護祈 4
少ししてメロウとカヅキが起きてくる。
朝食の匂いでなのか人の気配を感じてかメロウは部屋に入ってすぐに挨拶をした。
「おはよう、ってルツキちゃん部屋から出てきてる~! どうりでおいしそうな匂いが」
ゆったりと部屋に入ったメロウは先に起きていた二人を見て少し固まる。
「朝食を作るなら僕も起こしてくれればよかったなルツキちゃん」
驚いた様子でカヅキはルツキのもとへと駆け寄ると両手をとって彼女の回復を喜ぶ。
「ほんといつも時間通りね。ちょうどいま二人を呼びに行こうかと思ったところ。さぁ、みんな揃ったしご飯にしましょう」
挨拶を交わしルツキは席に着く。
「ユウスイはまだ寝ているのか。そろそろ夜更かしはちゃんと注意しないとだめじゃない?」
廊下の方を見てこの場にいない一人を指してカヅキがため息をつく。
「ユウスイならなんか明け方にベットにも繰り込んできたわ。いつも明け方にさも自分の部屋のように入ってくるの」
「まったく、なんであの子はあのセキュリティーコードを解除できるのよ~。数時間おきに自動で書き換わってるんじゃないの~?」
「いや~、僕も人のこと言えないけど優れた才能は悪用したら危ないね。あはは~」
ルツキのことで盛り上がっていて朝食をとろうとしてテーブルの方へと移動しようとして、そこでようやく近くにいたハクマの存在を思い出す。
「あら、おはよ~」
「おはようハクマ君。今日もトレーニングの後なのかな? お疲れさま」
「おはようございます」
朝食を終え食後は再びデータの整理を始める。
ルツキやカヅキたちは過去に現れた巨躯の情報から、違う場所と時刻に似たような大きさや能力を持った巨躯が現れた場合のシミュレーションを行う。
ハクマは前の部署での仕事から買い出しで買った食材や日用品などの管理報告書を作る。
昼過ぎくらいにユウスイが起きてくると遅い朝食をとり自分の仕事を始めた。
午後に入ってしばらくしてベリーショートでがっしりとした体つきの女性が入ってくる。
怪我をしているようで右腕に包帯を巻きスリングをつけ首から腕を下げている。
「ただいま! 私の不在中に巨躯との戦闘があったようだな。みんな怪我はないか?」
ドンとはっきりとした声その声を聴いた瞬間に全員が行っていた行動を止めて席を立ち整列する。
イアホンをして作業していたユウスイもその声に跳ね上がるように立ち上がり席を立ち整列に加わった。
「ええ、いたって健康よ」
「おかえりなさいレオ隊長~」
「申し訳ない、僕らは買い出しでタイミングが悪くて」
ただ一人ハクマだけが彼女が誰だかわかっておらず、皆の反応で彼女が誰なのかに気が付きワンテンポ遅れてユウスイの横に並ぶ。
ガタイの良い筋肉質な女性はハクマの姿を見て踵を返し戻ってきて彼の正面に立つ。
「そこの君が新人だな。初めまして。対巨獣討伐チームジアース、護祈サポートチームの隊長、ホシミズ・レオだよろしく。利き腕を怪我していて左手ですまないな」
左手で力強い握手を交わす。
握手を交わし終え再び皆が見える位置へと戻るとメロウが質問を投げかける。
「会議どうでした~?」
「まったくもって無駄な時間だった。都市の重役のご機嫌取りも非常に面倒だった。ああいうのはもっと上の立場の人間を出しておけばいいと思うんだ」
会議の話を聞こうとカヅキが訪ねた。
「護祈サポートチームの隊長は全員参加したんですか?」
「ああ、四十何名だったか皆出席していた。そこで担当する護祈の近況を聞いたことが唯一の収穫だったな。ストレスの緩和方法やそれぞれの趣味などだな、やはり同じ場所で育ったもの同士似通った部分もある」
イアホンを手で弄びながらユウスイが聞く。
「それで、巨躯の頻発する発生理由はなにか分かったんですか? ネットじゃ陰謀論が盛り上がってたけど」
「さぁ、少なくとも巨躯の発生は人的に起こせる現象ではない。護国獣と原理は同じだが、護祈やそれに準ずるものたちの育成機関もなく、そのもととなるアースライトが各国各都市が厳重に保存している。結果、巨躯は今までと同じ自然発生だという考えだ。知っていることの説明を受ける実に無駄な時間だった」
最後にルツキが問う。
「お姉さま方はみんなお元気か聞いていただけました?」
「ああ、特に大きな怪我や病気の話はなかった。ただ巨躯の出現の多さに疲弊する護祈が増え。脱力や無気力を訴える者も出ていると。ルツキお前もしばらく寝込んでいたそうだな、ここにいるということは体の調子は大丈夫なんだな? 時間があるときにメロウにもう一度見てもらえ」
それぞれの質問が終わるとテーブルの方へと歩いていきレオはどさりと椅子に座る。
レオが座るとそれぞれが別々に動きだし、メロウは昼食をとったかを尋ねると湯を沸かしユウスイとルツキは作業に戻りカヅキは部屋を出ていく。
ハクマはユウスイに小声で訊ねた。
「そういえば隊長ってルツキさんじゃないんだな。一番偉そうだったからてっきり」
「そりゃ、護祈は命令が来たら護国獣で巨躯を倒すだけだからね、現場の指揮や責任は隊長がおわないと。戦闘後に疲労で倒れるポンコツに任せられないよ。でしょ?」
「たしかに」
二人をジトリとルツキが睨む。
「ねぇあなたたち、私に聞こえてるわよ。いないところでするかもっと声を潜ませなさい」