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過去に捕らわれる 5

日が暮れはじめオレンジ色の空をぼんやりと眺めるハクマ。

まるで殺されかけたことを気にしていないかのように親しく話すルツキ、カヅキ以外もあの事件の関係者だという話にまだ整理が追いつかず衝撃を受けていた。


冷えてきたので帰ろうと振り返るとユウスイがハクマの背後に立っている。


「おかえり。何黄昏ているの」

「え、ああただいま帰りました」


ユウスイはハクマへと近寄っていく。


「いいよ、敬語じゃなくて。ルツキも困ってるし。ルツキは仲良しチームを作りたいんだから、敬語は壁っぽく感じるんだよ。隊長は別かもだけどあんたも砕けた口調にしなよ」

「じゃぁ、まぁ、追々にでも」


歩いてきたユウスイはハクマの前に立つと腕輪のようなものを差し出す。

ユウヒの光を浴び鈍い光沢をもつ黒いリングが赤みを帯びる。


「これ付けて、首輪みたいなもの一度付けたら専用のキーがないと取れないようになってる。居場所とルツキに接近すると私に連絡が来るようになってて、ボタン一つで……わかるでしょ」

「隊長の命令か?」


「いいや、私が勝手に用意した。保釈中の罪人やストーカーの追跡装置だよ、皆ルツキに対する復讐心、心当たりがあるから、皆あんたに強く言えないでいる。でも必要でしょこういうの。ほらつけて、私が安心できないから」


ハクマは差し出された腕輪を受け取るとそれを効き腕に着ける。

ひんやりとした金属の感触の少し重たいそれは、腕に着けると小さく音を立てて自動的に閉まり自分では取り外せなくなった。


「私の話でもする、か」


ユウスイは段差に腰掛けハクマにもその辺に座るように促す。


「あの日っていえばいつか分かるよね。あの日私は祖父と都市へ向かう最中だったんだ、祖父の出席する新商品の会議でね。私の家、おもちゃ会社だったんだ。子供用のホログラム開発会社」

「やっぱりユウスイさんは都市の人間だったんですね。それでデータにも強い」


「ルツキが巨躯と戦って祖父は死んだ、巨躯に踏まれたんだペチャンコ。情報の駆け巡る速喉早いこの時代、会社の責任者が居なくなったことで株価が下がって。その日に会社が消し飛んだ。自慢だけど祖父は天才だったんだ、祖父だけの力で会社が成り立っていた。私は巨躯屯戦闘があったその日その日、ルツキに会いに行ったよ」

「そう簡単に会えるのか? というか居場所がわかるものなんですか?」


「暗号通信を拾って解読して居場所を探した。大桜山の研究施設にいたよ、アースライトの護祈とか護国獣とか防衛隊の装備とかの試験をするとこ」

「大桜山基地の近くにそう言う施設があったな。でも普通は会えないんじゃ?」


「いや、普通に不法侵入。簡単なセキュリティー程度なら補助機械の解析とデータの書き換えで何とかなるから。で、ルツキに会いに行った。知ってるよねさっきの会話で聞いた、ルツキの傷。大怪我でね、自分い砦は身動きできず寝たきりだったから逃げる心配もなくじっくり観察できた」

「話が変な方向に?」


「祖父が好きでね、尊敬してたし優しかったしいろいろ教えてくれた。そんな祖父が唐突に死んで、気が付いたら私は都市を抜け出し防衛軍の敷地に侵入しルツキの前にいた」

「俺以外にもいたんだな、行動に映そうとしてたのが」


「あの時の私は知らなかったんだ、それまでまったく興味がなかったから。護祈が何なのか、どんな人間が護国獣を操っているのか、巨躯がどんな存在なのか。ただ、そこにいたのは私と年の近い子だった。あんたはルツキ初めて見てどう思った」

「初めて見た時思ったけど、かなり若い印象を受けた。本当にあの時巨躯と戦った護祈なのか疑った」


「でしょ、あとで知った私と同い年。あの時は11歳。あれが初戦闘なんだって。ルツキの痛みも恐怖も知らないで怒りだけで彼女の前に立って」

「ラショウさんも若かったけど護祈っていくつなんだ」


「アースライトと適合、なじませるには成長期じゃないとだめなんだ。だから今いる護祈は一番年上でも25歳くらい。ルツキはその時、護祈の最年少の子だったんだよ。防衛隊の援護もなく一人で痛みに耐えながら。そこで私はやめた、私の侵入に目を覚ましてそこでルツキと少し話したんだよ私。それでルツキを支えたいって防衛隊の護祈のサポートチームに入るって決めてここにいる」

「そうだったん、ですね」


「ルツキとの付き合いは一番長いからわかってる。傷が癒えて巨躯が現れるたびずっと戦ってきた。お願いだからもうルツキの邪魔をしないで、ルツキは自分なりにあの事件を引きずっているから」

「……ああ、俺も何も知らなかったもうそんな気はないんだ。あの日から復讐ばかり、その時ばかりを考えて防衛隊で働いてきた。俺にできる仕事は力仕事だから、サポートチームは力仕事が多くそういった人材が選ばれやすいと聞いていたから」


「ルツキはずっと護祈の宿舎で育ってきたから普通を知らないんだ。あの日宿舎の掃除してたのもじっとしてられなかったから。ラショウのところで普通の護祈とサポートチームを見たんでしょ。過ごし方やお金の使い方、日常の過ごし方、護祈は戦う以外は自室から出ない、出ても自己管理の一環で護衛を引き連れて……少なくとも宿舎の掃除なんかしない」

「なぁ……式典に出なかったのにも理由があるのか」


「あるよ、私やあんた、カヅキみたいにどこからかルツキのことをしりたどり着く人間がいる。そういう人間が式典にルツキがいることを知ったら?」



ユウスイは立ち上がるとハクマを見下ろし、監視してるからと腕輪を指さしそれだけ言うと先に帰っていく。


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