護祈 2
基地内の設備のカヅキは自販機でお茶を二本買うと片方をハクマに投げ渡す。
「いったん休憩入れようか。ずっと運びっぱなしで疲れたでしょ」
「はい」
階段に腰掛け二人は休む。
建物の外から訓練の声と車両が走る音が響いてくる。
「それで、ハクマ君はどこの基地から来たんだっけ?」
「大桜山基地からです」
「へー、大きい所じゃん。僕も前に何回か行ったことがあるよ、護祈の健康診断で、確か護祈の数も多かったよね?」
「完全に護祈の設備のある所と離れてたんですよね。だから遠目にしか見たことはなくて何人いたかとかかは」
「なるほど。それで、初めて会った護祈の感想は?」
「何というか、その少し偉そうな感じの人でしたね。いや立場的には上司なんですけど」
「んーそうだね、完全の独立した指揮系統で、指示されることはあっても命令されることはないからね。実際護祈は大切に育てられているから世間知らずのお嬢様っぽさがあるけど、ほんと悪い子じゃないんだ。それにさっきも言った精神の不安定さが行動にも出てる」
「結構大変そうですね護祈のサポートって」
「まぁ直接戦闘はないけど意外とバタバタはするよ、巨躯はいつ現れるかわからないし。とりあえず巨躯が出た際のハクマ君の仕事は戦闘後に彼女を乗り物に運ぶこと。相当に嫌がるだろうけど急いでその場を離れないといけないからちょっと我慢してね。今日の回収はありがとう、これからも頼むね」
「離れる理由はお昼に聞いたやつですね、人が集まってくる。暴れられると運び辛いですがあのくらいの重さの荷物ならよく運んでましたしできると思います」
「ほんと助かるよ、少し前まで僕やメノウさんとでルツキちゃんを運んでたんですから。戦闘後は少し興奮気味で暴れてて大変だったんだ」
「あの、もう少し護祈のことルツキさんのことを教えてくれませんか? 話す機会があればいいんですけど」
「今日は無理かな、戦闘後は疲れてるから自室に籠っちゃうし。僕からh成すより直接触れ合ってみたほうが偏見とかないと思うけど。意外といい子だよルツキちゃんは。でもまさかだけど、女の子の部屋に押しかけたりしないよね?」
「ははは、そんなことしませんよ。ただでさえ今日無理やりに護祈の人を運んで、距離をとられているんですから。嫌ほとんど話していない状態で急に抱きかかえられてびっくりしただろうし怖かったとは思います」
「あはは、だよね。運んでもらうのが必要なことはこっちからも言っておくから、ハクマ君は気にしないでいいよ。ただ、漬け込んでセクハラとかしないようにね? 一応あの衣装は厚手で触っても感触はないんだけど」
「動きづらそうでしたね、雨吸ってなおさら。あの白い服」
「あんな雑に扱ってるけどすごく高い生地だとか聞いたね。さて荷物運びはもうひと往復で終わりかな? あとは私物? あまり重たくないのなら僕が部屋まで一つくらい持ってあげられるけど」
「いや大丈夫です、割れやすいものもありますし後は自分で運びます。お茶ごちそうさまでした」
カヅキと別れハクマは荷物を取りに階段を降りていく。
階段を降りていくとそこでちょうど護祈サポートチームの建物の前に荷物を運んでくる明るい茶髪の整備兵と出会う。
「どうも、ここが護祈のサポートチームの部屋でいいんですかね? 自分は新人でまだ基地のことよくわかってなくって、荷物はここ置いておいていいんですか?」
「ああ、はいありがとうございます? 荷物?」
「んじゃ受け取りのサインを」
誰からもそんな話もなく勝手に受け取っていいものかと迷ったがサインをし荷物を受け取る。
荷物のあて名はヨサキルツキ。
「護祈の人ってこんなところにいたんですね。基地の中を探しまわりましたよ」
「ああ、自分もそうなんですよ。今日こっちの基地に移転してきたばかりでまだよくわかってなくて」
「そうなんですねお互い、がんばりましょう。それじゃあまた」
サインを受け取ると整備兵はさっさと津日の配達先へと向かって行く。
受け取った手前、その場に置いていくわけにもいかず小包を手にしたハクマは一度メロウやユウスイのいる大部屋へと戻る。
「私物を運んでいたら、荷物が届いたですけどどうしたらいいですか?」
「あー、ユウスイのね~。イアホンしてて気がついてないから渡して上げて~」
「受取人の名前ルツキさんの名前ですけど?」
「まぁた護祈の経費で買ったのねぇ」
メロウが誰かと話しているのに気が付き振り返るユウスイ。
「あ、荷物が届い……」
ハクマの持つ荷物に彼女はイアホンをとることなく無言でよこせと手を伸ばす。
荷物を受け取るとユウスイはまたモニターに向き直り作業に戻る。
肩をすくめるメロウとハクマが苦笑いでその小さな後姿を見ているとカヅキが部屋に入ってくる。
「荷運びは終わった? ……ああユウスイの荷物か。メロウ、今見てきたけどルツキちゃんは寝ちゃってた。僕がユウスイを連れてっちゃったから、戦闘に慎重性がちょっと抜けちゃってたね」
「そう、今日の巨躯との戦闘は結構厳しかったみたいねぇ」