第13話:正直
部屋に戻ると、まだ枕で丸まってぽんちゃんが寝ている。今日も枕を取られてしまった。気持ちよさそうに寝ているから良いけど。どうして真っ先に恵那ちゃんの顔が浮かんだのか。私にはわからない。最近よく話すからだろうか。2年生になって増えた交友関係は恵那ちゃんくらいだから、そこが新鮮で、印象に残っているだけだろう。明日も学校だから早めに寝ることにした。
翌朝、目覚まし時計の音で目が覚める。
(恵那ちゃん、もう起きたかな…)
昨日の七彩ちゃんとの会話を思い出す。私はぶんぶんと頭を振って着替え始めた。
朝ごはんを食べて家を出る。そのまま真っ直ぐ自転車で進むと、恵那ちゃんと別れる交差点が見えてくる。信号で止まって待っていると、恵那ちゃんがちょうど通りがかった。
「あ、紗凪先輩、おはようございます。今日はちょっと早いんですね。」
「おはよう。今日はちょっと早起きしたからね。」
恵那ちゃんと時間をずらして登校するはずが、ちょうど時間が重なってしまった。朝から恵那ちゃんに会うと、昨日のことで頭がいっぱいになる気がしていたから。
「先輩?もしかして体調悪いんですか?なんだか表情も暗いし…」
「そんなことないよ〜。元気元気。ちょっと眠いからそう見えるだけじゃない?」
私はそう言ってごまかすしかなかった。実際、気分は晴れないし、体調も少し悪い。明日は恵那ちゃんと出かけるんだから、しっかりしないといけないのに。
学校に着いて自分の教室に向かう。今日も恵那ちゃんと一緒にお弁当を食べる約束をした。ただぼんやりと過ごしていると、あっという間に昼休みになった。チャイムが鳴って2分もしないうちに恵那ちゃんがやってきた。
「先輩、お弁当食べましょ。」
少し気分も楽になった。朝は憂鬱になるときがあるから、今日もそんな感じだったのだろう。
「うん。恵那ちゃんのお弁当、やっぱり綺麗だね。」
「あ、ありがとうございます…」
少し照れたような表情をする恵那ちゃん。だが次の瞬間には、幸せそうな顔をしながらおかずを食べている。恵那ちゃんにとって私はどんな存在なのか。仲の良い先輩後輩の関係なのか。それとも別の何かか。恵那ちゃんは、ご飯を食べているときと、部室で二人で話をしているときくらいしか表情が顔に出ない。人見知りのせいもあるのだろうが、他の人には愛想がないように見えるのだろうか。
ずっと考え事をしながら話をしてお弁当を食べ終わる。恵那ちゃんは次数学のテストがあるからと早めに自分の教室に帰っていった。水を飲んでいると、小学校からの友達の真夏が声をかけてきた。
「紗凪、さっきの後輩ちゃん、なんか変に気遣ってなかった?」
「そう?」
「うん。前来たときはなんかもっと自然な感じだったけど、なんか今日は遠慮っぽかったというか、」
私のせいだろうか。考え事とか胸のもやもやが顔に出ていたのかもしれない。真夏は私の前の椅子に座って私の方を向いた。
「なんか悩んでる?」
「わかんない」
「紗凪はさ、考えすぎ。もうちょっと肩の力抜いて、楽にしてなよ。それに、あの後輩ちゃん。恵那ちゃんだっけ?あの子のこと話すときの紗凪、すっごい楽しそうだよ?」
「……」
「自分に正直になるのが、一番自分を助けるよ?」
私はようやく口を開くだけの言葉の整理ができた。
「私は、恋愛とかわかんない。でも恋愛の話してるとき、いつも恵那ちゃんの顔が浮かぶの。」
そこまで言うと私は、恥ずかしさで机に突っ伏してしまった。
(紗凪のためにも、あの後輩ちゃんのためにもまだ黙っておくか…)
午後もぼんやりと時間が過ぎていく。いつの間にか放課後で、部活の時間だった。明日は恵那ちゃんと出かけるのだから、整理はしておかないと。私は恵那ちゃんに悟られないよう注意しながら部活を過ごした。
次回からは恵那視点です。




