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巨躯 5

道を迂回し無事な道路を走っていると戦闘を終えた影刃青輝の姿が強い雨の中に巨大な影として映った。

地響きと大きな揺れが巨体が動くたびに置き装甲車は巨体に踏みつぶされないよう距離をとって走る。


「ルツキちゃんが変身を解いたら走って迎えに行ってね、ここからすぐ離れるから」

「了解です」


「通信機を持って行ってね、何があるかわからないし。持っていなければこの装甲車の装備を持ってって」

「ああ。はい、持ってます」


「触られるの嫌がって抵抗するかもしれないけど、担ぐか引きずるかして連れてきて」

「え、はい」


公園にたどり着くと巨体はまた光だしその光の塊は小さくなっていく。

光が消えた後にはルツキがぽつんと空を見上げて立っていた。


「はい、走ってぇ!」


ドアをあけ放ち言われたとおりに雨の中を駆けだすハクマ。

雨の中立ち尽くすルツキは走ってくるハクマに気が付いたようでゆらりと揺れて向き直ると半歩後ろに後ずさった。


「迎えに来ました。雨に打たれていると風邪ひいちゃいますよ、装甲車に戻りましょう」


ルツキのもとまでやってきて手を差し出すが彼女はその手を弾く。


「ありがとう。でも自分で、歩けるわ」


疲弊しているようで力なくふらふらと歩くルツキ。

ハクマは彼女と寄り添うように歩く。


『早く~』

「でも自分で歩けると」

『いいから、そんなもたもたしてて風邪ひかせたら問題なんだよ! この国を守る護祈は50人もいないんだ、一人かけるだけで他に負担がよる! 責任を負えるの!』


唐突に無線ごしにユウスイに怒鳴られ、ハクマはふらふらと歩くルツキを抱きかかえて走り出す。

背後から救い上げるように担ぎ上げると彼女は驚いて身を小幅らせる。


「ちょっと何するの、降ろしなさい!」


ルツキは抵抗するが体に力が入らずハクマに抱えられたまま装甲車に乗りこんだ。


「は~い、お疲れさ~ん」


二人が乗り込むとその場から逃げるように車両を急発進させるメノウ。

遅れてドアが閉まりゴロゴロと床を転がって二人は壁に頭をぶつけうめき声をあげる。

雨は強く公園から距離をとると装甲車は速度を落とす。


「ねぇ、ちょっと。角に頭ぶつけたんだけど」

「ごめんねぇ~、ほら早く着替えないと風邪ひいちゃうし」


基地へと帰ってくるとユウスイとカヅキが待っていた。


「おかえり、風邪ひいちゃう前にルツキを部屋に運ぶのを手伝って」

「風邪ひいちゃうからお風呂に入れないと。ああ、ハクマ君は基地のシャワー室を借りて」


装甲車で休んで少し体力が回復したのかルツキは小走で先に基地へと帰っていく。

追いかけるようにユウスイが建物の中に消え、メノウは装甲車の鍵を返しに行った。


「どうも初めまして、ハクマ君でしょプロフィールに目を通したよ。僕はタマユラ・カヅキ。ルツキちゃんを回収してくれたんだってね助かるよ。彼女意外と背が高いでしょ、僕らじゃ運ぶのが大変でさ」

「どうも、これからお世話になります」


「着て早々バタバタして大変だったね。シャワー浴びておいで、冷えて寒いでしょ。お風呂場はまっすぐ突き当りまで行けば案内あるから」


ハクマは濡れた体を乾かすため風呂へと向かった。

同室に置いてあった乾燥機に服を入れシャワーを浴びる。

この基地に来てからまだ数時間、ハクマはお湯を浴びながら見つけたと小さくつぶやく。


服が渇いたころにハクマはシャワー室を上がり護祈の待機室へと戻った。


「体は冷えなかった?」

「はい、おかげさまで温まりました」


室内にはメロウとカヅキがデスクに座って作業をしており、ハクマが返ってきたことに気が付くとカヅキが手を振る。


「おかえり、お昼まだでしょ。カップ麺ならあるけど、食堂に行くなら案内するよ。ほんとは何か料理する予定だったけど巨躯が出てバタバタしちゃったから」

「種類あるよ~、好きな味選んでね~」


話していると普段着に着替えて戻ってきたルツキに背中を小突かれた。

頭にタオルを乗せた彼女はジトリと不服そうな目でハクマを見る。


「急に抱き上げるだなんて、何を考えているのよ」

「い、いや~。そういう指示だったんで」


佑月の背後にいたユウスイとカップ麺をデスクの上に並べているカヅキがはくまのかわりにこたえた。


「いや、そのためにこいつ新しくチームにいれたわけだし」

「そうそう、これも力仕事だよ。ルツキちゃん駄々こねるから力尽くの回収係は必要だった」


前後から聞こえてくる声にどっちを向いて答えるか迷いながら怒るルツキ。


「だましたのね! 体長が手を痛めたから力仕事する人がいないって」

「戦闘後の疲弊でこの間ぶっ倒れたのはだあれ~」


メノウの一言でルツキは何も言えなくなったようでむすっとしたままデスクへと向かう。


「そういえば、ハクマ君のデスクまだ届いてなかったわぁ」

「自分で運びに行かせる予定だったし」

「それは困ったね、どうしようか。僕お湯注いじゃった」

「向こうの大テーブルで食べてもらえば済むんじゃないの? 違うの?」


「せっかく、皆でのご飯なのに~。一人だけ除け者だなんて~」

「テスクがないのは巨躯が出てドタバタしたからでしょ、倉庫に届いている。納品書は見たから」

「先に帰ってきた僕とユウスイで運べてたらよかったんだけど、ユウスイはちっちゃいし非力だから」

「私の援護をした後で重たいものを運ばせるのは可哀そうよ、仕方ないわねみんなで大テーブルに移動すればいいんでしょ」


ルツキの口からみんなで移動することを引き出したメノウとカヅキがハイタッチで喜ぶ。


「さぁ、皆でテーブルに行きましょ~」


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