 では、どうするのか?どうすればいいというのか?

 そもそも来道達に乗らない理由がない、敵対する意味もない、そのはずなのだ。だが、それを言うならばそもそも生きているのも同じだろう。

 そのため結論は十三や字塩達が出したそれになるのも自然というものか。

 それでも、そこからどうするというのか?

 十三はいい、他を排除すれば独り相撲で来道達と対峙できるだろう。力場への干渉も複数が作り出す複雑なものから、自身が我が物としてきたそれを操るのに近くなるはずだ。少なくとも来道達が十三やその他の影達の精神そのものに干渉出来ていない時点で、そこに堅牢で確実な支点があるのは確かなのだから。

 字塩や影山達が勝ち残れば、実のところ状況はまったく変わらない。十三一影を排除したところで口減らしにすらならないからだ。ならばこそ何か考えがあるはずだ、というところだが、そんなものは影も形もありはしなかった。

 あるとすれば今の十三と戦えば、おそらく幻十郎を相手にした時のように犠牲が皆無では済まないはずだという確信ぐらいだが、そんな自滅を前提としたような馬鹿な話があっていいはずがないだろう。

 ないはずだが、字塩や影山どころか、残りの影達さえも、妙に奇妙なほどの感慨をそこに見出していたのだ。しいて言うならば、しっくりくる、そういうしかないほど居心地のいい結論だったのだ。

 思えばあまりに当たり前の話でもあっただろう、十三ほどの重症でなくても彼等も結局は絶望すら出来ないことに絶息している者達なのだから。己が命を張るというそれだけで、そこにようやく失うことに絶望足りえるかもしれない予兆が感じられるのだから。

 つまるところ、他のことなどどうでもいいと、刹那であってさえ満足であればいいと、ただの愚かな結論がその場を動かしていたのだ。

 そしてそんな戦うことでしか満足出来ない、それでさえ足りもしない愚者達を作り導いたのは、主張が正しければ来道なのだというその現実がある。

 まさに必然でしかなく、ならば笑われてそれも当然だろう。

 「ああ、そうさのう。なら、それもやかろうよ。だが、悪いが儂らがよもや大人しくしているなどと思うてくれるなよ?そう、加勢してやろう、字塩、影山、お前さんたちにのう」

 とはいえ、根本的にどう出来ているわけでもない。来道がそう言ったその時点ですでに形勢など、

 「っぎ!!」

 油断していたのだろう、誰も彼もが。

 形勢など来道の好きになるはずかもしれなかったが、そんなことなど机上の話に過ぎないとばかりに、影山の首根っこを話の途中でいきなり、有る意味理想的な奇襲に走った十三の腕が掴み、握り潰しながら刈り取ったことで、知らしめたのだから。

 影山の残った身体が居合いを抜こうと動いていたが、抜けず勢いを失いつつも前傾しそのまま屑折れ倒れて鮮血をぶち撒ける。

 十三の左の手掌に鷲掴まれた影山の生首が何事か呟き残そうと唇を動かすが、すぐに目の輝きは失せ、声帯も刈り取られた首だけでは言葉も残らないまま、終わった。

 十三はそれを最後まで確認することさえ横目に、瞬時にその生首を地面に叩き落として手で押し付けそのまま粉微塵にする念の入った処理を行い、再び字塩達に視線を向けた。

 不意打ちだった、それは完全なほどに。だとしても、十三が影山を襲ったその速度は以前からの想定を大きく超えていた。つまりは出来ないはずのことだった。それが現実ではいとも容易く行われたのだ。

 字塩は全身が総毛立つ怖気を感じると共に、妙に充実していく自身の意識を感じていた。十三が予想通り幻十郎の強さの一端、その理由を一連の流れから汲んでものにしていることに戦慄しながらも、それさえ愉悦のように。

 「・・・してみせろ。同じことだ」

 「その自信、後悔するがよいよのう・・・」

 「・・・後悔出来るぐらいなら、とっくに絶望出来ているだろうさ」

 十三の宣告に来道の応酬、それさえ柳に風の十三へ、先にならったように字塩が無言で奇襲、するも血の爪が空を薙ぐ。

 紙一重の回避、最小限の動きで躱した十三、その退路に突き刺さる残りの影達が放った断空。断空を予期して字塩から付かず離れずの距離で躱した十三のその動きさえ予想の範囲と、字塩ごと、粉砕するように雨あられと炎気に雷動に空破にと術が乱れ落ちる。

 炎や雷に焼かれ、空に身体を削り飛ばされながらも、字塩の全身から血槍が伸びる。十三は制空の範囲を最小限にして炎雷空破を捻じ曲げ弾き防いでいたが、物理的侵攻を伴う血槍の群れ、それもほとんど零距離からの攻撃を避けきれない。数十の血の槍が十三を捉え、字塩の身体と繋ぐ。

 それはもはやいつか幻十郎が倒された時と同じ二の舞の状況。いや、幻十郎の置かれた状況より悪いかもしれない、影山が倒れたと言ってもそこにはもっと厄介な敵対者が参入している。

 刹那、字塩と影達が動いたその時には文字通り消え去り見えなくなっていた来道と加藤が、影達の放った炎雷空破を媒介に唐突に出現。十三へとそれぞれ凶手を放つ。

 だが、察知していた十三の制空が両影を捉え押し留める。それでも来道達の方がまだ役者が上か、そもそも戦闘中の十三に酷なだけか、一瞬の均衡だけで押し切られようとする。

 「なっ、馬鹿なっ!?」

 そして来道の叫びと共に、来道と加藤はその場に動きを止めた。

 「これで、・・・どうにかなるとでも思っているってのか?」

 加藤が歯軋りするように吐き捨てるが、その場に消えることも出来ずに膝を屈している。

 「・・・俺達をこんな風になるように仕向けておいて、今更その程度か。だから誰もお前達に心を預けたりするはずもないわけだ」

 来道達をその場に屈させ縛り付けているのは十三の制空だが、その制空を補強し来道達を捕らえられるほどに増強しているのは、残った字塩や影達だった。

 つまりは来道達は背中を撃たれたというわけだ。事実としては敵が勝手に背を見せてきただけと言ってしまえるのだが。

 「影山を、今しがたやられたばかりだろうが、貴様ら!!」

 「それでも儂らの背中を撃つ方が重大だと言うのかの?・・・愚昧にもほどがあろうよの」

 確かに演技でもなんでもなく、事実として影山は十三に殺された。そして十三が字塩達を始末するつもりに変わりなどなく、本心であり、欺瞞などではあり得ない現在進行形の事柄なのも間違いないことだった。

 字塩達もそんなことは承知している、逆に十三を生かしておく気もさらさらないからだ。

 本気の殺し合いをしていたのだ、間違いなく。それでもなお、来道達を抑えるその絶好の機会が巡って来たというだけで、一旦の協力にあっさりと切り替えその場の誰も彼もが行動に移したのだ。

 「貴方方の愚かさに比べれば、我々などどうということもありませんよ。こんなわかりやすいことさえ貴方達は理解すらしない。それを愚かと言わずなんと言いますか?」

 字塩が真面目腐った態度で言い放つに及んで、来道は渋面も露わに唾棄する。

 「そんなに欲しいか、絶望が」

 字塩の血槍を未だに体に刺されたまま、事態が変わればすぐにでも殺し合いが再び始まるどころか現在進行状態だろうに何も起きていないかのごとく、平然と十三が来道達の目の前に立ち上がる。

 「・・・その程度がか?」

 そして今更すぎる当たり前の言葉を十三は来道達に投げ付けたのだった。

 「いや、その程度だろうが、どうだろうが、おそらく俺達は絶望など出来ないだろう。命の危機も、身体の苦痛もただそれだけのものでしかなく。将来の希望さえ・・・結局どうでもいいんだからな。絶望出来ないことさえ、・・・喉元過ぎれば熱さを忘れる程度の話。俺達を絶望させたいなら希望を与えるしかない。・・・だが、与えられるか?その意味があるか?」

 別に今唐突に死んだところで後悔などない、そもそも死ねば出来るはずがないとはいえ、そんなことは承知の上どころか日常であり通常だ。後悔どころか、感想すらたいしてないだろう。

 何故ならそもそも生きている理由が影達にはなく、与えられた出来事に対する刹那の感情のみが喜悦と呼べるほどにようやくなれる。

 故に、身体的苦痛は忌避すべきものでありながら、同時にだからこそ影達にとって特別な刹那であり、それがたとえ堪え難いほど長時間に及ぼうとも、また一つの得たものとして受け入れるだろう。

 その根本は結局何も望んでいないからに他ならず、最初からの空虚からさらに奪うためには与えるしかない。だが、もし与えることが出来たのならば、その与えられたものを失うことさえ喜びとするだろう。

 実際の話、この先どうなるかなど見えてはいないし、所詮は人間でしかない影達も、やはり月並みに希望し絶望するのかもしれない。いや、きっとそうだろう。

 それでも、今現在において、十三や字塩、残りの影達の一人として、例えば今死んでしまうこと、生きて何も出来なくなることへの恐怖など持ち得ない。明日への希望など欠片さえ想像出来ない。あるかどうかさえ、実のところどうでもいい。

 言ってしまうならば、どうでもいい。ただそれだけの話でしかない。

 そんな連中に、何を言うのかという話なのだ。

 「・・・だから今更その程度でどうこう出来るわけがないだろう?ましてや、そもそも俺達のこの思考こそ、完成品であり目的なんだろうが?」

 どうしてか愕然とする来道に十三は宣告する。

 「そうだ・・・お前達がいま目にしているものこそ、お前が、お前達が、望んだ人外のそれだ」

 だが、それさえ人間の範疇。よく見る、よくある、あるいは常識的な思考の一部、ありきたりなそれにしか過ぎない。

 それでも、来道の論理で語るのならば、確かにそうであってこその人外だと言えるはずなのだ。

 「・・・ただ、どうでもいいんだろう?そんなことなど」

 来道の愕然とした表情がその一言で破れ、吹き出しながら笑い崩れた。

 「っはは、なる、ほど。その通りだのう。確かに、そんなことなどどうでもいい。ただ、この状況を望んでいただけだな、儂は」

 結局のところ、最初から間違いのない答えを答え、示していたのはただ一影、あの岩人だったというだけのこと。

 面白ければそれでいい。幻十郎が稗田が、全身全霊で『成し遂げたこと』と同じに。

 「ならば、確かに、これでいい」

 それを悟った来道は破顔しながらそう言った。

 「へっ、ざまぁねぇが、それも悪くはないか。なぁてめぇら、俺達のような敵役を失って、この先どうするよ?」

 「そうよのう、そいつは面白い話だろうのう」

 抵抗出来れば出来るはずが、出来ないのではなく、ただしないままを選択として、その存在は選んだ。

 本当に来道だったのか計十だったのか、加藤でありもしかすれば稗田や幻十郎どころか忍び全ての集合意識であったかもしれない、その真相は当の本体達にすら不明のまま。

 人間が己が何者かなど知らないのと同じく、所詮はその程度の話までしか出来ないと。

 「・・・それを面白がれる時点で、最初からだろう、お前達は」

 来道と加藤はいつか見たような三日月に口元を歪め、同一個体であるかのように狂喜の笑みを十三へ向けたまま、圧力を強めた十三や字塩達の制空に沈んで落ちていく。

 血肉が砕けることもなく、虚空が虚空に帰るように溶けて拡散する。三日月の笑みとともに。

 「とはいえ、これで彼等が死んだ気もしませんが。何も変わっていない。何一つ」

 その末路に字塩が呟くが、それはその通りでしかなかった。本当に来道達がこれで滅んだかどうかなど確認出来もしないし、忍者の力とでも言えるような根源は今も自分達が振るっているようにそこにあるのだから。

 「・・・そうでもない。よりつまらなくなったのだけは確実だ」

 「でしょう、ね」

 何がつまらないのか、などとは十三に字塩は聞かなかった。

 かつては死後などというものは無に等しく、無いも同じだった。それが今や、精神寄生体という実のところ今だ不確定で曖昧な実在ではあるが、死後に相当するような先が見えてしまっているのだ。

 それはたとえ死んでも肉体の死程度では、ただ肉体が滅んだだけに過ぎないということにしかならないようになってしまったというわけだ。

 十三に字塩を含む忍び達にとって、死が恐怖でない理由は彼等が何も持っていないからだけではなく、死を当たり前の日常として受け入れているからでもある。そして日常として隣り合わせに出来るのは、結局のところ恐怖どころかその死こそが何も持っていない彼等にとっての「何か」であったからなのだ。

 その「何か」が未確定であり不確定であるからこそ成り立っていた不文律が、今完全とは言えないがほとんど崩壊してしまった。それで死に恐怖を感じられるならまだいいが、実際はその逆なのだから、それがどういうことなのかなど語るまでもないだろう。

 彼等にとって先にある死とは生きがいであり、娯楽だった。

 だから、つまらない。この状況はつまらないと言い切る。

 その場でそれがもはやわからない影などいなかったが、さりとてそれだからといってという話もない。

 忍び達でない普通に生きてきた者達であれば、もうこんな無意味なことはやめて建設的な話をしようじゃないかと言い出してしまうほどに、熱狂が冷める展開が目の前で繰り広げられたのだから、当然だろう。

 だが、それで冷めたからといって、やめられる者などいはしなかったのだ。

 何故なら彼等は人間などではなく、心を持った刃か、あるいは刃のような心しか持てない者達、すなわち忍者でしかないために。そうである自分達しかもはや見出せないがために。

 「だから・・・いい加減終わりにしましょう」

 言って字塩は十三に打ち込まれた血の槍を脈動させ、死血を発動させる。同時に周囲を囲んでいた影達も一斉に襲いかかる。

 一瞬で十三の血色が青ざめ死血による内側からの侵食の凄まじさを物語るが、さらに次の瞬間には事態は一転して字塩の方を青ざめさせた。

 真空。そう呼ぶには同音異語でしかなく、実際それは真空とは程遠く、それよりもよほど恣意的な殺意を含んだものだったろう。気圧操作という凶器を孕んだ制空圏などは。

 本当の真空よりも高められた気圧差を受け、一瞬で沸騰状態にまでなった字塩の血液の熱を媒介に、十三の炎気が対抗制御の反応に遅れた字塩と襲いかかった影達に向かって増幅した熱と血液を爆発させたのだ。

 結果、ただでさえ死血で失われていた自身の血液を焼き弾かれ、一瞬で貧血状態になった字塩は膝を落とし。襲いかかった影達の中で十三に近接攻撃をしかけようとしていた数影は、爆ぜた灼熱の血液の飛沫に叩かれ、全身を散弾で撃たれたように傷つけられていた。

 「・・・ああ、これで終わりだ」

 重力さえ操った幻十郎に比べればまだどうということはないのだろうが、逆に力技だけでないために幻十郎よりもよほど厄介な存在として、十三は字塩達に無慈悲に宣告する。

 「これはこれで、・・・つまらないな」

 膝を折って歯を食いしばりながらも、いつかの幻十郎との戦闘以来に見せる表情でいつになく字塩は裏腹にしか聞こえない言葉を吐きながら立ち上がる。

 周囲の影達も同様に、数も幻十郎戦より圧倒的に少なくほとんどが満身創痍で、勝利の目などそれこそ絶望的になったはずだというのに、まったく逆に萎み続けていた士気を再燃させたように十三へと向かうのだった。

 「・・・つくづく、だな」

 かくいう十三もまた同様に、そんな影達の姿に少しの喜色を見せていた。


 そして落ちてきた。


 音を後に置いて、それは、それらは、十三達へと降り注いだ。

 一言で言えば、それらはただの金属の塊だった。

 核弾頭どころか爆発物でもない。ただの巨大な質量の塊。

 だが、先触れに落ちて来たそれは尋常な大きさの物ではなかった。三階建てほどの小さなビルぐらいに巨大な円柱状の金属塊。

 その威力は、ある種限定的範囲に核弾頭をすら圧倒するほどの物理的破壊をその場に穿った。

 大地に突き立ち、衝撃波と破砕した破片を撒き散らしながら、落下地点を文字通り埋め尽くす。

 それが一本ではなく、十数本を越える数で降り注いだのだった。

 十三達を直接に、ではなく巨大なそれらは彼等、影達を囲むように。

 そして雨のように小粒な無数の金属の槍、それでも電柱ほどの大きさはあるそれらの塊が、天空から次々と質量飽和攻撃で釘付けにされている忍び達へと降り注いだ。

 衝撃波や熱波が主であればまだ制空の及ぶ範囲で忍び達は切り抜けやすい。そのために熱核攻撃でさえ生き延びることが出来た影達がいたと言える。それは忍び達の力が物理法則に不可思議な干渉をするとはいえ、根本的にはその物理法則に根差し支えられていてこそ動くものであるという証拠に他ならない。

 それはある種制空と対をなす概念として、堅土とも呼ばれているが、能力ではなく技術でもなく忍びの術知識の基礎のようなものだ。踏み締め蹴り出し踏ん張るための大地がなければ上手く拳打に力を載せて放てない、その類のもの、そのものとして。

 例えば一個の石を粉微塵に砕くことが出来るとしよう。石はそれで破壊出来ているが、粉微塵にした石の破片としてそこに残っている。粉と化した石の破片をさらに溶解等することで、石の破片としてさえ破壊することは出来るかもしれない。しかしそうなってさえ、根本的にはそれこそ素粒子を破壊出来ないように石であったその要まで破壊することなど出来ないのだ。

 言ってしまえば、空破は空の流れる方向を操作出来るが空そのものをどうにかすることなど出来ない。雷動が、炎気が、血操が、雷や熱や血肉を離れて何かをどうにかすることなど出来ないのと同じく。

 今回の場合で言えば、落ちてくる鉄の塊に干渉して勢いを削いだり破壊しようとしたりすることは出来るが、あくまでも鉄の塊そのものに対してであって、鉄の塊そのものを自由にすることは出来ないということだ。

 ようするに、ある程度以上の運動量を与えられた大質量の物体に対して、常人と比せば比べようもないほど精強とはいえ、忍者と言えど真っ向から受け止めるのは難しいということだ。


 忍者の正しい殺し方。


 そうとでも言うべき戦術が十三達を襲ったのだ。

 スターダストと呼ばれた宇宙ステーションとその副次施設である衛星群の持つ本来の機能。衛星軌道で公転加速された勢いを電磁加速で伝え強化し、地上へとただの鉄の塊を撃ち落とす、単純ながらも圧倒的威力を持つ攻撃。

 実際のところ一箇所に忍びが固まっていて位置を特定出来ているなどということはほぼあり得なかったため、対忍者兵器としては実用に乏しい代物ではあった。だが、その直接的打撃力は現代最強の兵器と言うに過言はなく、今や思う存分その威力を振るってみせていた。

 巨大な鉄塊で周囲を塞がれ、小さな鉄棒で飽和攻撃を完成させる。質量攻撃の嵐を食らった忍び達はそれぞれ抗うが、もはや無意味と言っていいほどに呆気なく次々と押し潰され果てていく。

 さらに駄目押しの巨大鉄塊が直接落とされ、追撃の鉄棒がそれすら微塵と砕き、周辺を岩盤ごとほじくり返したような荒野どころか針山に変えてしまう。

 その中で字塩でさえどうしようもなくすり潰され、人の形をなさない血溜まりにするどころか血飛沫にしてそれさえ吹き散らされるほどぶち撒けられた。

 そして物の一分ほどしか経過しないうちに攻撃は終了し、破壊の限りを尽くされたまさに無人と呼ぶにふさわしい荒野が広がるのみとなっていた。

 動くものなどもはやいない、いるはずがない。それほどの攻撃であり破壊だった。

 だが、それでも、影達は死に絶えてなどいなかった。

 数は数える程、片手で足りる数、だとしてもその破壊の跡から這いずり出して行く影があった。 

 その内の一影、最上(もがみ) 仁衛(じんえ)は半死半生どころか、半身を失くして上半身だけで瓦礫の海を渡っていた。血操で止め切れない流血で血の筋を描きながら。

 と、そんな今まで行われていたはずの戦いなど関係ないどうでもいいとしてしまえるほどの状況にある最上の前に立つ人影が現れた。

 最上は衰弱した意識の中で、希望も絶望も何の感想も抱かずその影の主が誰かを確かめようとして顔を上げ、次の瞬間意識を刈り取られていた。

 振り落とした右の抜き手で最上の頭部をぶち抜き脳ごと頭蓋を破壊して、影が最上のその命を絶ったためだ。

 十三か?そうではない。十三はすでに右手を失っている。たとえ血操で再構築していたとしても、それは人の肌の色をしていないだろう。今の十三と言えど来道達の領域には遠い。

 では、誰か?

 「なぁ、十三、お前はまだ生きてるんだろう?出てこいよ、なぁ」

 ただ一影、その場に来ていなかった影がいた。十三に協力し、仕掛けたカメラで最前の忍者達の内輪揉めを生き残りの人々に中継していた影だ。

 名前は風早早雲。空鶴配下だった一影。

 しかし十三に向けて言っただろう早雲の言葉に反応はない。

 普通に考えれば十三ですら死んでいて不思議がない。それでも勝手な確信か、早雲は露ほども十三が死んだと思っていない調子で、返らない返答を気にもせずその場から飛んで走る、その場で動く他の生き残りの影に向かい。

 半死半生かすでに息も尽きかけの数影だった生き残りは、そしてその早雲に襲われことごとく狩られていった。

 片手で数えられる数だった影達の生き残りはさほどの抵抗も出来ずに時間もかからず全滅し、その場には早雲のみが残る。

 静かで、風の音さえしないような静寂だけがその場にある。

 早雲は警戒をとかない。それどころか精神を研ぎ澄ませ周囲に気を張り巡らせていた。

 数分が経過し、不意に動き出した早雲は自身の真下の砕けた岩盤に埋もれた地面へ向かい一撃を放った。

 剛破掌打。文字通り剛破を纏って打ち込む掌打で大地を砕き、散らし、爆ぜさせる。

 異質な手応え、途中で止められる掌打。止まった先には当たり前のように、元々五体満足ではないがそれでもさらに満身創痍になどなってもいない常体に等しい無傷の十三。

 「やっぱり俺も殺す気か」

 「・・・お前がそれを言うとはな」

 星の屑の残りを動作させ、十三達に鉄塊を降らせたのは間違いなくこの早雲の仕業だろう。だとするなら、取引し、生存権を十三より買った早雲が、潜んで自分を狙った十三に文句を言うのは当然であるようで最大のお門違いだろう。

 だが、二影の言葉にはそれ以上の意味が込められていた。

 そうでなくても、ということだ。

 「よく生き残れたもんだ」

 「・・・九斬が、盾になりに来た」

 「なるほど、な。・・・あの馬鹿は」

 鉄塊が降って来た時、十三は反射的に逃れる術を思考し、結論として砕かれはするもののもっとも堅牢な空間、土中に逃げることを選択しようとした。

 したが、だからとうってそれが簡単に出来るものであるわけがない。潜る前に鉄塊に削り倒されて終わりだったろう、それほどには切羽詰まっていた。

 そこにそれこそ全身粉砕骨折程度の負傷はしていて、満身創痍のはずの九斬が駆け付け、血操で己を硬化させ十三の盾となり、それこそ全身で堅土と化して十三の時間を稼いだのだった。

 十三は九斬に稼いで貰った数瞬で地面に潜り、鉄塊の破壊と衝撃に攪拌されながらも、なんとか生き延びたのである。

 「本当になんなんだろうな、あの馬鹿は、お前にそこまでする価値があるか?」

 こんな状況では当然かもしれないが、早雲の口調も様子もいつもとは別人じみて見えるほど刺々しいものだった。

 十三はそんな早雲の調子にどうと思うこともないのか、最初からそういう相手だとわかっていたようにしか対さない。

 「・・・俺にそれがわかるわけがないな。本人に聞いてくれ」

 「聞けるものならな。生きているわけがないからな、この様子じゃ。本当に、ふざけた話だ」

 「・・・九斬が死んだとして、その原因はお前の仕業だろう?それをふざけた話だと言うか?」

 別段とどうでもよさそうでしかないが、十三が早雲に非難めいた言葉を返すも、早雲には堪えた様子はなくむしろ嘲笑った。

 「俺が言ってるのはな、そういうことじゃないんだよ、そういうことじゃ。あいつはおそらくお前なんかに託したんだよ、自分の生きてる意味ってやつをな。だからここまでの協力が出来た。でもな、お前の目的も、お前自身もそれに値するようなものか?俺にはそうは思えない。だっていうのに、この結末で有様だ、ふざけた話以外のなんだって言う?」

 「・・・それは九斬自身の問題だ。ふざけていると思っているのはお前の問題で、他の事は関係すらないな」

 あくまでも冷徹に言い切る十三の返答に、早雲は片手で顔を覆い隠し嘆くように天を仰ぐ。

 「そうさ、そうだろうさ。・・・だからな、俺はな、こんな事態に納得していないし、決して許したくないと思ったのさ、お前のことを」

 「・・・だから、どうだと?お前にどう思われているかが、問題か?」

 「問題だろう、事実俺はお前の前に立ちふさふがってる。ああ、そうだ気に食わないんだよ、それだけさ」

 「・・・」

 どうして、と問うことさえしない十三に早雲は構わず語る。

 「なぁ、俺がな、あの人のことを好きだったと知ってたか?」

 「・・・興味がないな。知る知らない以前の話だ」

 「だろうな、お前はいつもそうだよ。別にあの人、襄空鶴も、お前のことをそういう風には見ていなかったろうさ。だが、それでも俺達の中ではお前はやはり特別扱いだった。いや、実際特別だったものな」

 「・・・だから、どうだという。単なる使い勝手のいい駒と、それより劣ると判断されていただけのお前と、その優劣にどの程度の意味がある?」

 「それだよ、どの程度だと?程度と言えるほどの問題でしかないと?お前はいつもそれだ。だから特別なのかもな、腹立たしいほどに。俺のような凡俗とは一線を画しているのは、わかりきったことでしかないんだろうさ。ああ、それは幻十郎も、字塩も、来道共にあの人でさえ、そうだったんだろうがな」

 「・・・自分はあまりに普通だと、そう言いたいのか?」

 「そうさ。忍者がどうだっていう?どうでもいいさそんなことは、ただ俺は平穏が、幸せが、望むものが欲しいと思ったんだ。だが、お前もあいつらも、九斬でさえそうじゃなかった。気が狂ってたんならいい、そうですらもなくお前らそういう生き物だった。俺には着いて行けない世界の話だ。なのにな、呆れて見ていればいいはずのお前達をな、俺は羨ましいとさえ感じたさ。そうだ、なんてこいつらは幸せそうなんだ、楽しそうなんだってな。十三、お前も俺からすれば特にそうだった」

 十三は激情迸らせる早雲に対し瞑目すると、口に含めて噛むように重く呟いた。

 「・・・俺には、お前の方こそ羨ましく思えるよ。お前みたいな、人間であって忍者でなければ、そこまで楽しそうに生きられるというなら、俺はそうである方が良かったとしか思わない」

 早雲は言われた言葉に表情を引きつらせ、打ち震わせながら目を剥いて吠えた。

 「お前、は!!お前というやつは!!なら、どうしてお前は今ここでこうしている!!」

 「・・・俺はお前じゃなく、俺だった。それは逃れられないことだった。それだけの話だ。お前もそうだろう?」

 その点だけは同じと、もはや同情すら交じりもしないいつもの冷徹さで十三は早雲を突き放す。それは十三にとって最初からの立ち位置であり動向に過ぎなかったが、早雲にとってそうなるはずもないのは必然だろう。

 「もういい、話すだけ無駄だった。お前らのようなのに俺の話が通じたり、わかってもらえると思うのがそもそもおかしい話だからな。・・・さっさと終わらせよう。どいつもこいつも不愉快なんだよ!!」

 結局激発し、早雲は十三に対し臨戦態勢に入る。

 「・・・」

 十三は何も言わず、しかし少し気が晴れたように澄んだ表情で早雲を見ていた。

 しかし言葉が尽きてもすぐさま戦端は開かれず、両者というよりも早雲が慎重に間合いを計りだす。

 十三は満身創痍、早雲は完調、先の衛星攻撃のような隠し球を用意していることも加味すれば、普通に考えなくても早雲が圧倒的有利だが、まともにぶつかれば早雲では十三に勝てないことは明白だったからだ。たとえ現在ほどの状況に陥っていても。

 早雲は様子見から動きを早め、十三を中心に周回するように疾走を開始する。

 十三は目で追うことすらせず、体すら動かさず制空、震空が全方位へ放射、球状範囲に周囲を吹き飛ばす。

 破砕の衝撃波に巻き込まれ、足を乱されるがそれでも突っ切って疾る早雲へと震空を放ち続けながら針空をも放つ十三。

 早雲は肩口、脇腹と抉り飛ばされながらも間合いを詰めず疾走。十三は震空と針空を放ち続けながらも自身で地面を蹴って早雲との間合いを詰める。

 十三が早雲へと到達する刹那、早雲の周っていた周囲が弾け、両影の間を遮りつつ十三に襲いかかる。

 襲いかかった周囲の瓦礫、だが瓦礫を飛ばしたモノの正体は、付着した血液。周囲を周りながら早雲が蒔いていたモノ。

 早雲は血操をあまり得意とはしていなかった、それが自分から離れた血をも操っている。そのことに疑問すら浮かべることもなく、十三は突貫。瓦礫を体で受け止めながら手刀で早雲への道を強引に切り裂いて、そのまま貫き手を放つ。

 早雲は十三の貫手を左の掌で受け止め、貫かれるが食い止める。そして破れた傷口から血流が爆発、十三に絡み付いて拘束及び侵食を始める。

 十三の制空でさえ早雲の直近の制空圏は容易に崩せないため直接震空や針空で反撃は出来ない。だが、少し離れれば別と発生した震空が周囲を巻き上げ、瓦礫と共に両影を中心に収束。

 瓦礫に残っていた血液が爆発して収束を回避するも、衝撃に揉まれた隙に無理矢理十三は腕に食い込んだ早雲の血手を振り払い、後退しながら脚で断空を放ち早雲にぶつける。

 腹に断空の直撃を受け吹き飛ぶが、足で地面を捉えたまま倒れもしないで早雲は踏ん張り止まる。

 早雲が直撃を受けた腹には硬化した紅い血液の装甲が纏われている。やがて血の装甲は早雲の全身を覆い完全装甲状態へと変化した。

 紅い、赤黒い、人型に血の色がついたのではなく、血の塊が人型になったような造形物が立ち上がり動く。

 『よぉ、相棒、待たせたな』

 そして嘲笑ではなく快活に、しかし陰湿に笑う調子で早雲ではない声が発された。

 十三は驚かない。相手が相手だ、予想範囲内のようなものだからだ。

 八名背岩人、死んでも死んでも死んだと思えそうにない厄災製造機が早雲を包む装甲の正体。血操を得手としない早雲が血操の術を巧みに操ったその手段だった。

 「・・・お前も趣味が悪いな」

 「先にこいつと組んでいたお前にだけは言われたくもない」

 『散々な評価だな、そんなに俺が嫌だってんのかよ、てめぇら』

 「・・・」「言うべきか?」

 『まったく糞共はこれだから、楽しいよなぁ』

 十三の身体で共生していた岩人は、すでに以前から血液生産能力はないままだが、単独で活動出来る存在になっていた。

 そこで十三の身体から株分けか、それとも本体を移していわゆる分身体を十三に残したのかはともかく、早雲に近づき新たな血液の供給先を確保していたのだ。

 何のためにか?もちろん岩人が自分のために、自分を生き延びさせ有利にするためにだ。

 そんなことは聞くまでもなかったため、誰も言葉として追求などすることも、説明を口にすることさえなかった。

 岩人が裏切り好き勝手にしようとする、などというのは既定事項に過ぎないようなものでしかないのだから。

 そして会話の節目も何も読まずに、十三が脚で断空を左右それぞれで一発ずつ二連にして飛ばし、追随するように岩人を纏った早雲へと突貫。いつもの当然のような奇襲。

 早雲は即座に反応しているが、避けるでもなく合わせるように突撃。二連の断空を岩人の血操装甲が受け止める前に、装甲表面が超振動し断空直撃の衝撃を相殺してしまう。

 そして両影が互いの手足の間合いにお互いを捉えるその寸前、通常では届かない距離で早雲が蹴りを放つ。蹴りは瞬時に伸長した血操装甲が鎌のようになり十三より早く十三へ届く。

 十三は蹴撃で血鎌を迎撃しようと超反応するが、伸長した装甲が唐突に切り離れて素通り。離れた血鎌が形状を複雑に変化させ飛行の軌道を修正しながら十三の背後を狙うように飛び、同時に早雲がもう片方の脚の装甲を杭のように地面に打ち込んで急制動、残った両手を十三へと突き出す。

 突き出された早雲の両手の血操装甲が爆発するように無数の血槍を伸ばし、同時に十三の背後から飛ぶ血鎌が襲いかかり挟み撃つ。制圧攻撃、十三に回避する逃げ場はない。

 ならばと案の定、回避しない。十三は地を蹴り再加速。血槍の槍衾に自ら飛び込み貫かれながらも早雲に肉薄。

 だが、枝分かれの血槍から更なる枝分かれの無数の棘を瞬時に生やし、貫いた箇所で四方八方の肉を抉り食い止めた。

 内部からの破裂に十三の勢いが弱まる、その隙を逃さず十三の勢いを利用して早雲は十三の身体を後方へと流して投げ飛ばした。

 投げ飛ばされ、身体から引きちぎれるように抜けて行く血槍と棘がさらに肉を抉り飛ばし、身体中を穴だらけにされて十三は転がる。それでも倒れず、体勢をよろけながらも立て直して立ち上がる十三。

 穴だらけで抉られ放題の十三の身体からは血がこぼれない。血操で押しとどめているのもあるが、もはや流すほどの余分さえないという方が正しかった。

 それでも、再度十三は突貫の構え。空破の遠当ては岩人の装甲がある限りおそらく無駄。炎気雷動は空破ほどに使えない。血操は言うまでもない。なら残るは幻十郎の時と同じく、我が身という刃、その堅土に頼るのみ。

 「そこまでして、勝ってどうする?忍者なんぞもうどうでもいいだろう。お前もあきらめればいい。楽になればいい」

 「・・・そしてお前は俺を殺せて、すっきりして終わりか。同じことだ、お前が勝ってもな」

 「同じならいいだろう?同じだと思うなら、俺の好きにさせて、それで」

 「・・・快か不快か、それだけのことだが。不快だからな」

 「っなら、お前に快があるのか!!今更、そんなお前に!!」

 構える十三に早雲が噛み付く。お互い言葉を放ちながら、じりじりと間合いを計り続けている。

 「・・・来道は、どうしてあれで引いたのだと思う?」

 「知ったことか、あんなものを理解してどうなる!!」

 「・・・あれでいいと、そうするのが快であると思ったからだ。そうだろう?」

 なんのためにか、どうしてか。誰かが何かの事を起こした時、もっとも気にすべきことがその行動の理由であり目的である。とのような話がある。

 もっともな話だ。目的や理由がなければ人は動かないのではなく、動けない。考えるまでもない前提条件だと言える。

 生きるためには食わねばならない、食うためにはお金がいる、お金を得るには働かなくてはならない、だから働く、生きるために、というように。

 逆にすれば、働いているのはお金を得るため、お金を得るのは食べ物を買うため、食べ物を食べるのは生きるため、ということになる。

 そういった形式に当てはまらないものはない。だから常に行動には目的があり理由がある、そんなことは当然であり、何事もそうして紐解けばわかることでしかない、と人は考える。

 間違ってはいない、何も間違ってはいない。ただし、生きるという目的がある、では食べなくてはならない、食べなければ生きてはいけないのだから、そう前提を置いても「食わなくとも生きられる」存在がいるのならば?ということがありえないわけではないのだ。

 なら、「食わなくとも生きていける」から食わなくとも生きている、と理解すればいいだけなのだが、そうした時一つの問題が生じる。

 生きるために食べなくていい、食べなくていいからお金を稼がなくてもいい、お金を稼がなくてもいいから働かなくていい、しかし働きたい、などと言い出す者が「いてもおかしくない」ということがあるからだ。

 当たり前のことだ、何が問題なのか?そう思うかもしれない。前提や繋がりが前後したり、変化しているだけで、大枠としては今まで同じことだと。

 だが、その時点で論理が破綻している。問題はつまりそれだけのことだ。

 因果があって結果がある、だから行動には目的があって理由がある。それだけを見ればおかしくはないが、その出発点とは、立脚点とは、何か?そう言われれば、おかしいことに気付くだろうか?

 どうして生きているのか、何のために生きているのか、我思う故に我ありか。そこには含められるべき因果が必ずあって、その因果が結果に至るために理由や目的を生み出すということか。

 生きているということは生きようとしているということだ。つまりはそういうことであり、他にはないということに究極的にはなるのか?

 馬鹿馬鹿しい話だ。そもそも生きているという状態を定義し決めつけ、そういった因果とした別の因果が先にあるのだから。

 言い出したら切りが無い話をしても仕方が無い。たったそれだけことで話をまとめ、生きているということは、と決めつけているだけだからだ。

 ただ、実際に生きている身にそんな机上の空論のような話は些細な話としてしまえるかもしれない。

 逆だ、食いたい、がまずあって、食うためには生きないといけない、生きるためには・・・と繋がるのが本当だからだ。

 だが、「それは生きているからだ」で出発し、理由や目的を因果に含めようとするのだ。

 そもそも、食いたいのですらなく、それが快感であるから、でしかないとするならば理由や目的などというものがどの程度の意味を持つのかはおのずと知れようというものだ。

 なんのために?どうして?そんなものは、手段に過ぎない。目的のために手段があるのは道理だが、手段をするために目的を持つのですらなく、そもそも目的というものが手段にしか過ぎないということだ。

 来道は、人間をやめて忍者という新しい枠でしがらみを切り離してしまおうとしていた。だが、実際はそんなことはどうでもよかった。

 そもそも忍者を本当に人間をやめた先にした時、それが新たなしがらみになるのはわかりきっていて、それでもどうせならば少しでも自由な方に、というような話ではあった。

 が、本当にそんな目的は手段でしかなかったのだ。人間をやめる、そのために邁進する、その目的のための手段を行うことが目的なのですらなく、目的のために行われる手段ですら手段でしかなかった。ようはどうでもいいのではないが、なんでもよかったのだ。

 自身が満足出来れば、快と感じられるならば、それで。

 普通はしかし、だからといってなんでもいい訳がない。

 来道も、人間であるという常識と観念が不快であるとし、その常識と観念から離れることを快とした。そのように区別と選別が必ず機能していなければ、快も不快もあったものではないのだから。

 だが、重要なのは実のところ快か不快かという一点でしかなく。人間であるか否かはそのための目的でしかなく手段に過ぎないということだ。

 往々にしてその手段を目的として、逆転させてしまうのが常だが、来道達はその点でまさに人間をやめていたため、あっさりと手段を目的にはせず捨てることに躊躇などなかったわけだ。

 それは思考の問題だけの話ではない、認識の違いですら遠い、存在の別にあったと言っていい。

 「食わなくとも生きていける」そんなことは普通はあり得ず、死ぬことなど意に介さず死ぬまでは食わなくとも生きていける程度しか出来ないものだが、来道達にはそれが出来てしまうどころか、そもそもそういう存在でしかなかったからだ。

 死ぬことを選んでも死ですらないとしてしまえるほどに。

 実際、来道が今すぐに目の前に、死んでいるのも飽きたと出て来たとしても、何の不思議もないのだ。

 それほどに快か不快以外は、至るための手段にしか過ぎなかった。だから来道はああして消えるのを選んだ。

 不可解であり片手落ちに普通の人間からすれば思えるかもしれない思考だが、異常ですらなくただ当たり前すぎる思考の結果として。

 それは来道達がそういった超越存在だったからこそではあるが、そんなことは忍びであるところの十三や早雲も程度の差はあれ同じでしかない。

 「・・・お前も同じだろう?」

 だが、早雲はそんな十三や他の忍びと比べても、良くも悪くも普通だった。

 ここで言う普通とは、食わなければ死んでしまうし、死んでしまったらその後に保証も何もない、熱や電気や空に血肉を自在に操り超絶なる力を持てるわけがない、常人と同じという意味であり。逆に言うならば、忍びとしては異常な思考のことだ。

 にもかかわらず、十三は同じと言った。

 「快か不快か。俺が、そんな二元論で生きているとでも?お前らと同じにしてくれるな、お前らこそがそんな二元論で生きているから、社会も人の生き方もどうでもいいと、こんなになるまでやってこれたんだろうが!!」

 早雲の言はある意味正しく、しかし根本的に間違っていた。

 「・・・そうだな。ただ、それならな、お前はどうしてこんなことをしている?」

 「こんな、だと?」

 「・・・俺達を皆殺しにした後、どうする気だったかと聞いている」

 「そんなものは、どうとでも・・・いや、それこそお前らも忍者も何もなかったことにして俺は、平穏に!!」

 「・・・だからそれのどこが違う」

 刹那的思考で、快か不快かだけで、死さえも軽く選ぶ。そんなものと死を忌避し、きちんと人として地に足をつけた思考はまったく別のものだ。

 そう言われるものだが、その違いとは思考が違うだけのもので、本質的にはまったく同じにすぎない。

 人であるか否かの前提が違うだけで、思考としては快か不快かしか考慮していない。思考の基準として妥当というよりも、それしかないのだから当然ではあるが。

 「なら、お前はどうなんだ!?」

 「・・・俺も同じだろうな」

 「それで、俺を同じと罵るっていうのか?ふざけるなよ!!」

 「・・・俺自身はな」

 「は?」

 「・・・俺は俺の快のために動いている。だが、そのためならその快さえ捨てられる。・・・それだけだ」

 「また、わかけのわからないことを!!」

 「・・・言ったはずだ、忍者をやると。それは今も変わっていない」

 「まだ、お前は、そんな話を」

 「・・・まだ、ではない、今から、ようやくに、だ」

 「なんだ、お前は、それが好き勝手するのと何が違う、どう違う!!」

 「・・・俺の思う忍者とは、自らの思考で動かない、心があるだけの刃にすぎない。逆に言うなら・・・何も考えなくてもいい、主体を外に置いた力になるということだ」

 「っ!?」

 同じことをすでに聞いていたはずだというのに、何も理解していなかった早雲が十三の言葉にようやく理解し、絶句した。

 『ははははは、なるほど、なるほどだわなぁ。そりゃ皆殺しの結論にもなるわなぁ』

 対象的に岩人は抑えきれないと爆笑する。

 そしてその虚をついて、十三が疾走。早雲は反応が遅れたが、瞬時に肉薄した十三の手刀を岩人の血甲が変形して能動防御。表面に棘を無数に生やし、手刀を受け止めなから同時に包み込むように広がり食い破ろうとする。

 しかし手刀はすり抜けた。

 「づぅ!?」『おいおい』

 岩人の血甲さえ切り裂き、透過、すなわち裂断して早雲を袈裟斬ったのだ。

 『洒落にならんなこいつは、まぁ、俺にはどうでもだがよぉ』

 「岩人ぉお!!」

 第二撃を抜き打とうとする十三に対し、早雲の傷口から血を奪いながら岩人が剥離し、分体する。

 早雲は血を奪われながらも、離れた岩人を盾に距離を離した。

 十三の手刀は岩人を再び切り裂くも、当然血の集合体でしかない岩人には痛手ですらない。

 「そのままっ、捕らえろ!!」

 『そりゃそうするわなぁ』

 岩人に命令を飛ばしながら早雲が跳梁し、命令された岩人は逆らわずに十三を包み込むように拡散、包囲、そして収縮。そこへ早雲が剛破を叩きつけて、中身ごと押し潰した。

 だが、貫手が岩人の血の包囲を突き破り、そのまま叩きつけられた剛破ごと岩人を掴み取って振り回し十三は早雲へと投げつける。

 剛破の衝撃を受け流し、揉みくちゃにされながらも早雲は一緒に投げつけられた岩人と再び合体、さらに突貫してくる十三を迎え撃つ。

 早雲はその時点で綺麗に勝つことを諦めた。零距離に迫った十三と真っ向から打ち合う。

 十三の手刀に先と逆の肩口を切り裂かれながらも、早雲は頭以外の一切の防御も回避も気にせずに、同時に拳打で相打った。

 岩人の血甲が接触と同時に変形し、打撃以上の破壊を十三に刻むが、十三は止まらずさらなる追撃を早雲へと見舞う。

 早雲の傷は岩人により埋められ、削られても修復しようもない十三に対し痛手を受けながらも優位な状態のはずだが、次の十三の攻撃を受けてそれも吹き飛ぶ。

 貫手からの虎爪で傷口を抉り飛ばして、埋めようともどうしようもないほど早雲と岩人を減らしたからだ。

 「がぁあああああああ!!」

 『っはははははははは!!』

 「・・・」

 早雲は絶叫を上げながら、岩人は哄笑を撒き散らしながら、十三は沈黙のまま、そうして三影は命の削りあいを開始した。

 最終的に戦いとはかくあるものだとでも言うかのごとく。



 続


久々すぎてすいません。


とりあえず次で終わります。

次は、何とか早めに・・・。

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