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過去に捕らわれる 4



皆が小走りで屋上にとめてあるティルトローターへと向かう中ゆっくりと歩くルツキ。

歩き方がおかしいことに気が付きハクマは足を止め彼女に訊ねた。


「足でもひねったのか?」

「ええ、それに近いかも足に力を入れると少し痛むの。戦闘には支障ないから気にはしなくていいわ」


突然ハクマが足を止めたことに驚きメノウがそっと戻ってくる。


「手を貸そうか」

「大丈夫歩けはするから」


プロペラが回りはじめ皆が乗り込み基地を飛び立つ。

一直線に戦場へと向かうティルトローターの中でメノウとレオがハクマに話しかける。


「戦闘後のルツキちゃんの回収には私も同行するわねぇ。手伝いはできないけど監視は必要でしょう。ハクマ君を一人にするなってユウスイちゃんも怒ってるし」

「ああ頼んだ。ハクマもそれでいいな。ルツキとラショウの判断で君の処分はないが君が、再び何かを起こした際にそれをうのみにして何の対策もしなかっただなんていえないからな」


機内は静まり返り張り詰めた空気が漂う、ルツキは何かを言いたそうにしていたか空気の重さから目を伏せって戦場への到着を待っていた。


『スケール2は倒された。戦闘は無し、すぐ戻ってきていいよカヅキ』

「そうなの? もう20分ほどで到着するところだったんだけど、まだドンパチ聞こえるよ?」


『早く消えるように解体だよ、道路の上で倒したもんだから通行封鎖が解けない』

「そうゆう事か」


巨躯との戦闘は戦場へ向かっている最中に終わっており、ティルトローターは倒され光となって消えていく巨躯を遠巻きに観察し帰路に就く。


「幸い戦闘はなかったな。護国獣なしで巨躯を排除できている」

「ええ、戦闘の機械がなくてよかったぁ。帰ってルツキちゃんの療養を続けないとね~」

「すぐ治るはずなんだけど、迷惑をかけるわねメノウ」


聞いていたハクマが疑問を問いかける。


「足の怪我はそんなに悪いんですか?」

「別に心配されるほどひどくはないわ。この間の戦闘の傷がまだ癒えていないだけ」


「戦闘の傷?」


ルツキは腕まくりをして細い腕を見せる。

青黒い痣とミミズ腫が手のひらから腕まくりした袖の中へと延びていてメノウが驚きルツキのまくった腕を整えさせた。


「ちょっとルツキちゃん!」

「いいでしょ、ラショウ姉ざまのところで知っているだろうし」

「それは護国獣で受けた傷なのか?」


奇麗な肌に似合わない痛々しい跡をスッと隠すとルツキは窓の外の景色を眺める。


「アースライトで私が護国獣になりその大きな体を動かす。その体に神経が通う以上、戦闘後に受けた傷は何かしらの形で生身の体に帰ってくるのよ」

「でも、あの護祈の傷はそこまでひどくなかった。痛まないのか?」


「すごく痛むわ肉体ではなく精神、内側が傷ついているのだから。私の護国獣は高機動。早く動くために他の護国獣より強く神経を結び付けている。ほら影刃青輝は他の護国獣と形が全然違うでしょ。アースライトを使った時の私の力を使っての無理やりな戦い方。私のは傷が早く治る能力、護国獣になってた時は能力を生かして戦っていたでしょ、再生する鱗で」

「アースライトを使えば、護祈でなくても特殊能力が使えるのか?」


「適合すれば何かしら。最も世界を変えるようなお話の中の魔法みたいなことはできないけどね」

「護祈じゃなくても?」


「他の国の護祈の変わりがいるでしょう。ああ、でもいきなりアースライトを使おうとしてもダメだし、人体への使用は国の許可がない限り法律で禁止されているわ」

「そりゃ簡単に護国獣になられても困るしな」


「適合しなければ死んじゃうし」

「死ぬのか」


言いづらそうに重々しい口調でルツキが続けレオとメノウは勝手に進んでいく話にハクマの神経を逆なでしないかを心配し警戒している。


「護祈になれなかった子も大勢いるわよ。私たちはアースライトに適合し護国獣として戦っている。あのね、ハクマ君このまま話を聞いてほしい」


一度深呼吸をすると窓の外から視線を機内に戻しルツキはまっすぐハクマを見た。


「7年前の……もう8年前になるわね。あの日の戦いは今でもしっかり覚えてるわ。私はアースライトの適合者として護国獣を賜った」


首に下げているアースライトのペンダントを取り出し指先でいじる。

白金の鎖につながったオレンジ色にうっすらと光る石。


「先日のことで、ハクマ君の、私に対する恨みはよくわかったわ。だから私がずっと巨躯と戦うことで許してほしいの、戦って戦って二度とあんな事故をおこさないために。私に力を貸してほしい。私のサポートチームは8年前の私の、私が起こした悲劇の関係者を集めているの。隊長も、メノウもカヅキもユウスイも、ハクマ君と同じ。謝るために、許してもらうために」


基地へと帰還し皆が屋上から階段を下って屋内へと戻っていく。


「僕らの不安を吹っ飛ばすくらい仲いいじゃん。ほんとに何だったのあの騒ぎ」

「ユウスイの脳が破壊されちゃうわねぇ、すごい嫉妬するわねぇ」


ハクマは一人屋上に残り空を見上げる。


「風邪ひくぞ」

「少し、頭を冷やしてから戻ります」


「鍵をかけ忘れるなよ」


レオが最後に屋内に入っていく。



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