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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

人間と妖精のハーフな転校生との恋

作者: りつりん
掲載日:2026/03/05

 妖精と人間のハーフという子が転校してきた。

 瞬間、クラスの皆は思ったし、僕も思った。


(いや、体格差)


 と。

 人間はご存じの通りの大きさ。

 妖精は大きくてもせいぜい二十センチほど。

 そんな人間と妖精のハーフが転校してきたのだ。

 体格差以外の疑問が出てこなくて参った。

 最初、皆、転校生のクラスに馴染むためのファーストジョークかもと考えていた。

 なぜなら、転校生はハーフだが、大きさは人間然としていたからだ。

 けれど、その考えもすぐに否定されることになる。

 彼女の肩から背中にかけて生える複数枚の妖精らしい羽。

 僕は見れなかったけど、クラスの女子が確認させてもらったら、ちゃんと体の中から羽は生えていたらしい。

 人間に羽は生えない。

 妖精には生える。

 至極シンプルな現代的基礎知識かつ事実だ。

 それもあり、皆、ハーフということに疑問を持たなくなっていった。

 そんな折、僕は彼女の家にお呼ばれすることになった。

 実は、僕は転校生と隣の席であり、そのこともあって、何かと世話を焼いていたのだ。

 ぜひそのお礼がしたいと転校生に言われたのだ。

 お礼をしたいと言われて悪い気はしない。

 僕は嬉しさを抱えながら、休みに日の昼間、彼女の家に向かった。

 さて、出迎えてくれたのは、彼女のお母さんとお父さん。

 妖精はお母さんだ。

 ワンチャン、お父さんが妖精なのかもと思っていたけれど、そのワンチャンは儚く消えていった。

 まあ、そのワンチャンだったらそれはそれでアレだけれど。

 ちなみに、お母さんの身長は十五センチ程度。

 小さな羽数枚をフル稼働させながら、僕の目線と同じ高さで飛んでいる。

 その時僕はやっぱり思ってしまった。


(いや、体格差)


 と。

 そんな僕の疑問を、彼女のお母さんは感じ取ったのか、笑いながら教えてくれた。

 娘、生まれたときは数センチだったのに、気づけば人間らしい大きさになっていたのよ、と。

 僕は思った。


(いや、そっち?)


 と。

 お母さん、僕の疑問を感じ取っていなかった。

 お母さん、ただ、娘の成長っぷりに感動していて、それをクラスメイトである僕に共有したかっただけみたいだ。

 うん、子どもの成長は嬉しいですしね。

 お父さんもうんうん頷いている。

 まあ、それはともかく、家にお邪魔するのにこれ以上の疑問をあれこれ心の中でこねくりまわすのもあれだろうと考え、そこからは純粋にお呼ばれを楽しむことにした。

 転校生のお母さんの料理はどれも絶品だった。

 転校生のお父さんの話はどれも面白かった。

 どうやら、彼女のお父さんは妖精の研究を専門とする研究者らしく、その研究の最中に出会ったお母さんと恋に落ちたらしい。

 恥ずかしかったのか、お母さんはお父さんの肩をバンバン叩いていた。

 妖精はどうやら力が強いらしく、お父さん、身長180センチほどのがっしりした体型なのに、グラグラと揺れていた。

 ちなみに、妖精と人間が恋に落ちることは珍しいことじゃない。

 でも、両者間で子を成すということは聞いたことがない。

 そんな疑問に、ようやく答えをもらうことができた。

 実は、お母さんも科学者であり、どうしてもお父さんとの間に子どもが欲しかったらしく自身の卵子とお父さんの精子を何度も受精させる実験をしていたらしい。

 何度も、何度も。

 その結果として、転校生が誕生したとのこと。

 僕はその話を聞いて、諦めに近い感情をいただいた。


(いや、タブーじゃん)


 と。

 人間同士、妖精同士による人工授精は問題がない。

 しかし、人間・妖精間では禁止されている。

 なぜなら、どのような結果が生じるかわからないからだ。

 だからこそ、僕はてっきり自然に転校生が生まれたのだと信じ込んでいた。

 だからこその体格差疑問だったのだ。

 全てを話終えたお母さんの顔が歪む。


「実はね、娘はあなたのこと、好きらしいのよ・・・・・・・」

「今日は来てくれて嬉しいな」


 転校生は僕を両手で挟み込む。

 ああ、捕まってしまった。

 僕は、妖精だ。

 人間の男性と、妖精の女性との恋愛は問題はない。

 けれど、人間の女性と、妖精の男性との恋愛はタブーだ。

 なぜなら、その人間の女性と、妖精の男性間での繁殖手段は、人間側が妖精をその体内に取り込むことで成されるのだから。

 つまりは、食べることで子を成すのだ。

 仕組みは解明されていない。

 しかし、昔からそうであったらしい。

 だからこそ、妖精の男性は決して人間の女性との恋愛はしないし、人間の女性も妖精の男性に近づこうとはしない。

 きちんとした法整備もなされている。

 それでも、僕はお呼ばれし、なおかつ、彼女が僕に好意を寄せてくれていることがわかっていたので、彼女は妖精的要素が強いのだと思っていた。

 だからこそ、もしかしたら、普通の恋愛ができるかもしれないと。

 妖精的な要素が強ければ、問題がないだろうと。

 けど、そうではなかった。


「すまないね。この子、羽が生えている以外は人間なんだよ」


 そう言って笑うお父さんの瞳からは、純たる好奇心が溢れていた。

 妖精研究者として、ハーフの娘と純な妖精の僕が交わることでどうなるのか、その結果を待ちわびているように見えた。

 僕は彼女の手の中で、笑う。

 どうしようもない未来と、しかし、目の前にある残酷なほどの種族間の差と、そこに存在する確かな愛に翻弄されながら、ただ笑うことしかできなかった。



「それじゃあ、いただきます(愛してる)

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