第12話:恋に不向き
紗凪視点です。
小さめの十字路で恵那ちゃんと別れて、それぞれの家に帰る。私は家に着いて自転車を停める。
「ただいま〜。あ!ぽんちゃんお出迎えしてくれたの?ありがとう〜!」
ぽんちゃんのお腹をわしゃわしゃしてリビングに向かう。
「ただいま。あれ?お父さんもう帰ってたんだ。早いじゃん。」
「おかえり。今日は仕事が早く終わってね。」
キッチンからお母さんが出てくる。
「おかえり。手洗いうがいした?」
「したよ。」
自分の部屋へ向かおうとする私の背中に、お母さんが声をかける。
「土曜日に後輩の子、泊まりにくるんだっけ?」
「うん。そうだけど、やっぱお泊まりだめ?」
「いや?そういうわけじゃなくて、ちゃんと部屋の片付けしときなさいよ。お布団もしかなきゃいけないんだから。」
「わかってるよ。」
私は片付けがそんなに得意じゃない。自分の部屋に友達を上げることはあっても、そんなに部屋の散らかり具合を指摘されることはない。だけど今回は恵那ちゃんが泊まりにくる。布団を敷くスペースを確保するのもそうだし、物が多い床で寝させるわけにもいかない。
「片付けなきゃな…」
とりあえず床に置いてあるカバンや洗濯物を棚に入れた。これだけでも結構片付いたように見える。ぬいぐるみとぽんちゃんのベットはこのままでいいとして、問題は床に積まれた雑誌、小説、漫画だ。ベットの下に少し避難させているが、ベット下のキャパシティを超えたものが床に乱雑に積まれている。本の片付けに悩んでいるとぽんちゃんが部屋に入ってきた。
「むにゃ〜ん。」
「ぽんちゃん、どうしたの?眠いの?」
ぽんちゃんは私のベットに登って枕の上で丸くなってしまった。
「今じゃなくていいか…」
私は着替えを持ってお風呂場へ向かった。いつもお風呂の電気は消して入る。光はお風呂の操作パネルの光だけで、その雰囲気はなんとも言えない良さがある。
(恋愛か…やっぱり高校生の間に一回はした方がいいのかな…)
昼休みの友達との会話が頭をよぎる。仲の良い友達には大体彼氏がいて、私も好きな人はいないのかとよく聞かれる。部活で恵那ちゃんに聞いたとき、恵那ちゃんはそういうのに興味がなさそうだった。まあ、人見知りだからかもしれないけれど。
そんなことを考えていると、いつの間にか指がしわしわになっていた。少し急いで身体を洗って、シャンプーをする。そのあと顔を洗った。シャワーで泡を流す合間にも、頭の中は恋愛そのものについてでいっぱいだった。
お風呂から出ると、お母さんが伯母さんと電話をしていた。どうやら今度の週末に一緒にご飯に行くらしい。気にせずにスキンケアをしていると、お母さんがこっちに話題を振ってきた。どうやら従姉妹の七彩ちゃんも話に混ざっているらしい。
「紗凪〜?いるんでしょ?」
電話の向こうで私を呼んでいる。
「七彩ちゃん、久しぶりだね。元気?」
「元気だよ。紗凪の方こそどうなの?部活は…やってるかわかんないけど。勉強とか、恋愛とかいろいろあるじゃん?高校生なんだし。」
「勉強はぼちぼち頑張ってるよ。部活言ってなかったっけ?天文同好会だけど。」
「え〜!初耳だよ〜!紗凪ってば全然電話もしてくれないし、メッセージも送ってこないんだもん。」
「ごめんごめん。」
「てかさ、部活やってるなら同級生でも、後輩でも、かっこいい人、一人くらいはいるんじゃないの?」
「同好会だから。部員私と後輩の女の子の二人だけだし。」
「なんだよ〜。せっかくの華のJKなんだからさ〜。恋愛しないと後悔するよ?」
同い年だったよね…?どこか達観したような、なにか違う目線から話をしているようだった。
「そういう七彩ちゃんはどうなの?」
「私?私はそりゃあもう…彼氏いないよ。」
「いないんじゃん。」
私が笑ってみせると、七彩ちゃんはすかさず食いついてきた。
「その笑顔で絶対何人か惚れさせてるから!ほら、知ってる人の顔思い浮かべて!」
しぶしぶ言われた通りにすると、一番に恵那ちゃんの顔が浮かんできた。
「やっぱり私恋愛向いてないかも。」
そういうと、そろそろ眠いからとごまかして電話がつながったままのスマホをお母さんに返した。




