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君が好きだから嘘をつく  作者: 穂高胡桃
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再会 ②

目の前に広がるフランス郊外の雰囲気を思わせるお城のような建物。結婚式場という言葉でまとまらない位に素敵。ゲートをくぐり足元の石畳の先にある洋館を目指す。

少し気後れしそうなほど立派な建物をじっくり眺めてから入口を入ってみる。

素敵なエントランスを見渡し、とりあえずレストルームで簡単に化粧を直してから受付に向かった。受付を済ませたとこで肩を軽く叩かれた。振り向くと幼なじみの佑香だった。


「楓~久しぶり!!」


ニッコリ笑って抱きついてくる。招待状が届いた時にこの結婚式で再会することを連絡してあった。

本当は前日に会ってお茶でもしたかったけど、私の仕事が入っていたので当日会場で会うことになっていた。


「あ~佑香元気だった?ゴメンネ、式場で会うことになっちゃって」


「ううん、いいよいいよ。嬉しい!もう会いたかったよ」


今まで実家に帰った時は連絡して会っていたけど、最近は帰っていなかったから感動に近い再会になった。そのまま佑香にゲストルームに連れて行かれてウエルカムドリンクで乾杯した。

いつもは飲まないようなお洒落なカクテルを口にすると爽やかな味がした。


「楓会いたかったよ。もう最近帰って来てくれないんだもん!」


「ごめ~ん」


「何?男優先なの?」


佑香に疑いの視線を投げられる。


「違うよ・・でも、う~ん。まぁいろいろとね」


「何よ、結局男でしょ。ほら、前に言っていた好きな人。どうした?まだ友達のままなの?」


「うん、何も変わらず友達のままだよ。健吾好きな子できちゃったしね。私はすっかり相談役やってるよ」


佑香と真奈美には会った時にいろいろ報告してあったから多くを語らなくても分かってもらえる。


「もう!またそうやって女友達やっちゃって。ずっと好きだったんでしょ!彼はその人と付き合っちゃいそうなの?」


「う~ん・・彼氏がいる子だけどね、最近何となくいい感じっぽくなっているかな」


私の言葉を聞いて佑香の眉間にシワが寄る。


「楓・・そのまま何もしないで諦めるの?男友達になっちゃったから今更告白できない?」


「・・・う~ん」


「まだ昔のこと引きずっている?」


佑香の言っていることの意味は分かっている。佑香と真奈美は私の失恋を見てきたから。男友達だった英輔に告白して振られて落ち込んだ私を全て知っている。友達という関係に戻ることもできなくなった私をいつも慰めてくれた。その後彼氏ができた時は喜んでくれた。社会人になって好きな人ができたと伝えた瞬間2人は大喜びしてくれたけど、彼女がいて女友達としてそばにいることを話した時は心配された。私が英輔に振られてからは好きな人とは女友達にならないと決めていたことを誰よりも知っていたからだ。健吾が彼女と別れた事を話した時は、ちゃんと気持ちを伝えるように言われていた。でもどうしてもできなくて、ずっと心配をかけていたし。だから今健吾に好きな子ができたと伝えた時、佑香は言葉じゃ怒っているけど顔は悲しんでいた。全て英輔に振られた事から抜け出せていないことを佑香はよくわかっているんだ。


「英輔への想いは引きずっていないけど、気持ちを伝えて振られて英輔と話すこともできなくなった恐怖心は今も引きずっている。自分が悪いんだけどね」


私が言うと佑香は横に首を振った。


「そんなことないよ。私も同じ事があったらやっぱり話せなくなってたと思うよ。仲良かったからね楓と英輔はさ」


「うん・・振られて全てなくなっちゃった感じだったなぁ。でも英輔に振られた後に好きだと思った人に告白して振られても平気だったのにね」


「だって英輔のことで懲りて、友達になる程仲良くなる前に告白していたのでしょ?」


「うん、仲良くなって振られるのは避けていたからね。でも、英輔に振られた後に告白した人も付き合った人も正直言えば本当に好きだったって今は言い切れないな」


「じゃあ、健吾くんは?」


話している相手は佑香なのに一瞬言葉が詰まる。でも思っているまま伝えるしかない。


「諦められないくらい好きみたい・・」


「そっか」


少し微笑んで頷いてくれた。


「諦められたら楽なのにね」


言いながら頭の中に健吾の顔が浮かぶ。


「そっか・・楓がそんなに想う健吾くんに1度会ってみたいな」


その言葉を聞いて昨日の健吾との約束を思い出した。


「あっ、今日迎えに来るって言ってた」


2次会の後迎えに来てくれることを伝えると佑香はポカ~ンとした顔になった。


「え~!!ここまで来るの?わざわざこんな遠くまで迎えに来るの?何?何で?ん?本当は楓に気があるんじゃないの?だって普通迎えに来ないでしょ!友達だったら」


パニックになっている佑香に冷静に説明する。


「違うよ!昨日仕事手伝ってもらって今日の結婚式の話をしたら、2次会の後に電車乗って帰ってくるのはキツイだろうからって・・」


「ただの友達で?う~ん、楓さぁ、もうちょっと頑張ってみれば?」


私が言い切る前に疑問を伝えてくる。


「もう女友達確立しているもん」


「そうかなぁ、今の楓とても綺麗だよ。片思いしてるとか思えない程。もったいない位にね」


「そんなことないよ」


「ううん、楓がちゃんと気持ち伝えたら楓が恐がっている答えとは違うんじゃないかな?」


「えっ・・言えないよ」


私が引き気味になっているのとは反比例に佑香は気持ちが高ぶっている。


「今日迎えに来るんでしょ!ちゃんと話してみなよ。今日の楓見たら絶対グラッっとくるから。本当に綺麗だよ」


「何言ってるの!でもさ・・やっぱり言えないよ。本当に恐いの」


私が俯いて唇を噛んでいると佑香がグラスをカチンと当ててきた。


「まぁ無理にとは言わないけど楓頑張って!って気持ち。とりあえず真奈美の結婚式楽しもうか」


「うん、ありがとう。真奈美のドレス姿楽しみだね。久保真奈美になる日がとうとう来たんだね」


「そうだよね~、よく付き合ってきたものだ。久保くん真奈美に一途だしね。真奈美も嬉しそうだったよ」


「そっか。本当に仲良かったよね、昔からさ」


そう、真奈美と久保くんは小学校から仲良くて、17歳の時から付き合って10年。喧嘩もしていたけどいつも長引かずに仲直りしていたしね。長~い春にならずにとうとう結婚だものね。本当に羨ましい。

私が昔を思い出していたら佑香がグッと顔を寄せてきた。


「ねえ、楓」


「何?」


佑香が急に真顔になったから私はつい顎を引いて構えてしまった。


「もうはっきり聞いちゃうけど、この結婚式に英輔いるけどどうなの?」


「何?どうなのって。どうもないよ」


正直痛いとこなので、声が上ずってしまう。


「ほら!動揺しているじゃない~。まあさ、近くで見てきたから楓の気持ちが分かるわけよ。あれから楓は避けてるみたいになっちゃったしさ。何か寂しいなって思っていたけど楓の気持ちも理解できたし。でも今日この会場で再会したら楓どうなのかな?って考えていたんだ」


そうだよね・・私も最近ずっと気になっていたことだよ。


「う~ん・・今、英輔への気持ちはないよ。さすがにね。でも、今日英輔も来るって聞いて正直気が重かったよ。本当に嫌な友情の終わりを作ってしまったしね。会いたくないなってため息ついていたよ」


本当にここ最近の悩みの種だったから。


「そうか、やっぱり考えていたんだ。でもさ、もう10年も経っているし話してみてもいいんじゃない?昔みたいに今なら話せるかもよ?私はそんな楓と英輔見たいな」


「うん、職場の先輩にも相談した時に同じこと言われた。そうだね、話すタイミングがあったらね」


私が答えると佑香がニッコリ笑った。

そこで挙式の時間になり、2人で大聖堂のようなチャペルに向かった。







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