表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

第9話:小さな芽

お弁当を食べ終わって自分の教室に戻った。あんなに人と話したお昼休みはいつぶりだろう。明日は結奈ちゃんと食べるし、これからもそういう機会があるかもしれない。それに、誰かと食べるのも悪くなかった。というかむしろ良かった。


席に座って次の授業の準備をする。次は嫌いな物理基礎の授業だ。私はどうせ文系だから物理は来年以降必要ない。でも1年生の間はやらなきゃいけないのが納得いかない。この学校は進学校ではないけど、大学に進む人がほとんどらしい。受験を意識して、必要ない教科は最初からしなければいいのに。そしたら私は物理、化学、生物、数学から解放されるのに。


「恵那っ。」

「わっ。びっくりした…」

結奈ちゃんが急にほっぺたを優しくつついてきた。

「恵那のほっぺた柔らかいね。」

「あ、ありがとう…?というか急にどうしたの。」

「いや?なんか難しい顔してたから。もしかして嫌だった…?」

私は結奈ちゃんの言葉に口元がふっと緩む。

「全然。嫌なんかじゃないよ。ちょっとびっくりしただけ。」

「恵那の笑ってるとこ初めて見た気がする…」

「そりゃ、ちゃんと話したの今日が初めてだし。」

「ふふっ。そうだね。」

つられて私も笑ってしまった。


午後の授業が終わって放課後になる。

私は荷物をまとめて帰る準備をした。今日は部活もないし、学校に残る理由がない。

「恵那、また明日ね。バイバイ!」

「うん、また明日。部活頑張ってね。」

結奈ちゃんは「ありがとー!」と元気に返事をして教室を出て行った。


駐輪場に向かう途中の通路で紗凪先輩を見かけた。お友達と楽しそうに話をしながら歩いている。ただそれだけなのに、なんだか胸がざわっとした。


(なんだろう…この感覚。)


先輩に見つからないようにしながら、自転車を取りに行く。1年生の自転車置き場は一番奥だから、自転車の側で先輩が帰るのを待ってから自転車に跨った。会いたいはずなのに、なんだか今は会いたくない気がした。家に帰る途中でも、胸のざわつきが消えない。家に帰ってスマホを見ると、島に向かうフェリーの時刻表が先輩から送られてきていた。

『9:40の船に乗るから、9:20くらいにフェリー乗り場に来てね』

わかりました。とだけ返事をしてベットに横になる。先輩が楽しそうにお友達と話している姿が頭から離れない。思い出すたびに胸がざわざわする。


スマホの通知がなった。先輩からのメッセージだ。

『お泊まりも大丈夫だって。荷物、持ってきてね。』

飛び上がりそうなくらい嬉しい。さっきのざわつきは一瞬でどこかに飛んでいってしまった。

『ほんとですか?!ありがとうございます!!楽しみです!!』

返信をして、私は勢いよくリビングへ降りていく。

「お母さん、今週の土曜日、先輩の家に泊まるから!」

興奮冷めやらぬ様子がお母さんにも伝わったのだろう。

「急にどうしたの?まあ別に良いけど。あんまりお家の人に迷惑かけちゃだめよ?」

「わかってるよ。」

そわそわしてリビングをうろうろする。まだ水曜日の夕方なのに、今から楽しみすぎる。

「嬉しいのはわかるから。落ち着きなさい。」

お母さんに言われてようやく落ち着きを取り戻す。

「いいじゃん。嬉しいのは事実なんだし。」

「あんまり考えすぎちゃだめよ?多分だけど恵那は嫉妬しやすいタイプだし。」

「嫉妬…?私が?」

お母さんに尋ねてはみたが、思い当たる節はある。今日の帰りの出来事が正にそうだった。


(嫉妬か…そうだったんだ。)


嫉妬なんて感情、今まで抱くことがなかったからわからなかった。これが恋なんだ。にしても先輩がちょっと楽しそうにしてただけで嫉妬するなんて、私はどうなってしまうんだ…

まあ、これから向き合っていけば大丈夫だろう。この嫉妬はまだ小さいはずだし。

今日は少し早めに眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ