ルミナの日常 ― 一日の終わり
夕暮れの丘を下り、小さな石造りの家に戻ったルミナは、扉を閉めてほっと息をついた。
町の賑わいが遠ざかり、家には静寂だけが広がる。
かまどに火を入れ、野菜とパンで簡単な食事を整える。
スープの湯気が立ち上り、窓の外に瞬く町の灯と重なり合う。
ひと口ごとに温かさが体を満たし、疲れがゆっくりほどけていった。
食後、桶に水を汲み、布で体を拭う。
瑞々しい肌に残る水滴が月光を受け、小さな星のように煌めいた。
滴は鎖骨を伝って胸元へ流れ落ち、壁に映る影を淡く揺らした。
夜風が吹き込むと草いきれと野花の香りが混ざり、少女の輪郭にほんのりとした艶を添える。
やがてルミナは磨かれた金属板の前に腰を下ろし、髪を解いた。
栗色の束がさらさらと崩れ、肩から背へと流れ落ちる。
それは夜の静寂に落ちる小さな滝。
月明かりを受け、絹布のように柔らかに光を返しながら波打った。
木櫛をゆっくり通すと、髪は流れる糸となり、さらさらと小さな音を立てて夜に溶け込む。
風がそっと吹き込み、髪の先が舞い、月下に咲く野花の花弁のように香りを散らした。
「母さんも、こんなふうに……」
唯一の遺品である木櫛を撫でながら、ルミナは小さく呟いた。
月光に包まれた横顔は、町で見せる快活さとは違い、儚げで繊細な少女のものだった。
櫛を枕元に置き、寝台に横たわる。
布団に流れた髪が月光を受け、淡い光を返した。
野花の香りがそっと漂い、夜の静けさがすべてを包み込む。
そのままルミナは静かに目を閉じ、安らかな寝息とともに、一日の幕を閉じた。
うまくまとめきれてないです。
読みにくくてすみません。