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君が好きだから嘘をつく  作者: 穂高胡桃
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再会 ⑤

お店を出ようとした時、佑香に呼ばれて振り向いた。

すぐそばまで来てくれて私の顔を覗き込む。


「楓、大丈夫?英輔とちゃんと話せた?何か泣いていたみたいだったからさ・・」


佑香心配してくれていたんだ。涙も見られちゃったみたいだし。


「うん、ちゃんと話せて英輔から逃げたことも謝ることできた。英輔も謝ってくれて、その後仲なおりの乾杯までできたんだよ」


「そっか・・よかった、うん・・本当によかった」


うんうんって頷きながら涙ぐんでくれている。本当に心配かけていたんだ。私も胸が熱くなって佑香を思わず抱きしめた。


「佑香ありがとう、心配かけてごめんね」


「いいよ、いいよ。それだけ聞きたかったの。ごめんね、帰るとこ止めちゃって。健吾くんもう迎えにくるんでしょ?」


「うん、もう来ると思う」


「じゃあ行って。また電話するから後でゆっくり話そうね!」


「わかった、佑香もいい感じみたいだし後で聞かせて。」


さっきまで佑香がいた席を見ながら目で合図すると、へへっと佑香がはにかんだ。


「うん!後で報告する」


「待ってるね、じゃあまたね!」


「うん、またね!」


そう言って佑香はニコニコ手を振りながらお店の奥へ戻って行った。

そこで健吾がもう到着したか気になって急いでお店の外へ出た。何台も車が並んでいるので健吾の車を見つけるためにキョロキョロしながら少し歩いたとこで後ろから声をかけられた。


「楓!」


振り向くと英輔だった。どうしたんだろう?何かあったかな?


「英輔、どうしたの?」


「ごめん、もう迎えに来た?」


「う~ん、今車探していたんだけどまだかな?」


広い駐車場を見渡しながら答える。鳥目なのでイマイチよく見えない。


「そっか。あのさ、連絡先交換できたらと思って。急いでるところごめんな」


「ううん、待ってね」


バッグからスマートフォンを探す。


「会社も近いしさ、向こうでまた会えたらと思ってさ。今度飯でも食べに行こうよ、まだ話したいことも沢山あるし」


「そうだね、私も連絡する。ちょっと待って」


話しながら連絡先を交換して登録する。ちゃんと登録できたことを確認した。


「ごめんな、急いでいるのに引き止めて。今日は会えて本当によかった、ありがとう」


微笑みながら右手を出してきた。私も右手を出してキュッと握手した、私も微笑んで。


「うん、ありがとう」


「じゃあな」


握っていた手を解いたあと手を振って笑いながらドアに向かって歩いて行った。

英輔が中に入った姿を見て、私もまた駐車場に向かって歩き出した。

またキョロキョロと健吾の車を探していると、チカチカと奥の方が光った。その方向を見ると健吾の車で、ライトをパッシングさせている。「あっ!」っと声が出て嬉しくて笑顔になって、自然と小走りになる。健吾に会いたい気持ちが、走りづらい高いヒールの靴の私を走らせた。早く健吾の顔が見たい!そのまま運転席のドアの前まで走り窓を覗き込むと健吾が窓を開けてくれた。


「ごめんね!待たせちゃったね」


「・・・いや、さっき着いたばっかりだよ。とりあえず乗りなよ」


「うん!」


何だかジッと見られたので、急いで助手席の方にまわってドアを開ける。シートに座って健吾を見ると、タバコに火をつけている。


「ごめん、1本吸わせて」


「どうぞ」


そのまま健吾は空いた運転席の窓の向こうを見ながらタバコを吸い続けている。

私は気になってこっちを見ない健吾を何度か見る。あれ~何か機嫌悪い?ちょっと待たせ過ぎちゃったかな・・・


「健吾・・ごめんね」


「ん?・・何が」


今まで窓の向こうを見ていた瞳をこっちに向けてくれた。


「遅くなっちゃったから。すごく待たせちゃったよね」


「そんなことないよ、まだ2次会終わってないなら最後まで行ってくればいいのに」


「え、もう十分だよ。ちゃんと新郎新婦にも友達にも挨拶できたからいいの。ね、帰ろう?」


ちょっと甘えた声を出してみた。そんな私を健吾は一瞬ジッっと見た後タバコを消して前を見た。


「じゃ、帰るか」


右手でハンドルを握り、左手でシフトレバーを引いた。少し車が前に進んだところでグッと止まった。


「そうだ、これさっき買ったんだ」


後ろのシートからカサカサと音をさせて取り出して、私の手の上に乗せてきた。それは冷えたミネラルウォーターだった。隣で健吾はコーヒーのプルトップを開けて飲み始めた。


「ありがとう!買ってきてくれたの?」


「タバコが切れたからさ、コーヒーのほうがいいか?楓の分もあるよ」


そう言ってまた後ろから取り出そうとしたので止めた。


「大丈夫!お酒飲んでいるし、とりあえずこれもらうね」


「じゃあ、コーヒー飲みたくなったら飲んで」


「ありがとう」


「じゃあ~行くか」


そして駐車場から出て、帰り道を走った。

少し無言が続いて、健吾の顔を気づかれないようにチラチラ見る。前を見たまま運転する健吾。

今まで一緒にドライブして無言になったことは何度もあるけど、今日みたいな空気じゃなかったし。電話で話した時は機嫌悪くなかったんだけどな~。視線のやり場も少し困って健吾がくれたミネラルウォーターのキャップを開けて口にすると、隣で健吾が頭をガシガシ掻いた。


「どうしたの?」


「ん?いや、何でもないよ」


「そう?」


何でもないようには見えなくて、私の顔は疑いの目になる。そんな私の視線に気付いて健吾も横目でこっちを見てくる。


「何だよ~」


「別に~」


2人して可愛くない言い方をして、何となくいつもの空気を取り戻す。私が健吾を見ながら少し笑うと、そんな私を見て健吾も前を見て少し笑顔を見せた。


「それで?結婚式と2次会どうだった?」


「うん、すっごく感動した。友達の結婚式ってくるものがあるよね」


「泣いたのか?」


「そりゃ~もう。付き合った年月の長い2人だし、学生の頃から本当に仲良かったしさ。挙式の入場の時から涙ボロボロだったよ」


そう、真奈美のウェディングドレス姿で感動して、久保くんと並んだ姿に感動して、真奈美の涙と久保くんの笑顔に何度も涙が溢れた。


「そんな綺麗な格好して泣いてる楓を想像すると笑えるな」


「ひどい!だって友達の結婚式だよ。涙出るでしょ!」


「ま~な。地元の友達はけっこういたのか?」


「うん、2人共小学校から一緒だから2次会は同窓会みたいだったよ。お互いの職場の人とかもいたけどノリのいい人達だったからすごく盛り上がっていたし」


2次会が始まった時はみんなで盛り上がっていたけど、途中からはあちこちで合コンみたいなノリになっていた。佑香も結婚式で気になった人といい感じで話していたし、結果としていい2次会になったんだと思う。


「そっか。楓も楽しかった?」


「うん」


私が答えた後、健吾は何も言わなくなった。さっきと同じ感じで前を見たまま。

赤信号で停車し、ハンドルに腕を組むように乗せて顎をついて前を見ている。

私がそんな姿をジッと見ていると、視線をこっちによこした。笑ってない、でも怒った顔でもない。瞳だけが何かを言いたそうで、何故だか色気を感じて私の心臓がドキンとした。

すぐに信号が青になり、体を起こしてハンドルを握って車を発進させた。


「さっきの・・誰?」


少し走ったとこで前を見たまま呟くように聞いてきた。


「え?」


「さっき、駐車場まで楓を追いかけて来た奴」


さっき?健吾の顔を見たまま少し前の事を思い出す。駐車場で健吾の車を探していた時、追いかけて来たのは・・英輔。

健吾見ていたんだ・・悪いことなどしていなかったけど、何だか気まずい気持ちになった。



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