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憎しみの標的 4

目を覚ますとハクマは刺すような消毒された匂いの白い部屋の簡素なベットの上にいた。

動くハクマに気が付き掃除をしていた防衛隊のロゴの入った看護師が壁にモップを立てかけ近寄ってくる。

白髪のメッシュが入った黒髪の女性は腰に巻いたポーチからスキャナを取り出しそれでハクマのカルテを読み取り目を通す。


「目が覚めたっすか? ハナミネ・ハクマさん。あなたは怪我してその治療のため、ここ来たとこまでは覚えてるっすか?」

「ああ、まぁ腹と頬と」


自分の頬の傷口に手を伸ばすと大きな絆創膏のようなものが張られており触れると痛む。


「傷がくっつくよう縫って、開かないようにシールが貼ってあるっす。運がよかったっすね。一つはかすりもう一つは腹筋で止まるような威力で、報告だと殺傷圏内の距離だったとか」

「他に怪我人は?」


「いないっす、そういう意味なら唯一の負傷者でアンラッキーでしたねハナミネ・ハクマさん」

「ならいいんだ、誰も怪我をしていないのなら。襲撃者からも情報を引き出さないといけないし」


スキャナをしまい看護師はハクマの荷物を指さす。


「んと、じゃあ、まぁ退院っす。私部屋から出てくんで検査着から着替えてください。服に穴空いてますけど洗濯はしてあるんで、シャツは裂いちゃったんでサービスで新品があるっす。制服は支給品すから申請すれば新しいのがもらえるでしょ」


着替えて病室を出ると先ほどの看護師が待っており頬の絆創膏を指さした。


「そうそう剥がれるものじゃないっすけどそのシールは剥がさないでくださいね。防水なんで風呂には入れるっす。あ、傷が痛むでしょうけど、痛み止めが出ると思うんでそれ飲んでください」

「ああ、はい」


「ここ、護祈とその関係者の治療する場所なんすよ。まぁ、大怪我とかは一般病棟行きなんすけど。んじゃ退院の手続きするんで下まで降りてもらえます?」


病室を出る廊下は静かに静まり返りハクマたちの足音が響く。

看護師が掃除道具もそのままに勝手に持ち場を離れて大丈夫なのだろうかと思いながらも案内されるままハクマは建物の外へと向かって行く。


サインを書いて退院するが看護師はなおもハクマの横に立ち、この国で一番大きな山である大桜山が見える入り口から出てすぐの駐車場の端を指さす。


「ああ、そうそう。迎えの車来てるんで、あれ乗って研究室の方へ向かってください、爺さんが待ってるっす」

「研究室? 爺さん?」


「ん~? 聞いてないんすか?」

「いや何も? 腹と頬の怪我の応急処置をするから横になるようにってストレッチャーに乗せられて、頬を縫う痛み止めの代わりに眠らされて寝たら病院で寝ててここがどこだかも、防衛隊の隊員を優遇するような病院なんて俺は大桜山しか……」


「大桜山アースライト研究センター直轄護国防衛隊病院っすよ?」

「いやだって、そんな遠い所」


他にも防衛隊の病院はあるだろうにどうしてそんな場所にと疑問を口にする前に看護師は胸元から細かな小食の入った首飾りを取り出し見せつける。

ハクマの横に立っている看護師のかける首飾りはロケットになっており開閉部からアースライトの光が漏れていた。


「どーも、私たちのかわいい妹ちゃんの首を絞めてくれた人」


看護師はハクマの怪我をした頬に強めのデコピンをし、その手を振って病院へと帰っていく。

激痛に悶えている間に彼女は建物の中へと入りいなくなっていた。


代わりに先ほど護祈に指さされた車両から防衛隊の制服を着たものが二人歩いてくる。


「先生がお呼びだ、ついてきてもらう」

「誰なんです先生って、ちょっと隊長たちと連絡をとってもいいですか? 何も聞かされてないんですけど」


ハクマは連行されていく。

車に乗り少し移動すると病院と隣接する大きな敷地の建物へと案内される。

無数のアンテナが伸びる建物が立ち並び、敷地の真ん中に大きなドームがあるその敷地に入ると車両はを抜けて一つの建物の前で停車する。


「入り口を入ってまっすぐ行った先にある赤い扉の前で待て」


ハクマを建物の前で降ろして男たちは去っていく。


「強引に連れていくわりに最後までは案内しないのか」


文句を言いながらもハクマは建物の中へと入り言われたとおり赤いドアを探す。

建物内に人の気配はなく、ちらりと見える部屋の中には何かしらの検査や実験をするだろう機械が並んでいた。


部屋の前にあるベンチの前には何処かのパーティから抜け出してきたような煌びやかな宝石で飾ったドレス姿の女性が眼鏡型のデバイスをつけて座っている。


「隣に座っても?」


ハクマの存在に気が付き半透明なディスプレイを挟んでと目が合い尋ねると彼女は無言でうなずき、彼女は首を指さし首を振る。


「声が出せないのか、すまない」


首元にはアースライトの光を放つペンダント。

ルツキの事を知っていると思われ、席を譲るその目には警戒と疑いの目が向けられている。


「やっぱりルツキさんのことは知ってますよね」


彼女は頷き宙に腕を振るデバイスを操作する動きを見せた。


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