そばにいて ⑤
**このお話は、性的表現が現されていますので、苦手な方はご遠慮お願い致します**
ゆっくりと唇が重なり、唇と唇が触れる瞬間の感触がたまらなく官能を感じさせる。
優しく触れた健吾の唇は、私の唇の真ん中を愛でるように何度も触れては離れる。
触れる度に快感をもたらすその唇を瞳を開けてぼんやりと見つめた後に、健吾の瞳に視線を移すと熱い眼差しで私を見つめていた。
その瞳の色気に思わず吐息のようなため息をついた途端、私の唇を食むような深い口づけに変化した。
上唇・下唇を交互に食んで、クチュクチュと淫靡なリップ音が脳内を麻痺させ、思考が乱れ甘い吐息が抑えられなくなる。
「・・はぁ・・ぁ」
わずかに唇が開いたとこへ、熱い舌が押し開くように差し込まれてきた。その熱を私も両唇で何度も挟むように受け入れ、健吾の舌の感触を味わう。
堪らなく甘くて愛しい。
そして健吾の下唇を私の唇でくわえたまま瞳を見上げると、背中を強く抱きしめてきて今度は私の唇を激しく求めてきた。
「・・っん・・」
身動きできない位に抱きしめられ、その力強さによろけて壁に押し当たると、そのまま身体を固定されて健吾のされるがままになってしまった。
優しいキスは完全に深い口づけに変わり、唇を舐めながら奥へ奥へと舌を入れて、口腔内の全てを味わうかのように占領し続ける。
お互いの舌が混ざり合う音に、そして気持ち良さに力が抜けて行く。
口腔内に溢れるお互いの唾液を呼吸するのと同じく自然に飲み込み、またくり返す。
それでも私の唇から溢れた唾液を健吾は舐め上げた。そしてもう一度優しくキスをすると、その唇を頬に移動させ、更に降りて首筋を捕らえた。
「んっ・・ぁ・・」
強い快感を得て、震えながらさっきより大きく反応してしまう。身が縮み息を吐きその感触から思わず逃げると、右手で顎を押さえられまた唇を捕らえた後、健吾は熱い眼差しを見せた。
「悪い、止めてやれない」
そう言うと私を強く抱きしめた後、肩を抱いて寝室へと連れて行く。
キスをしながらベッドへ押し倒されると、健吾の重みで現実を感じる。
おでこから鼻先・頬から首筋へと優しくキスする健吾に、つい無粋なことを言ってしまう。
「ねぇ、コーヒーがもうできていると・・思うよ」
つい健吾の肩を軽く掴むと、両手首を持たれ布団に押し付けられ甘い力で拘束された。
「今飲まないと、だめ?」
私を試すように聞いてくる。口元に笑みを浮かべながら・・
「苦くなっても知らないから」
「じゃあ、後で砂糖とミルクをたっぷり入れて飲ませて」
「・・・」
「あとは?」
首を傾げながら私の唇を親指で撫でる。
私が言葉なく首を振ると、「了解」と妖艶な笑みを見せ顔のあちこちにキスを落とした。
与えられる甘いキスは深くなる度、私の身体にぞくりと刺激を与える。
首筋を伝う柔らかい唇に敏感に反応し、ブラウスのボタンを外され鎖骨まで舐め上げられると、もう自分の意思に関係なく甘ったるい吐息が漏れ続けた。
「あっ・・ん・はぁ・・・」
堪えようと唇を噛んで堪えるのに、鎖骨・首筋・耳たぶと次々健吾の唇と舌は這い回り刺激を与え続ける。そして同時に健吾の手によってブラウスのボタンは次々に外され胸まで刺激され、身体中がぞくぞくと快感に襲われた。
嬉しさと気持ち良さに包まれているのに、ふと不安が頭をよぎり身体に力が入った。
「・・どうした?」
私の身体の変化を敏感に察知したらしく、健吾は行為の途中で熱の帯びた顔をしながら私の顔を覗き込んで、かすれた声で聞いてきた。その表情にすら恥ずかしくなる。
「ううん・・何でもない」
首を振りながら息を整え笑顔を作りごまかそうとしたが、健吾は優しく聞き返してきた。
「何?言ってごらん。今はやめたい?」
私の髪を優しく撫でてくれる。ここまで来たのに、私が迷っているのかと気遣ってくれている。その様子に心が揺れる。
「・・笑わない?」
「ん?」
「呆れない?」
「何?言ってごらん」
私が言い出すのを待っていてくれているのが伝わってきて、素直に感じている不安を伝えてみる。
「あのね・・・いい歳してバカみたいだけど、不安・・っていうか」
「うん」
「あの・・えっと・・こういうのずっとないから。いや・・初めてとかそういうことじゃなくて。んっと・・」
もうどう伝えていいか分からなくて、バカみたいにしどろもどろになる。もう恥ずかしくて、健吾の顔も見れず自分の顔も見て欲しくなくて、両手で顔を覆う。
「えっ、楓・・」
健吾も動揺を見せる。
「あの、ずっとなかったから・・緊張するって言うか・・あ~もう・・」
「誰とも?」
「だって・・・健吾しか好きになれなかったから・・誰かとするとか・・そうゆうのは・・」
その先を言う途中で、健吾に引き寄せられて起き上がり抱きしめられた。
そしてため息が聞こえ、私の肩に健吾の顔を寄せて耳元にささやいた。
「ごめん、俺嬉しいかも」
「えっ?」
その言葉に健吾の顔を見ようとしたら、更に強く抱きしめられて身動きが取れない。
「だめ。今俺の顔見るな」
「何で?」
「いいから、見るな」
そう言って力を緩めてもらえず暫く抱き合ったままでいた。
そして解いて貰えたと思った瞬間、食むようにキスされて、そのまま押し倒された。
「っん・・あっ・・・けん・・」
名前すら呼ぶ隙を与えてくれず、どんどん深いキスを繰り返し舌を絡めて、飲み込めずこぼれ落ちる唾液もまた健吾は舐め取る。その舌と唇はまた私の身体を這い回り、首筋や鎖骨・そして胸へと甘い痛みを与え痕を残す。その痛みを感じる度に、幸せを感じてしまった。
そして健吾の手や指が私の全てを刺激する。
「はぁ・・」
「楓・・」
健吾の艶かしい吐息や声を聞きながら、身体全体で与えられるしびれるような快楽に呑まれていった。
そして優しいキスを落としながら、やっと私と視線を合わせ甘くささやいた。
「楓、好きだよ」
「うん・・好き」
「全部・・俺のだ・・」
「うん、全部」
そう答えると身体を引き寄せられ、また包むように抱きしめられた。
今回の内容を好んで貰えるかちょっと心配でした。読んで頂いている方のイメージの健吾と楓じゃなかったらごめんなさい。




