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憎しみの標的 5

赤い扉が乱雑に開けられる。

背筋の伸びた白髪の老人がハクマの前に立つ。


「お前がルツキの首を絞めたやつか? 来い」

「え、ああ」


ハクマが呼ばれ隣で待っていたドレス姿の女性が困惑する。


「ああ、クテンかいたんだったなもすこし待ってろ。どうせすぐ終わる」


何か言おうとしたがデバイスを操作するため腕を振るのみで、その間に老人はハクマを呼び部屋の中へと消えてしまった。

ハクマも彼女を置いて部屋に入る。


大小さまざまなモニターが並べられたデスクに何本ものエナジードリンクの空き缶が並んでいる。

部屋の隅には段ボールが積まれ古い機材が乱雑に詰め込まれていた。


「あの……彼女は」

「べつにいい、クテンは先日の戦闘で喉を痛めただけでそこまで大きなことはない。戦闘に出られない間休暇と暇つぶしにここにきているだけだ、護祈は自室かここか行ける場所が限られているからな」


「そうなんですか」

「そこに座れ、お前が8年前のあの戦いの被害者の一人というのは本当か」


パイプ椅子に座るや否や老人は食い気味にハクマに訪ねる。


「はい。そうです、姉の仇を撃つために俺は防衛隊に入って……」

「そこはもういい聞いた。で、ルツキと戦った巨躯を見たか?」


「ええ、ああ」

「見たんだな!」


老人はいまだ自己紹介もなしに引き出しの中から紙とペンを差し出す。


「描けって?」

「見た巨躯の姿を描けと言っているんだ。当時の記録はほとんど残っていない、なぜならスケール4の幻歌響迷は記録であろうと見たものの正気を奪い攻撃性を高める力を持っていたためほとんどの記録は消去されている。だから資料として巨躯の姿の情報がない、だからイラストでいいから書けと言っている何度言わせる気だ」


「下手ですけど」

「どうでもいい特徴さえとらえてあれば、お前以外にも幻歌響迷を見たやつには描いてもらっている。いいか描け」


連れてこられる途中から訳が分からずハクマは言われるがままに記憶を頼りに巨躯を書く。


「描けました、絵が下手ですけど。あと細かいとこはうろ覚えですからね」

「どうでもいい。……へったくそだなおまえ」


ハクマの絵を受け取ると老人はスキャナーに入れ絵をデータとして保存する。


「これなんだったんです、あなたは?」

「ああ、ここで護国獣と巨躯の研究をしている。リウガンっていうものだ、孤児であった護祈すべての育ての親でもある」


「それで、リウガンさん。俺がここに連れてこられた理由は何ですか?」

「まぁ、ルツキの件で君のことを知ったが。君の負った怪我の事でも再度名前を聞き治療のついでにここに連れてきてもらうように頼んだ。8年前の事件にかかわる人間でここ呼べるやつは少ないからな」


モニターを操作し今しがたスキャナーで取り込んだハクマの絵を映す。


「これが、今お前が描いた絵だ」

「そう大きくモニターで写さないでください恥ずかしくなる」


「幻歌響迷は6本足の200メートルクラスの大型の巨躯と記録がある、巨躯の周囲に目が書いてあるな。描いてもらった他のイラストでも、この目は体についておらず巨躯の周囲に浮かんでいることからこれが巨躯の能力だと俺は思っている。でだな」


話の途中で突然扉が開け放たれる。


「うーっす、爺さんもう話は終わったすか~?」


先ほど病院にいた看護師がゴシックな私服に着替えて元気よく入ってくるとその後ろにドレス姿の女性もおずおずと入ってきた。

ため息をつきリウガンは机の足元にあった小型の冷蔵庫からジュースを二本を取り出し入ってきた二人に向かって投げる。


「今やっと本題に入ったところだでていけ。アマネ、クテン」

「いやっす、暇なんすよ。職業体験? も、人と接しないから掃除とか皿洗いとかしかないし。ただ、制服着て寂しくしてるだけ、つまんないっす」


「なら自分の宿舎に帰ってサポートチームとあそんどれ」

「それもつまんないっす、狭い部屋の中で一日じっとしてるなんて」


後ろでドレスの女性が頷く。


「ならそこで聞いとれ」


受け取ったジュースを飲みながら二人は部屋の隅に立てかけてあった折り畳みの椅子を広げて座る。


「うーっす」


リウガンは何事もなかったかのようにハクマへと向き直り話を始める。

モニターにハクマ以外の誰かのイラストを表示させ説明を続けta.


「何をどこまで話してたか、戦闘直後に幻歌響迷について詳しく覚えていた奴がいて早い段階で映像媒体でも攻撃性の増長が高まることが分かった。そいつの聴取によるとイラストに描かれているこの目を認識するにはそれなりの距離にいる必要もあることもな」

「距離ですか?」


「ああ、幻歌響迷からざっと100メートルほどの距離と推測されている。それ以上離れた個所にいた俺には何も見えなかった」

「あの場所にいたんですか?」


「ああ、ルツキの護祈としての力の調整のためこの研究所から、アースライト採掘と生成を行っている都市へと行った帰りだった。ルツキは孤児の中でも最年少だったから他の護祈達と違いアースライトの適応実験に耐えられる体をしていなかった。そのためあいつには先に護国獣として戦う護祈に憧れがあった」


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