守る 4
攻撃でできた穴からバリアに守られているルツキのもとへと向かうハクマ。
バリアに向けて変換器を向けるとバリアに穴が開きそこからハクマはバリアの内側へと入った。
ルツキの持つアースライトのバリアは正面に壁を張る指向型でなく、彼女を中心に全周囲を守るタイプとなっていて崩れた建物の中でも十分な隙間を作っている。
レオは通信をしながら白い銃で砲撃が飛んできた方角にバリアを張りながら瓦礫の山を下りルツキのもとへと向かう。
「だめだ、電波妨害でユウスイと連絡がつかない。カヅキはまだ付近を飛んでいるから手でもふれば迎えには来てくれるだろうが。ハクマ、ルツキは無事か?」
「呼吸はしていますが……メノウさん、早く来てこれは連れ出しても大丈夫なんですか!?」
「待って、とっかかり探してるの。ガラスといい鋭利な鉄筋といい二人ともどこから登ったの。よいしょ」
二発目の砲撃、より広く瓦礫が吹き飛ばされ穴の中に光が差す。
攻撃で瓦礫の一部が崩れてきてハクマとルツキは生き埋めになる。
「ドローンが降りてくるわよぉ!」
風を切る音を立ててハクマたちの上を飛んでいたドローンのうちの一機が急降下してきた。
ドローンは空中で自爆しその威力を前方へとむけて無数の鉄球に乗せて放つ。
ショットガンの様に広範囲にばらまかれた鉄球はコンクリートにぶつかり火花を散らして跳ねあがる。
予測できない鉄球の反射が指向性のバリアで守り切れない方向から飛来し飛び散った球体のいくつかがレオとメノウに当たった。
ティルトローターが飛んできて残りのドローンを撃ち落とす。
ドローンを迎撃したティルトローターを撃ち落とすために飛んできた遠方からの砲撃をバリアを張って耐えると射撃位置を探してメノウたちの頭上を飛んでいく。
「カヅキが砲撃の対処に向かった、これでもうスマートポインタの弾丸は飛んでこない」
「隊長! 血が!」
「いいからルツキを優先しろメノウ!」
瓦礫の中で外の様子がわからないハクマが埋まった瓦礫を内側からどかせないか試してると、ようやく瓦礫を登ってきたメノウと顔を合わせる。
「ごめん、遅れたわぁ。ルツキちゃんは」
「ぐったりしたままで、呼びかけても反応がなく」
メノウはルツキのそばによると彼女の様態を確認する。
「ショックで気を失っているだけみたいね~よかったぁ。すぐ連れ出しましょう、カヅキちゃんが戻ってきたらすぐに病院へ~。ルツキちゃん動かすには変換機を止めないといけないわね、ハクマ君変換機で瓦礫をどけてもらえる」
正面に展開される壁を使って大きな瓦礫を押しのけて出口を作った。
「隊長も怪我をしたの、ハクマ君悪いけど一人でルツキちゃん抱えて歩ける?」
「足場が悪いので転ばないよう気を付けて歩きます」
抱きかかえるとあしもとがみえなくなるためルツキを背負って立ち上がる。
「ルツキちゃんの変換機を止めるわよぉ、崩れてくる瓦礫に気を付けて」
ガラガラとバリアで押し上げられていた瓦礫が落ちてきた。
ハクマとメノウは崩れてくる瓦礫が足元へと転がってくる前に、瓦礫をどけて作った出口へとむけて歩き出す。
「ルツキは?」
「ええ、気を失っているわぁ。串刺しに近い形で吹っ飛んでいったもの、目を覚ましてもしばらくは精神的に来るかもねぇ。何とか早く復帰できるうようには頑張るわ」
レオは負傷し足や腕背中から血を流している。
「ハクマ君、私は隊長の方につくわね。出血がひどいから止血しなきゃ」
「攻撃を受けたんですか」
「ドローンだ。残りはカヅキが破壊したがな。メノウは大丈夫なのか」
「ええ、あたりはしたけどかすり傷、血も出ていないわ~」
瓦礫の山を下り先ほどティルトローターを降りた場所に戻ろうとする三人。
「道路は広いがすぐそこの建物が傾いている、ここでの着陸は無理そうだな、さっきの場所に戻ろう」
「カヅキちゃん戻ってこないわねぇ、どこまで行ったのかしら」
負傷者を出しルツキを回収しすぐにこの場を離れようとしていたため、周囲の警戒をおろそかにしていた。
そのため音もなく建物の中から飛び出してきた襲撃者に気が付いたのは、ハクマがティルトローターがどこを飛んでいるか首を回した瞬間にたまたま襲撃者が視界に入った。
「敵です、建物の中から!」
ハクマの声にメノウとレオはあたりを見渡し襲撃者を見つけ白い銃を構える。
体格でかろうじて男性だとわかる程度で黒い服で目出し帽をかぶり顔は見えない。
「二人は正面を警戒しろ」
レオは襲撃者に向けて壁を作ったまま周囲を見渡し更なる襲撃者がいないか探す。
ハクマたちは白い銃で壁を作るが襲撃者は足を止めず走ってくると手にした何かを正面の壁に向かってを投げ、投げたそれは爆発的な勢いで白い煙を吐き出した。
煙は壁の左右にも広がり風の名が出てハクマたちの方へと流れてくる。
視界が白く包まれる中を突き抜けてきた襲撃者はルツキを背負うハクマを突き飛ばし地面に倒す。
「ハクマ君!」
意識のないルツキを守るためにハクマはすぐに起き上がり彼女の上に覆いかぶさるようにして守る。
襲撃者が一度叫んだメノウの方を向くがすぐにしゃがんでルツキの首から下がるペンダントを力ずくで奪うとその場から走り去る。
「目的は変換機が!」
レオが襲撃者を逃がさないように壁を張り直し、走り去ろうとする襲撃者の前に壁を作るが白い煙が正確な位置を知ることを妨げ逃走を許してしまう。
「護国獣の力が奪われるのはまずい。エネルギーの塊であるアースライトが持ち去られることも問題だハクマ、走れるか!」
ティルトローターが白い煙を吹き飛ばし高度を落としてくる。
『みんな大丈夫? またジャミングで何も聞こえなくなって。さっきスマートポインタは防衛隊が抑えた』
「ルツキの回収を最優先にしてくれ。ハクマ、深追いはするな身の危険を感じたら引き返してこい。変換機には発信機が付いているからな」
一人襲撃者を追うハクマ。
幸い襲撃者の脚は早くはなく、レオの素早い指示で追い始めたハクマは襲撃者の姿をしっかりと捉えていた。




