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大破壊 3

黒く焼け焦げ腕はだらりと垂れ下がり、尾で鞭打ちながら後方に退き追撃をしようとする幻歌響迷から距離をとる。

大きく離れると影刃青輝の背中の鱗を抜き取り護国獣の長い腕をめいいっぱい使って投擲した。


「この戦い、ルツキさんは大怪我するんですよね」

「なんだ知っているのかつまらん。安心しろ最後に見舞いに行った時の映像がある、存分に後悔しろ」


衝撃波を放つ勢いで投擲された鎌状の鱗は、激しい火花を散らせて幻歌響迷に突き刺さる。

巨躯は怯み転倒するが発光器官から湾曲するビームを放ちビルをなぎ倒しながら影刃青輝を道路へと叩きつけた。


『こちら解析班、巨躯の推定されるスケールは4! 繰り返すスケールは4! データ不十分、未知のスケール』

『現在緊急招集につき移動中の護祈はその場で待機、護国獣での出撃を控え都市防衛のため戦力は温存しておくように。現在交戦中の護国獣が持ちかえる情報が集まるのを待て。ただ今増援で更に護祈を増やす予定である』


報告を聞いた直後に映像を映すカメラがぶれる。


『防衛隊地上第1班、第2班交戦区域に侵入。しかし避難者と事故により思うように進めず!』

『こちら航空隊第1班、戦闘区域付近に謎の電波障害。交戦中の護国獣を認識できず!』


何の前触れもなくカメラが切り替わり映像の視点は高く遠くからろドローンで撮影されているようで、街中を移動しながら戦う巨躯と護国獣の戦いを追いかけている。

町の破壊は護国獣との戦闘で広範囲い広がっており、あちこちで火の手が上がっていた。

幻歌響迷は開けた駅のロータリーで大通りの向こうにいる影刃青輝へと首を向けながらもゆっくりとだが都市へと向かって進んでいる。


ビームの切れ間に立ち上がり新たな鱗を抜いて飛び掛かる影刃青輝だったが、待ち構えていた幻歌響迷の口からのビームを正面から受けてしまう。

勢いが止まったところに体当たりを受け護国獣は手にした鎌を落とし、その鱗は地面に刺さったところで光となって消える。


護国獣の特徴的な純白のような白い体が黒く変色し、影刃青輝の動きが攻撃を受けるたびに鈍くなっていく。

ダメージを負った護国獣は身を低くしビルを影にして巨躯へと迫る動きに出るが移動した先でまだ人が避難しておらず、どこへ逃げていいかわからずまばらに動く人影を見て影刃青輝が固まった。


周囲を見渡し別の道を探すようなしぐさを見せるが、そこに再び幻歌響迷の湾曲するビームが迫る。

幻歌響迷の攻撃を回避せず攻撃を受け止めるが体が仰け反りバランスをとるために動かした尾が白い建物へとぶつかった。


「何か思い出すか? 何か感じるものはあるか?」

「ああ、今見えたあの協会のそばにいるのが……」


白かった体はいつの間にかほとんど黒ずみ鱗の一部が崩れて光となって消える。

立ち上がりぎこちない動きで場所を移動する影刃青輝は何を思ったか、建物を影に隠れなが幻歌響迷の背後へと移動していたが突然建物を飛び出て大きな道路を全速力で直進する。


当然迎え撃とうと映像が加工されぼやかされた幻歌響迷がビームを放ちその攻撃にひるまず歩を進め自身の倍以上もある巨体へと接近し、その体に刺さった投擲で投げ突き刺さった鱗に手をかける。

そして護国獣のすべての体重をかけて鱗を突き刺し、下へと向かって傷口を広げるよう下ろす。

体に入った亀裂は大きく広がり幻歌響迷は咆哮を上げながら砕け空へと光となって消滅する。

相打つように影刃青輝もその場で光となって消えその場へ防衛隊の車両が向かう。


『護祈の回収を急げ』


光が消え壊れた町に立ち尽くす少女の位置を確認するとカメラは再び誰かの視点へと切り替わる。

巨躯の戦闘の跡で周囲は火事や建物の倒壊が起きており、車両は無理やり瓦礫を乗り越えながら護祈を探す。

少女は割れた地面に突っ伏し倒れていた。

鼻血や吐血で赤黒く汚れ意識も失い呼びかけに反応せず少女を抱え車両へと戻る。


時折咳き込む少女の吐き出す血を拭きその場を離れた。

戦闘の痕跡が少ない位置まで来ると途中で見つけた救命車両に少女を預ける。


「これがあの時の戦闘」


映像は切り替わり暗い病室。

一人部屋で広く殺風景な部屋の真ん中にあるベットに一人、その横にある椅子に一人少女が寝ている。


『そっちの子は? 初めて見るな、この病院の関係者か?』

『わかりません、現在身元を確認中なのですが身分を証明できるものは持っておらず各都市に顔認証システムで検索をかけている状態です。この子、治療を終え少し席を外している間にどこからか入り込んでいて……。追い出そうとしたのですが、彼女がここに置いておいてほしいと』


『目を覚ましたのか』

『はい、二時間ほどでしたが。そっちで眠っている子の話によるともっと前から目を覚まし話をしていたそうですが。ひとまず所持していたナイフは取り上げたのですが、いかがいたしましょうか』


『危害を加えていない、その様子がないのなら放置だ、この子の意見を優先する。不安が広がり仕事に支障が出ないようほとんどの護祈との接触は避けさせてある。だから一人部屋でさみしいだろうしな。俺はほかの子たちの見舞いに行く、何かあれば連絡を入れてくれ』

『わかりました』


映像はそこで切れ画面が暗転する。


「終わったか」

「はい終わりました」


ハクマは付けていたメガネ型のデバイスが外された。

グローブを付けたリウガンはハクマの前に立つと大きく腕を振り上げる。


「ではそのまま殴られてくれ、といっても抵抗はできないがな」

「巨躯の姿がぼかされたときに、なんかおかしいなとは思ったよ」


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