第6話:約束
お風呂のあとのリラックスタイムに先輩からの電話。私は優からスマホを受け取った。確かにその画面には先輩から着信中の文字が映っている。
応答ボタンを押して電話に出る。
「はい、紗凪先輩、どうしたんですか?」
「あ、もしもし?恵那ちゃん、今ちょっと時間ある?」
ないわけがない。先輩が言うなら時間なんていくらでも捻出できる。
「今ですか?大丈夫ですよ。」
私は電話をしながら階段を上がって自分の部屋に入る。ベットの端に座って電話を続ける。
「さっきニュースで見たんだけどね、今度の土曜日に、こと座流星群が綺麗に見えるんだって。一緒に見ない?」
まさかの先輩からのお誘い。私はすぐに返事をした。
「行きます行きます!絶対行きます!」
「そんなに楽しそうにされると、こっちまで楽しくなっちゃうね。」
誰かと休日に会う約束なんて小学校以来だと思う。誘われた相手が先輩なのも相まって私の心は飛び跳ねている。
「何時くらいにどこに行けばいいですか?」
「そうだねぇー、せっかくだし、ちょっと早めに集合してどこか遊びにいく?」
「はい!そうしましょう!」
「じゃあ、また部活のときに色々決めよっか。遅くにごめんね。おやすみ。」
「はい。先輩もおやすみなさい。」
電話を切って枕に顔を埋めて足をバタバタさせる。休日に二人で遊びに行って、夜には星を見る。なんてロマンチックなんだろう。これはもうデートなのでは?そう思ってどんどん顔が熱くなっていく。しかも「おやすみ」まで言ってくれた。恋をすると思い込みが激しくなるなんて思ってもいなかった。少しでも気を抜くと、先輩も私のことが好きな前提で色々考えてしまう。
「あ、」
先輩との初デート(自称)について色々考えていたが急に冷静になる。
「どうしよう…服、着ていけるやつないかも」
クローゼットを開けて中を見る。
思っていたより服はあるが、果たして先輩の横に並んで歩ける服などあるのか。
(先輩、制服姿があんなに可愛いんだから私服も絶対可愛いよね…)
クローゼットをガサゴソするが、いまいちパッとしない。服に興味を持たなさすぎたせいで、イマドキの服が全くわからない。世間のJKはどんな私服なのか検討もつかない。
しばらく服で悩んでいたが、眠たくなってきた。時計を見るともう日付が変わろうとしている。部屋の電気を消してベットに横になる。先輩に「おやすみ」と言ってもらえた嬉しさが頭から離れない。私はなんとか眠りについた。
翌朝、いつも通り着替えてご飯を食べて家を出る。今日は水曜日だから部活もない。先輩とは教室のある校舎が違うから会うこともほとんどないと思う。そんなことを考えながら駐輪場に自転車を停めると向こうで誰かが手を振っている。誰だよ。朝から騒がしい人だな。今日の私は先輩に会えない日だからちょっと機嫌が悪いぞ。
駐輪場から校舎に向かう通路に入るときにちらっとその人を見る。
「紗凪先輩…?」
「も〜恵那ちゃん全然気づいてくれないじゃん。せっかく手振ったのに〜」
不満げな表情を浮かべる紗凪先輩。私はまだコンタクトをつけていないから裸眼だ。私の目は結構悪いから、近くまでいかないと人の判別ができない。
「すみません…裸眼だと、あの距離から誰かはわからなくて…」
「恵那ちゃんコンタクトだったの?」
「はい。」
「裸眼で自転車漕ぐの怖くないの?」
「小さい頃からよく走ってた道なので、ある程度覚えてるから大丈夫ですよ。」
ふーん、と返事をした先輩の横に並んで歩く。靴箱の前で先輩と別れる。
「あ、そうだ先輩!」
私は振り返って先輩を呼び止めた。
「今日、お昼ご飯一緒に食べませんか?」
「良いよ。どっちの教室で食べる?」
「私が先輩の教室行きます!」
「じゃあ、昼休み待ってるね。」
そう言うと先輩は靴箱に入っていった。




