輝き 1
ハクマが目を覚ますとカビと土埃っぽい匂いのする廃墟ではなく薬品の匂いがする白い壁の室内。
体を起こそうとすると腹部に違和感を感じうめき声をあげ、首だけを動かしてあたりを見回す。
ハクマの腕には点滴が繋がれており、ハクマの寝るベットの近くでユウスイが眼鏡型のデバイスをつけて宙に向かって指を振っている。
「襲撃者は……変換機は……」
「ああ起きた。メノウ、ハクマが起きたよ。隊長にも連絡入れておくか」
手を止めちらりとハクマの方向を見てユウスイが部屋の外に向かってメノウを呼ぶため声を張った。
跳ばれて部屋の外からメノウが顔を出すとすぐにハクマの体調を確認する。
「おはようハクマ君、丸一日寝てたのよぉ、体起こせる? まだ痛み止めは聞いているけど痛むなら行ってねぇ。他にも食べてないからお腹がすいているでしょ~、とりあえず消化にいいもの作ってくるから」
「あの、ルツキさんと隊長は」
「ルツキちゃんは今は大桜山の基地に呼び出しを受けて、カヅキちゃんといないわぁ。ここは病院、隊長は別の部屋で療養中よぉ。はじけ飛んだドローンの攻撃で背中と両足を負傷したけど歩行以外に問題はないわぁ、この間腕の怪我が治ったばかりなのにねぇ」
ハクマの体温を測りながら説明するメノウ。
自分の作業に戻ったユウスイが指を振りながら得意げに答える。
「あのドローンは殺傷ではなく負傷目的だからね、腕や足の骨にヒビでも、内臓や脳震盪さえ大成功ぐらいの面制圧型。コンクリートの建物内を跳ね回りやすい鉄球じゃなくてもネジやナット、石ころでも発射物を代用できる安価なドローン、戦場での士気低下と病床の圧迫目的の非殺傷性の高いの優しい兵器。義体やパワードスーツの貫くほど銃の威力が上がりすぎて逆に軽装になった結果、雑な破片攻撃が有効になった時代逆行兵器」
ズズズと紙パックのジュースを飲むユウスイ。
「ハクマ君の怪我は浅かったから縫った傷がくっつけばすぐに戻れるとは思うわよぉ。射程が短い銃だったんでしょうねぇ、弾丸は腹筋で止まって内臓には到達してはいなかった」
「なら、またルツキさんの……」
車いす姿のレオ隊長が現れ作業の手を止めデバイスを外すユウスイとハクマの点滴の量を確認したメノウは、レオの入室に席を立ち背筋を伸ばして部屋に入ってくる彼女を迎えた。
「ああ、そのことなんだが……ハクマが目を覚ましたと聞いたから話しておこうと思ってきた。話し声は廊下まで響いていてここに来る移動中に聞いていた。影刃青輝の討伐命令が出た」
「護国獣の力が奪われたからね。護祈たちは戸惑っているよ。変換機の発信機も電波遮断する特殊ケースの中か地下深くなのかで追跡もできないし」
「私は護祈の心身の管理担当だからよく知らないのだけどぉ、あのペンダントは誰でも護国獣になれるの~?」
「護祈でなければ体の負担が大きいらしいがつかえるらしい。アースライトの技術に関しては詳しい説明は受けてはいないがな。だからどこかの都市に盗まれた護国獣影刃青輝が現れる。まだ、高エネルギーを使った自爆の可能性もあるが……。こちらに指示は来ていないが、今現在各地の護祈の配置転換が行われている」
「襲撃者は奪った変換機で、どこの都市を狙うかだよね。国の心臓部の三柱都市かアースライト山地の大桜山都市か、防衛隊本部のある雷梅都市か、他にも候補はあるけど……。まぁ何が目的なのか、だよね」
「私たちの今後も心配よねぇ、ルツキちゃんは助かったけど二度も危ないことになった。今までどおりは無理よねぇ」
「ああ、変換機を失った今ルツキにできることはないが護衛の増員は免れないだろう。使われていなかった他施設の再稼働……使っていない部屋にある荷物片づけておかないとな。あと現在療養中の護祈レイサの戦線復帰」
「あの人は無理でしょ、戦えたとてトラウマで戦闘の後が大変」
「精神が不安定化して唐突なパニックとしばらく食事がとれなくなる、やっと日常生活が送れるようになったのに」
「どこに護国獣が出てくるかわからない以上、休暇、療養中の護祈たちも召集される」
「護国獣が都市を破壊して回ったら護国防衛隊の信頼も落ちるよね」
レオとユウスイが渋い顔をする。
「すみません、俺がしっかりと奪い返していれば」
話を聞いていたハクマが謝る横でメノウが励ます。
「ハクマ君はよくやったわよ~ルツキちゃんも守ってえらいわぁ」
「できれば、変換機も持ち帰ってくればもっと偉かったけどね」
「無理を言うなユウスイ。ルツキの首元まで届く距離まで接近を許してしまい、とっさに彼女を守れたのはハクマの良い判断だった」
「巨躯との戦闘以外に大きな怪我もなく、ルツキちゃんはまたすぐ戦闘に出られるでしょう」
「腹のダメージは大きかったけど、あれ一か月くらい休みは必要なんじゃない?」
「どのみち変換機がない以上護国獣にはなれない。新しいのが用意されるか盗まれたものが取り返すまではどのみち戦えない。まだ連絡はないが大桜山の基地で預かってもらう方が彼女としても安全だろうし、護祈の配置転換で我々もそちらに移動になるかもしれない。メノウとユウスイは戻ってきたらカヅキとともに移動になってもいいように基地の荷物をまとめておくように」
話は終わり解散となりハクマの病室から人が減る。
ふと外から見ると何処かの都市の様で窓の外は巨大迷宮のような見知らぬ集合住宅街が見えた。
遠くには白む大桜山が見える。




