大破壊 1
モニターに開いた巨躯の絵を全て消すと幼い少女の画像を表示する。
背丈だけでなく髪型や服装も違ったがどことなく少女はルツキと似ていた。
「これはルツキの11歳の時の誕生日だ。この日は生憎天気が悪くてな、屋内に一日こもりきりだった。これはそんな日に集まった姉妹たちと部屋の飾りつけをする時の写真だ、皆で色紙などを持ち寄って部屋を散らかしながら飾り付けてな。50名いた護祈全員が集まり賑やかなものとなった」
「はぁ」
「こっちは街に買い物に行った時だな。私服が小さくなってきたから新しいのを買いに来たらあいつ、これはだれだれに似合いそうだとかこれをお土産にしたいとか自分そっちのけで物を選び始めて大変だった。結局少しの買い物に半日かかってな、横に映っているのはラショウだな過保護で何時もルツキにべったりだった。嫌他の連中も大して変わらんか。こいつも変にこだわりがあるらしく前時代の古いものが好きな奴で流行の服とかが好きじゃないから買い物には頭を悩ませたな」
何かのスイッチが入ったかのようにリウガンは話を始める。
ハクマはどう返事を返したらよいかわからず困っていると背後からヤジが飛ぶ。
「親ばか~。許可なく私の画像出したら承知しないっすからね。ちっちゃいころの写真を他人に見せるだなんて恥ずかしい、これルツキちゃんはしってるんすか?」
「静かにしないのなら出てってもらうぞアマネ」
「っく、クテンも何か言ってやってほしいのに。声が出せないばかりに」
「そいつもう治っとるぞ、喉の腫れは引いて普通に喋れる。戦闘から何にに立ったと思ってるんだ。ただ少し喉が痛む風かなでここにきているだけだ」
アマネが隣に目をやるとクテンは天井を見上げ、リウガンは次の画像に切り替えた。
そこに話をずっと聞いていたハクマが疑問の声を上げる。
「ちょっと待ってください。これ何の話をしてるんですか?」
「何の話をしていたんだったかな?」
「幻歌響迷っすよスケール4のルツキちゃんが戦った」
一度モニターの画像を見てあい手を当てると画像を消し先ほどの巨躯のイラストの画像を出す。
ハクマの描いた絵とさほど変化のない巨躯のイラスト。
「ああ、そうだったそうだった。ルツキの描いた絵を見ていたら昔この子とを思い出してな」
「知らない人に私らの子を話すこと何とかならないんすか? 知らないところで自分の話が言いふらされてると思うといやなんすけど」
「ならここに来るな、お前たちは退屈でもこっちは目を通す資料が多く仕事があるんだ。見ろこれ。日に50件ほどメールが来る、お前たちからだ。どうでもいい内容で時間を取られるこっちの実にもなってみろ」
「でもちゃんとその日のうちに返事くれるっすから。ほら話がずれて来客が遠い目してるっすよ」
「みるか? 幻歌響迷の姿、アマネらは一度部屋を出ていけ。影響を受けたらたまらんからな」
「え、だってほとんど残ってないって」
「ああ、実際先ほど言った映像を見るだけでも映像を受ける。静止画でもな。残ってないといったが、調べようとしても残っていないといえばあきらめるやつが多いだろう。興味本位で調べたりしないよう言っているだけだ」
「俺は大丈夫なんですか?」
「さあな。知らん。だから暴れてもいいように向こうにある拘束具をつけさせてもらう。今日のために用意したんだまだ準備できてないから設置を手伝ってくれ」
「え」
段ボールが積まれている部屋の隅に物置と化した鉄骨がむき出しとなった頑丈そうな椅子がある。
気が付けば音もなく護祈二人の姿は消えていて赤い扉が閉まる音が響いた。
「ああ、ちょうどいい実験ができるな。実験は禁止されているが防衛隊に8年前の関係者がいるなら一度影響下に置かれた身だ、二度も三度も変わらないだろう」
「ちょっと待ってください、それで俺は大丈夫なんですか?」
「知らん、予想ではだめじゃないかとは思っている? 一度目にしたものは脳深くにダメージを受けて攻撃性が増す、事件の犠牲者が何年たってもその人生を棒に振りルツキを狙う原因はこれの影響かどうかを調べたい。次君が問題おこしたら捕まるだけだろう、では準備を始めようか。それが終わったらこのメガネをかけてくれ、そこに画像を映すから」
「いや待った、俺まだ受けるなんて」
とはいえリウガンは準備を進めようとするためハクマは渋々その準備を手伝う。
「この段ボールに入ってるのは、あのアホ娘らが勝ってきたものだ。置く場なくてここに積み上げてきた。40人以上いるからな塵も積もれば、だ」
「アホって」
「護祈のそばで働いていたのなら戦いで追った傷が痣として残ることは知っているな? 痛いとわかっていて戦いに赴く姿を見てアホと言わずになんという」
「でもそれは必要だからだろ、巨躯と戦うために誰かが護国獣となってやらなきゃいけないことだろ?」
「そのために。孤児を集め。護国獣形式がアースライトの消費を抑えられ思い通りに作り出したものが動かせるメリットだが。砲台やロボットのように人が乗り込むものがある、むろんアースライトの消費も大きく、道具と人が別々なことで死亡や怪我などのリスクがあるがあれは誰でも扱える、防衛隊の戦車などと同じだな。あの方法でも巨躯は倒せるだろう」
椅子の固定を済ませるとリウガンは席に戻り一息つく。
「護国獣は人を部品として扱っている。それを良しとして受け入れるアホを阿呆と言わずになんという」




