守る 1
ハクマが無事基地へと連れ戻され通常業務へと戻った。
巨躯出現の警報が鳴る。
「ユウスイ」
「巨躯出現。スケールは3、名前は刃白岩骸。二時間後に白帝港へと上陸。誘導場所は涙鬼楽の廃墟街」
隊長の声とともに何もない空間に向かって指を振ってデバイスを操作しユウスイが情報を読み上げた。
「また廃墟~いやねぇ。ああ、でも何回かそこで戦闘しているしあそこ瓦礫の山よねぇ」
「ああだがそれは一部だまだ解体されていない建物も多い。それゆえこの間のようなことが起きる可能性がある、十分に気を付けてくれ。道路の封鎖はこの間のこともありしばらくの間は人員を増やしてもらってはいるが完全ではない」
「今回はハクマ君にも自衛用の武器を渡すんだよね? さすがに彼をまだ警戒してないよね? 僕もう危険な低空飛行中に撃たれるのは嫌だよ、揺れるたびに心臓がバクバクするんだから」
「そうね、ハクマ君にも防御捕縛用のは必要ね」
準備を済ませ屋上へと上がる。
「天気はいいけど今日は風が強いわねぇ、しっかり歩かないと倒れちゃいそう。カヅキこれ飛べるの?」
「いやだなぁ髪型崩れちゃうよ、強いけどこの風なら飛べるには飛べるかな。たぶんちょっと揺れる。ああ、ルツキちゃん危ないから手を握ろうか」
メノウとカヅキが強い風を受けて、風を受けやすい装飾の多い服を着たルツキを気遣う。
「大丈夫よ、ハクマ君を風よけにしてるから」
「急げよ、他の護祈にも出動命令が出た。護国獣、夢龍聖懐が来る。護国獣2体で今回の巨躯、刃白岩骸と倒す」
先に期待に乗り込みデバイスで巨躯の情報を集めていた隊長が更新された情報を読み上げる。
ハクマの背中を握り風に抵抗しながら期待に乗りこむルツキ。
「ラショウお姉さまと一緒に戦えるのね! 早くいきましょう」
デバイスからユウスイの声。
『刃白岩骸、今回の巨躯は仲間を増やすタイプっぽい。今二体のスケール2相当の巨躯を引き連れて海中を移動中。密集して移動しちょっかいをかけても巨躯を個別に引きはがすことはできないようす。この間のスケール4ほどではないと思うけど面倒そうな相手』
「でも劣化版を生み出しているだけならアースライトは何時か尽きる。増えることもできなくなるわ」
ティルトローターは戦場として選ばれた廃墟へと向かって移動。
何度か巨躯との戦闘に選ばれた土地ということもあり町のほとんどは崩れた瓦礫。
少し高度を上げると地平の果てに防衛隊の攻撃で誘導される巨躯の姿が小さく見えた。
「見えたね、そろそろ降りる?」
「そうね何処か、護国獣になれるような開けた場所にお願い」
メノウと少し会話をし体調を確認したのちルツキは気持ちを整えるため大きく深呼吸をする。
巨躯が向かってきていることもありティルトローターが高度を落とし、廃墟の町中を流れる不規則な風の影響を受けないよう倒壊して瓦礫だらけの廃墟の開けた場所を見つけてルツキを降ろす。
「すでに周囲は封鎖され生体スキャンも念入りにかけてこの廃墟に人の姿はない。いるのは野生動物くらいだ」
「昔の下水道後に潜伏できる気はするけどねぇ、そこまでは調べられないのよね~。一度襲われるとしばらく疑心暗鬼になるのはいやよねぇ」
地上から離れ小さくなっていく白い服装のルツキを見送る。
「そういえばルツキさんは護国獣になるとき公園とか開けた場所に降りますよね? あれって周囲を破壊しない以外に理由とかってあるんですか?」
「一番は周囲を破壊しないため。あとはただ単に体をぶつけるからよ~、角に小指をぶつけたら痛いのと一緒よ~」
ルツキを降ろしたと場所で光が眩く輝き影刃青輝が姿を現すと、もうじき廃墟に入ろうとしている巨躯へと向かって歩き出した。
その後姿を見届けティルトローターは巨躯の戦闘に巻き込まれないようにくるりと旋回する。
「さて僕らはどこで待機してようか?」
「廃墟の入り口でいいんじゃない~? 戦闘が終わったら素早く迎えに行けるし」
影刃青輝の咆哮が廃墟に響く。
別の護祈を連れたティルトローターが遠くに見える。
レオの端末にメールが届く。
「夢龍聖懐も到着したな。ユウスイ、もう一人の護祈が到着した。ルツキにまだ戦闘は始めず廃墟の奥に引き付けるように言ってくれ」
『了解』
巨躯は刃白岩骸と呼ばれるスケール3が一体、そこから生まれたスケール2が二体、それを迎え撃つ護国獣が二体がかりで戦いが始まる。
もこもことした白い毛玉のような体に尖ったナイフのような棘が生えている姿の刃白岩骸、その両脇に鈍い光沢を持った赤黒いねじれたモノリスのようなものが浮いていた。
「刃白岩骸から生まれた巨躯に名前はないんですか?」
『ないよ、本体を倒せば消える場合がほとんどだから独立して動き出したら名前が付く。この間のスケール4が異常だっただけ』
影刃青輝が巨躯を引き付け夢龍聖懐がビームで三体まとめて攻撃。
回避もバリアも張らず攻撃を受け火花が散る。




