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第8話:お弁当と島と星と

私はお弁当を持って先輩の教室に入った。先輩を探していると後ろから声をかけられる。

「恵那ちゃんもう来たんだ。早いね。」

「はい。先輩とお昼ご飯食べるの楽しみだったので。」

「私の席、あそこだから。」

先輩が指差したのは、真ん中の列の一番後ろだった。

「恵那ちゃん先に座ってて。私次の授業の教科書取ってくるから。」

先輩は廊下のロッカーに向かう。私は先輩の席に向かうが椅子に座る気にはなれない。勝手に他の先輩の椅子を使うのも気が引けるしどうしよう。一旦机の横に立って先輩を待つ。

「恵那ちゃん座らないの?」

「勝手に椅子使っていいのかなって思って。」

「良いの良いの。私の隣の席の人、いつも隣のクラスでお弁当食べてるから、その椅子使いなよ。」

私は先輩が指差した椅子を先輩の机に寄せて座る。机の端のほうにお弁当を広げる。

「いただきます。」

「恵那ちゃんのお弁当色とりどりですごいね。野菜と魚、お米のバランスもバッチリじゃん。自分で作ってるの?」

「はい。前の日の夜ご飯の残りを入れて、卵焼きとなにか一品作って入れてます。」

「すごいね〜。私いっつも朝起きれないからお母さんに作ってもらってるよ。」

「私なんてまだまだですよ。やっぱりお母さんの料理の方が美味しいし、見た目も良いんです。」

話をしながらお弁当を食べていると先輩の友人が後で数学を教えてほしいと先輩に頼んできた。

その人が立ち去ったあと、

「先輩勉強得意なんですね。」

「まあ多少はね?めちゃくちゃ得意なわけじゃないよ。」

「私にも教えてほしいです。」



一瞬だけ間ができた。

「あ、いや、もちろん先輩に迷惑はかけられないので、全然後回しでも良いんですけど…」

「部活のときに暗くなるまでなら教えられるよ?」

「ほんとですか?でも先輩は先輩の勉強があるし…」

「自分の勉強は家でもできるから大丈夫だよ。それに恵那ちゃんに教えたら私の理解も深まるし。」

先輩の言葉は正に勉強ができる人のそれだった。私は日本史と国語以外全然できないから、人に教えたら自分の理解も深まるなんて全く想像がつかない。

「あと、土曜日のことも考えなきゃだよね。恵那ちゃんはどこか行きたいところとかある?」

「え、あ、そうですね…」

先輩とならどこでも良いなんて私には恥ずかしくて言えない。

「先輩はどこか行きたい場所あるんですか?」

質問に質問で返す最悪な形になってしまった。だけど先輩は気にすることなく返事をした。

「私はね〜、島行ってみたいな。」

「島ですか?」

「うん。ほら、フェリーに乗って1時間くらいで行ける島あるじゃん。あそこ結構しっかり観光できるから好きなんだよね。恵那ちゃんは行ったことある?」

「私あの島行ったことないです。」

「じゃあそこにしようよ。またフェリーの時間調べて送るから。土曜日の朝にフェリー乗り場に集合ね。」

「わかりました。星はどうするんですか?」

先輩は少し考え込んでから答えた。

「時間的にこっちに戻って来てからだから、私の家で見よっか。」


ん?今先輩、家で見るって言った?先輩の家?良いの?行けるの?先輩の家に?


私は固まってしまった。ようやく状況を飲み込む。

「先輩の家行って良いんですか?」

「うん。その日の夜は星見るくらいだし、夜はちょっと寒いかもだから、すぐに屋内に行ける場所の方が良いかなって。」

私はにやけそうになるのを全力で堪えた。先輩は善意で誘ってくれているのに、私は邪な気持ちがありすぎる。

「お泊まりとかって…」

私は思わずそう呟いてしまった。気がついたときにはもう遅い。どうやらその呟きは先輩の耳に届いてしまったようだ。

「お泊まり?私は良いけど、帰ったらお母さんに聞いてみるね。」

「はい…お願いします…」

私はなんてことを言ってしまったのか。さすがに引かれるかと思ったけど意外とそうでもない。もしかして女子高生はそういうものなのかと疑うほどあっさり受け入れられた。

「猫ちゃんにも会いたいです。」

私はなんとかそれっぽい理由を付け足した。

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