壱
黒ノ十三~刃心千乱~
刃に心があるならば、何を考えているだろう?
何一つ考えなんてありはしない。
刃に心などありはしない。
心を持つのは刃を握り振るう我々のみだ。
心を持った刃など、刃に非ず。
刃でなくて、ただの心に過ぎはしない。
でなくば我々の心など、刃に等しく同じもの。
だから刃に心なく、ただの一つも考えない。
1、
忍者とは?
刃の下に心を置いた者である。
すなわちその心は刃であり、刃であるからにはそれ以上の意思など持たない者であるということだ。
だが、詭弁だ。実際論ではなく、ただの精神論に過ぎはしない。
人が人である限り、それは人にしか過ぎはしない。
そもそも刃の下に心はあるのだ。
それを無かったことには出来はしない。
ましてや本当に刃に心があるかないかなど、刃でもない人にはわかりはしない。
もっとも刃に心があったとしても、そんなものを気にかける人間など稀代の酔狂者か気狂いくらいのものだろう。
刃は道具、使われるためだけに作られ存在しているのだから。
しかし忍者は、人間というものは、そんな刃になりきれない。
「・・・なぁ、サーティン、ヒーローに、一番大切なことってなぁ、なんだと思う?」
金髪碧眼、紅い長マフラー、青い簡易鎧。ふざけた格好の男が壁に寄りかかって座しながら、目の前に立つ一つの影にそう言った。
「・・・・・・」
「信念とか正義とか、そんなもんじゃ、ない。ましてや何かを守れることや、誰かのために戦えることでも、ない。気づかれないこと、なんだよ・・・その気になれば、皆を救えるその強大な力が、同じ皆をあっさりとどうにでもしてしまえるって、な」
そこは夜天の下にあり、暗闇の世界にありながら光に埋れた摩天楼のはずれ。
中途半端に背の高いくせに、今や廃ビルと化したビルの屋上は、陰にありながらも摩天楼の残光で否応無しに陰影を浮かび上がらせられるほどには明るい。
「・・・だから?」
「だから・・・そう、だからオレはこんな馬鹿げたことをしてきたんだよ。それが・・・こんな形で砕かれたら、ふざけるなと、思うじゃないかよ?」
だから語るふざけた格好の男が、壁に寄り、座しているのは、その背中から地面にかけてを濡らす暗い液体が広がっているためだと見て取れる。
徐々に微かにその口調から生気が失せ、息が荒くなっていくのに細くもなっていくのはどうしてか、見て、知れる。
「俺はそうは思わない」
「ああ・・・そりゃ・・・アンタはそうだろう」
「ヒーローに一番大切なことは、傲慢さと強情さだ。そうでもなければ、そもそもそんなことは言い出さないし、続けもしない」
ふざけた格好の男、キーパー・カガミネ、摩天楼で己の身を光に晒して活躍していた世界一有名な忍者、現代のスーパーヒーローは、思わず笑おうとして咳き込み血を吐いた。
「なる、ほど・・・のが先か。だがな、ご覧で、この、有様だ」
「失敗したか?」
「失、敗?・・・ああ、失敗は、しちゃいない、さ」
天を仰ぎ、見えない星を見て、口の端から血を流しながら男は笑った。
「なにせ、代わりに、アンタが、いて、くれる。そう、だろう?」
「・・・俺にそんなつもりは毛頭ないぞ」
対する影はあくまでも感動どころか、動揺の一つさえ皆無に、訥々とキーパーの言葉を否定し、それにキーパーはさらに笑う。
「ああ、だろう、な・・・それ、でも、だ」
「わかった・・・なら心置きなく、逝くといい」
掠れて消えそうな笑みに、影は手刀を振り上げる。
「 」
肉が切り裂かれる音だけが遅れて響き、知らぬ間に手刀は振り下ろされている。
キーパーの口はなお微かに動いたが、言葉を吐き出すことはなく、笑いながら袈裟斬りにされた己の身体から噴き出す鮮血に沈み落ちていく。
「・・・確かに、どの道、俺もお前も同じだろうな」
影は言いながらも一顧だにせずに頭上に目を向ける。爆音を後に残して超音速の物体が、その瞬間に飛来した。
直後、ミサイルが突き刺さり、廃ビルは爆炎の中、爆砕。
三機の戦闘機が夜天を横切って通過し、さらに爆音を後に残して行く。
戦闘機が廃ビルを搭載ミサイルで破壊したのだ。なんのために?言うまでもなく、キーパーと影の抹殺だろう。
しかし、
「・・・こんな程度でどうにか出来るぐらいなら」
「俺達はいらんわなぁ、十三よぉ」
戦闘機の巡航速度とはいえ、超高速のその機上に立つ影二つ。
パイロット達は今更気づき慌てふためいているが、意に介さず互いにこの状況では届かず聴こえるはずもない言葉を交わす。
「八名背岩人、だったか」
「お見知り置きご苦労様だな、黒子十三よぉ」
岩人と呼ばれた男は、十三と呼ばれた影と同じく黒一色の装束に身を包んでいるが、その印象と方向性はまるで違う。
十三の衣装は、意匠は和装に近いが機能優先されて作られただろう戦闘服に覆面鉢金装備で。明らかに特殊な装備ではあるが、特別と言えるほどのものには見えない。
対して岩人の衣装は、戦闘服どころか装甲を薄く纏ったような強化服であり、強化外骨格に近いような代物だ。同じ戦闘目的の衣装であっても、まるで人ではなく兵器そのものであるかのような出で立ちだった。
事実、人に聞けば彼等のことを兵器と答えただろう。
岩人はまるでそんな自覚が自らにもあるかのように、威圧的に尊大に十三に対した。
「任務ご苦労様、それじゃあ死ね、は酷いよなぁ。そう思うよな?なら俺の言いたいこともわかるよなぁ?」
「だからどうした」
十三は冷めた態度で、吐き捨てるのですらなく心底どうでもよさそうに応じた。
「あぁ?馬鹿かてめぇは!!ああ、馬鹿だからこうなってんだよなぁ?もういいわお前、死ねよ」
それに岩人は待ってましたと言わんばかりに激発、戦闘機の機上を蹴る。
十三も蹴る。機上ではなく、何もない「空」を。
刹那で激突、衝撃波と急激な移動に伴い発生した空気の壁同士がぶつかり合い、戦闘機を巻き込んで爆発した。
破壊には巻き込まれなかったが、急な衝撃と反発に天地を撹乱された戦闘機が木の葉と舞う。三機編隊の残りニ機がフォローの緊急機動。
その片割れ、一機の動きが突如として歪に停止。尾翼を岩人が掴んで止めていた。次の瞬間には巨大手裏剣のように戦闘機が音速の世界の中で投げ放たれる。
投げられて飛んで行くのを待つまでもなく、巨大手裏剣と化した戦闘機を受け止めて十三が悲惨な事態を防いだ。
「馬鹿が!!それで無事に済むわけがねぇだろうがっ!!」
戦闘機を止めた十三に岩人が罵声と共に肉薄。貫手を十三に繰り出す。
確かにあまりに無茶苦茶な機動と加重に攪拌を受け、搭乗員は耐えていたとしても無事には済んでいないだろう。
「それがどうした」
だからではないだろうが、十三が焦りもせずに岩人の貫手を掴んで止めて言った瞬間、木の葉から体勢を立て直した下方と上方の戦闘機二機から機銃の掃射が十字砲火を描いて通る。
空中で引き裂かれ分解され、掃射に挟まれた戦闘機が爆散。しかし当然のようにその中には二つの影の姿はない。
「雑魚がっ!!」
爆発が消え去るのさえ待たず、上方の戦闘機が半ばからへし折れるようにして空中で岩人に蹴り飛ばされ墜ちる。
その岩人へ空中を文字通り足で蹴り「走って」十三が殺到。手刀を抜き打つように走らせた。
超音速をも超える手刀が残像すら見せずに通過するも、岩人は片手を突き出して払うように防ぐ、ことは出来ず、片腕を犠牲にすることで難を逃れる。
流血が空中に線と流れる中、片腕を失った岩人に休むことなく空中を疾駆し十三は再接近する。
しかし流れた血の線が「しなり」、飛散せずに繋がったまま十三の背後へ向かい、線上をことごとく薙ぎ払う。
機銃を向けていた残った最後の戦闘機が血線に払われて墜ちるも、十三は回避。すり抜けながら岩人との距離を無くさせる。
「お前に俺が殺せるかぁ!!」
絶叫ではなく、狂喜したように岩人が唸りを上げ、くぐり抜けられた懐の内側を晒すように手を拡げる。同時に血の線はまるで巻き戻されたかのように岩人の体内へと引き戻されている。
十三は躊躇もなく突貫、突き刺すように貫手が岩人の臓腑を抉りに腹へと吸い込まれる。
腹腔を貫き十三の手槍が岩人の背へと抜けるが、傷口がまだ十三の腕によって塞がっているため、血飛沫と言えるほどの紅は舞わない。
腕を引き抜きながら、指をかえしのように開いて傷口を抉っていく十三。だが、岩人の顔に苦痛はなく、むしろ腕を引き抜いた十三がその視線を険しくする。
穴の空いた岩人の腹からは出血がほとんどなく、代わりに十三の貫いた腕の表面こそが無惨に引き裂かれ出血していたのだ。
「さすがに食い千切るのは無理ってか?なぁ、おい、なぁ~」
十三の血を見て岩人がはしゃぐように笑い転げる。走るのをやめ高空から自由落下しながら、あくまでも不敵に。
「血操か」
「俺のはその程度の代物じゃねぇぞ、十三よぉ。人呼んで『血身』の岩人と言うんだってなぁ!!」
落ちて行く岩人を追ってまた空を蹴りながらこぼした十三のつぶやきに、岩人が反応する。
岩人の切断された片腕から再び血が吹き出し、槍となって向かい来る十三へ。
軽く横切るように十三は回避するが、瞬間に横枝が無数に噴き出し分かれ、絡み合うように十三を襲う。
十三は空中で反転、後退するように岩人から距離をとりながら血の槍の群れから逃れる。
「はっはぁ!!どうしたよ十三よぉう!!」
岩人の哄笑と共に、血の槍の群れが十三を弧を描いて包囲。そのまま全方位からの刺突が雨と化す。
動きを止めた十三は一瞬「タメ」を作ると、直後に両腕を霞ませた。
瞬間、吹き飛ぶ血槍の包囲網。そのままさらに離れた岩人の身体が血飛沫で舞う。
「っなぁ!?」
「・・・追い詰めたつもりなら、動きを止めずにいるべきだったな」
岩人の残ったもう片腕が、肩から胴にかけて抉り取られるように切断されて吹き飛び。同時にその両足さえ膝下からを根刮ぎ持っていかれている。
驚愕というよりは痛恨の呻きを漏らす岩人に、冷徹に言い捨てた十三が瞬時に間合いを詰めている。
「お前に、俺は、殺せねぇ!!」
断空、あるいは飛牙とも呼ばれる、人間業を遥かに超えた「単に恐るべき速さで空気を吹き飛ばしただけ」の遠当て。それが岩人を襲った十三の技の正体。
そして穿空、あるいは飛走とも呼ばれる、「単に恐るべき加速で抵抗さえ後追いにさせて加速力と変えた」高速移動の技で、断空の着弾の瞬き後には十三は岩人に肉薄していた。
両腕も足も失った岩人に、そんな速度に抵抗してみせる術はないかのようだが、岩人には己の手足よりも確かな血という手足が残っている。
だから傷口が増えたのは、むしろ岩人にとって自由に血を出し入れする場所が増えただけのことにすぎない。とでも言いたいかのように、見得を切った岩人だが。
「口を無くして、言ってみせろ」
もはや見えないとしか言えない十三の貫手が虚空を疾り、空気も立ち塞がろうとする血をも貫き裂いて、最後に肉ごと叩いて砕き吹き飛ばした。
後には爆散して吹き飛んだ頭部を失い、墜ちていく残った胴と飛散する紅だけが舞い散っていく。
キーパーは死に、戦闘機達は墜ち、岩人も散った。残るのは黒い影のような十三のみ。
しかし夜明けが近づき光が見え始めた遠くから、無数の影達が空を疾駆してくるのが見える。
「・・・たった一人に、よくやる」
呆れたように呟いて、空を蹴るのをやめて十三は頭を下に落ちて行く。
空からの行き先は大海原。
未だ黎明に届かぬ世界の中では紛うことなき闇の群生地。
十三は底へと消えて行く。
刃で在れば、沈んで浮かばず錆びては消えるだろうが、心と在れば、そうもならぬと。
考えもしないで。
かつて日の出づる国とも、日の本である国とも言われた国が世界にはあった。
二度目の世界大戦後、その敗戦の時まで、急速な近代化で力をつけただけの極東の雄でしかなかったはずの国だった。
しかし戦後、彼等の存在が明るみに出る。
世界大戦時、彼等が参戦していれば時流はおそらくまったく違っただろうと言われる者達、「忍者」の存在が。
古くから暗殺諜報破壊工作、等々のために暗躍してきた存在として影に日向に知られてはいたが、実際のところはそう特殊な存在でもないただの工作員集団であると思われていた。
事実、大半の彼等は里を作り工作員集団として破壊工作などに従事しながらも、普段は農作等に勤しむだけの常人達でしかなかった。
しかし世に伝承が残るほどの忍び達の像、その諸説の大元は別に存在したのだ。
実際にその力のほどが公になったのは、後に「白影事変」と呼ばれることになるテロ事件の発生によるものだった。
戦後一世紀が経過し世界に騒乱は数あれど、世界大戦と比して大過と呼べるほどの表面上の危機は久しくなかった。
それもそのはずだっただろう、それほどの危機が訪れるとしたら、今度はただの戦争ではなく大量破壊兵器の応酬による徹底的な破壊が世界を覆うことになるはずだったのだから。
それは戦争の仕組みの転換であり、また世界情勢の停滞に等しかった。
大量破壊兵器の有用性とは、大軍を用いなくても大軍、ひいては一国ごと一網打尽に破壊し尽くしてしまえる点にある。
ようは相手を叩き潰すだけでよいならば、過大な戦力、人員は要らず、兵器と設備があれば問題ないということだ。
そしてその事実は普通の戦争が「利益強要」を目的にしたものであることから、実のところ攻め手側にあまり有用でないという事実がある。
単純に、破壊し尽くされ焦土と化した土地などには、利用価値などは薄いからだ。
よって大量破壊兵器はカウンターウェポンとしての存在価値が最大であり、恫喝の道具としてこそ意味がある存在となっていた。
だからこそ発生したのがかの有名な冷戦構造などであり、その後の一進一退を繰り返しつつほとんど何も変わることがないようになった世界情勢なのだ。
しかしそうなったからといって利益強要のための「やりよう」がまったくなくなったわけではない。むしろ行くところまで行けば大量破壊兵器が出てくることを盾にした、新たな恫喝が深まったとさえ言える。
世界的に破壊工作を基盤にした社会恫喝による精神的誘導、すなわちテロリズムが主流な戦法となり始めたのはだから必然だったと言えるだろう。
それでも世界情勢に多大な変化がなかったのは、所詮は大量破壊兵器の脅威による均衡の内でのみ通じる小競り合いでしかなく、大勢を決するだけの力を発揮出来る手段や方策ではなかったからだ。
実際に大量破壊兵器と比肩する力を持つには、一国を実際に占領統治出来るだけの戦力と人員が必要でしかないからだ。
睨み合いを続ける大国達が揺るがないのは、そういった点に理由があった。
そんな状況に「白影」は唐突に現れた。
テロリズムの要点とは何か?実際の施行者達の行動から多分に「暴力による恫喝と目的の達成」にあると思われがちであるし、半分はその通りでもある。
しかし最大の要点はほとんどの施行者が取りこぼしていることであり、だからこそ最初から大多数のテロが表面的や全体的には失敗に終わるのだが、恐怖を伝えること、ひいては恐怖によって多くの意思を統制することであるのだ。
あくまでテロは目的を達成する手段ではなく、その「手段を作り出すための手管」にしか過ぎないとも言える。
その点、白影の行動は模範的であり、なおかつ理想的でもあったろう。
要求はなし宣告もなし、唐突に国の主用機関を襲撃し、問答無用の蹂躙で虐殺を行ったのだ。
ただの生身の人間が、危機管理において軍事的に穴が多すぎる国であったとしても、その軍備警察機構の全てを一切意に介さなかったのである。
その時点ですでに相手は化物でしかなかったが、協定国の駐留軍及び本国からの増援が本格的に前代未聞のテロリストに対して鎮圧を開始したが、それさえ一蹴したのである。
その時点で通常戦力では抗しえない「局地災害」指定を受け、同時にその「まるで忍者のような出で立ちに、全身白づくめの衣装」という特徴から白影と命名。
ついで次々と駐留軍を殲滅され、洋上の艦隊も殲滅されたことにより、協定国へもの本格的な攻撃の意思を確認。
本国への直接的な襲来を恐れた協定国首脳部はそこに、局地災害に対しての大量破壊兵器の行使を決定する。
一発ではどうしても止められてしまう可能性が高いため、多弾頭及び包囲攻撃による広範囲焼却で目標の排除を強行に決行したのである。後に独断ではなかったことは、状況証拠からも明確に明らかとなったが。
結果国土の三分の一に被害を与えながら、白影という怪物は葬り去られることとなった。
しかし協定国に対し当然ながら非難の嵐が巻き起こり、さらに弱体化及び「攻められる理由を持った」協定国の駐留軍に対して周辺国の行動が激化する。
あわや第三次の開幕かという緊張下に、彼等、忍者達がようやく表舞台に登場した。
「我々は忍びである」と、白影と呼ばれた男、不破計十の同類であると世界に向かって宣誓したのだ。
我々忍びは古来よりこの国を影から守護してきた者達である。
過日においてその内の一人が暴走したこと、その時に我々が表立って動かなかったことの、非礼と責任については詫びよう。
しかしその不始末に乗じて言語を道断しようとは、あまりのことだ。
よって我等は先の不始末も踏まえ、我々の長きに渡った暗躍を打ち捨て、矢面に立とうと思う。
もしもこの国に害を成そうとするならば、我々はその本領を発揮せざるを得ない。
故に、すべての人と世界には深く憂慮を願いたい。
結果、世界は先制攻撃を選んだ。
表舞台に顔を出した彼等への返答は、一国ごとを巻き込んだ「世界災害達」の消毒だったのだ。
そして世界地図から一つの島国が消え失せる。
だが、彼等は、彼等だけは、まだ生き残っていた。
しかし表立って反抗しても同じことを繰り返すだけ。そもそもそんなことには「復讐以外」の意味がない。
だから彼等は外国に残っている邦人達の立場の強化と保持、安全の確保も含め、全世界で各国と協力して里を作った。
自ら達を大量破壊兵器と同等に、あるいは破壊だけでなく、占領制圧傍聴さえも出来る、文字通りの超兵器とすることで。
こうして世界に心を持った刃達、あるいは刃になるために心を置いた者達として、「忍者」達は世界を席巻した。
中には、現地国民と交わり我が国のスーパーヒーローNINJA!!などとして、場違いにも思える行動をとった者などもいたが、概ねつつがなく推移していたといってよかっただろう。
勿論、そんな馬鹿げた話が長続きするはずもない。そうわかっていたからか、もう半世紀も経つ頃、破綻は彼等の側から来た。
忍者達の各国での一斉蜂起である。
彼等が各国に散っていたのは、自らの存在を抑止力として世界を停滞させるためだけではなく、大量破壊兵器などによる無差別範囲殲滅で打ち倒される危険を無くすためだった。
しかしその戦略は裏を返せば、相手の懐に入って諸共の自滅を回避させるだけではなく、立派な侵略としても機能していたのだ。
全てではないがその圧倒的な力で中枢を握られ、もはや諸共の自滅さえ封じられ、目的は未だ不明だが忍者達の世界支配?が完了したに等しかった、がそう簡単に事は運ばなかった。
当然世界の反発も反抗もあったが、忍者の里という縛りに括られない道を選んだ稀有な、それも世界で十指には入るだろう実力を持つとされる「フリーランスの忍者」がいたのである。
その名前が、黒子十三、彼である。
彼は現世界でも最大の大国であり続けている国より依頼を受けた、「この一斉蜂起を起こしている忍者達、その首謀者達を殲滅して欲しい」と。さもなくば世界崩壊の選択肢さえ選ぶとの脅し付きで。
十三はそんな依頼を簡単に引き受けた。
そして依頼を引き受けたと同時にまず「お願い」されたのが、自国のスーパーヒーロー、キーパー・カガミネの処分だったのである。
その顛末が現在である。
十三を葬るための罠だったのか?そうではないだろう。
だが、「一部」が動いたとしても何の不思議もない。そもそものキーパー排除からしてが、そういった根深く濁った混沌からの産物である指令だったのだろうから。
岩人や追撃の忍者達に至っても、敵対した忍者達の手勢にしか過ぎない。
では十三はただの四面楚歌か?間抜けな浮雲に過ぎないか?これからどうする当てもないのか?
すべてが否だ。
十三は依頼を受けて違えない。
そう決めて受けたのだから。
何故なら彼は忍者で、刃の下に心を置いた、「自分で考えない」存在だから。
では、彼の代わりに「考えた」のは誰なのか?
少なくとも依頼を出した国や、そこに連なる多くの人々ではなかった。
「刃に心があるとするならば、それが人の心でないわけがない」
少なくとも彼女は、そう言っていた。
続
そこそこ続く、予定