守る 2
『横に浮かぶ変な板っ切れは盾みたいな機能してるみたい。戦車隊の砲弾を誘引している本体も異常に硬く広域制圧用の夢龍聖懐は失敗だったみたい。スケール2程度のアースライト量だけどそれ全部防御の振ったみたい、最近硬い奴の出現頻度高くなってきたな』
「他の護国獣を、その言い方ルツキさん怒らないか」
『火力が影刃青輝頼りになるし間違ってない。夢龍聖懐は仲間を連れた巨躯の相手複数体討伐を得意とする分、威力が散って火力が足りなくなる恐れがある。得意の狙ったところにしっかりと当てる技術もビームも光弾も引き付けられるあの板っ切れには期待できなさそう』
「それだとまずいのか?」
『夢龍聖懐が接近戦に持ち込んでくれれば至近距離の攻撃なら弱点である発光器官や密度の薄い場所を叩けるんだけど……』
「何かあるのか?」
「護祈本体が傷を受けたくないのよぉ。ほとんどの護祈は日常生活に支障をきたすから当然戦闘で怪我を負う痛みを嫌うわ~、その後の後遺症も嫌がる。彼女らは戦うのが仕事だけど身だしなみや体の調子にはすごく過敏で」
『普段は基地の中にいて外になんか出ないのに』
話を聞いていたメノウがユウスイを優しく叱る。
「あなたとは違うのよぉユウスイちゃん。あの子は外に出たくても出られないの、いつ現れるかもわからない巨躯に備えて待機し続けながらそれでも普通の女の子らしく振舞っていたいのよぉわかってあげなさ~い」
夢龍聖懐が放つビームは浮遊する二枚の板に吸われる。
遠方から砲撃支援の準備ができた戦車隊の光弾の砲撃が飛んできてモノリスへと当たる。
護国獣と戦車隊の攻撃を受けて爆発と火花が激しく散るもののモノリスは傷一つなくびくともしていない。
『先にあの邪魔な板を壊させないとだめか。調べたところ密度が影刃青輝の背中の鱗とほとんど同じかそれ以上に硬い、夢龍聖懐では相手にならなさそうなんだよなぁ』
刃白岩骸本体は側面や背後を撮ろうとする影刃青輝を追いかけ廃墟の中を大きく土煙と瓦礫を巻き上げながら移動している。
しびれを切らし夢龍聖懐がビームを撃ちながら前に出てモノリスに守られている本体を狙う。
影刃青輝が引き付けているため夢龍聖懐は容易に背後をとることができ、その腕でモノリスに掴みかかる。
ふわりと浮かんだそれは簡単に巨躯の周囲から引っぺがすことができ地面に押さえつけることができた。
しかし、もう一つのモノリスが巨躯から離れその場で停止する。
「動きがあったな」
いままで刃白岩骸そばを浮かんでいたねじれたモノリスの一つが突如動き出しよりねじれていく。
護国獣二体はその動きに危険を感じ身を引く。
「なんか急にねじれたな、何かあったかあれは何しようとしているんだ」
「フリッジみたいになってきたけど、結構厚みがあったと思うんだけどあんなぐにゃぐにゃに形状変化できるのねぇ」
夢龍聖懐が後退しながら刃白岩骸へとビームを撃つ、モノリスの防御がなく攻撃はその体に当たり巨躯が咆哮を上げる。
夢龍聖懐に押さえつけらえていたモノリスも遅れてねじれ始めた。
「防御はあの板任せで本体は柔らかいようだな」
攻撃の手を止めず夢龍聖懐は攻撃を続け、刃白岩骸が攻撃の飛んでくる方向に体を向けようとすると影刃青輝が立ちはだかり鎌状の鱗を振り下ろし注意を引き付ける。
「あれが何かする前に肩をつけたいわねぇ」
影刃青輝と夢龍聖懐を受けながらも刃白岩骸は光弾を放ち廃墟を壊し暴れまわる。
そこでねじれていたモノリスが回転し射出されるように護国獣へとむけて飛んでいく。
ドリルのように回転するそれは一直線に護国獣たちへと飛んでいき影刃青輝は武器を手放し迫ってくるそれを身軽にひらりとかわし、動きの遅い夢龍聖懐へと迫るそれから守るためにその体を突き飛ばす。
代わりに影刃青輝の体にモノリスが衝突し激しい火花を散らして吹き飛ばされる。
『ルツキ!!』
建物をなぎ倒し影刃青輝が倒れ光となって消えていく。
やられるまでが一瞬の出来事で皆の反応が遅れる。
ティルトローターは一気に廃墟の中へと飛んでいき巨躯との戦闘に巻き込まれないように気を付けながら影刃青輝が消えた場所へと向かう。
「負けるとどうなるんだ! し、死んだりしないんだよな?」
『ルツキ殺そうとしたやつが何心配してんの? 死なないよ護国獣かが維持できなくなるだけ。ダメージもひどいけど……でも生きてるし、また元気になる』
「それはそうとハクマ君には回収に向かってもらわないといけないわねぇ」
「私らもだ、メノウ。ハクマ、メノウは私とともにルツキ回収に向かう。カヅキは発見し次第迎えにこれるよう離れた場所で待機だ」
『ん、夢龍聖懐にはこの区画から離れて戦うように要請した。さっさと迎えに行って』
モノリスは攻撃後地面に刺さったまま動かず、少し遅れてその場でねじれが戻るようにうねり始めた。
「ユウスイあれのネジネジが元に戻りまたモノリス状態になったら、また巨躯の付近に漂うようになると思うか?」
『たぶん、あれは攻撃体型と防御体型の使い分けだと思う。浮かんでいたモノリスは巨躯ではなくくっついていないだけで刃白岩骸の角か爪みたいなものだったんじゃない』




