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過去に捕らわれる 2

「俺は追い出されたことになってるんじゃないのか?」

「小さな問題を起こし移動ってことになってる。何度も言ってる通り、首絞めたとかは上に情報が行ってないし。まどろっこしいね、さすがに二つ返事には来ないか」

「引け目はあるものねぇ、逆に何とも思ってなかったらそれこそ私から処分を打診しちゃうわよ~」


カヅキに端末を押し付けられサインを書かされる。


「まぁ、とりあえずこれに名前書きなよ」

「それに隊長が戻ってハクマ君の仕事もなくなっちゃったしね~」


ハクマのサインを確認しメノウは端末をしまう。


「なら俺が戻るメリットは」

「ない、かな? まぁ、勘違いしたままってのが嫌なんでしょう。僕から言う気はないよ、ルツキちゃんから聞いて」

「ないわねぇ。あえて言うなら隊長が自らルツキを回収に行かなくて済む。指揮官だからなるべくなら回遊する役割は誰かに代わってもらった方がいいから」


「じゃあまた後日、迎えに来るから」

「お仕事頑張ってねぇ~」


サインを受けとるとメノウたちは手を振って帰っていく。

ハクマが仕事に戻り一日が終わる。


宿舎へと帰るとすぐに迎えが来てハクマはシャワーを浴び着替えてラショウの部屋へと案内された。

いまだに痣は治らず彼女はその痣を隠すように大きめの上着を羽織っている。


「何度も呼び出してすみませんね。今日こちらにもメールが届きました、何でもハクマ君あなたルツキのもとに帰りたいとか? というよりルツキがあなたを呼び戻したがっているんですよね。私としてはあなたがルツキのもとへと戻って再び同じことをしないのかが心配です。あの子は私たちの中で最年少で姉妹の中で一番かわいがられ、誰よりも多く巨躯を倒してきた子。私たち護祈はあまり外に出ません、出ないように言われているからです。もちろん防衛隊の方でイベントを用意していただき、この間のプールのような大きなものはなくても小さな買い物や外食を許していただくことはありました」


ハクマの返事を待たずラショウは話しを続けた。


「あなたが戻るというのなら、止めはしません。仕事熱心なのも毎日どれだけ疲れていても筋トレを、いや何日か休める期間があるとか……いいえ続けているとは聞いています。ルツキへの復讐が失敗しその機会を失っても仕事に熱心で、ルツキが騒がなかったことで、もしかしたらいつか戻れるという感覚はあったの?」

「いや、衝動的な行動で後悔しているんです」


「ええ、雰囲気で感じ取りました。一度行動を起こしたことで自分がしていたことが間違いだったと反省しているのがわかります。正直、ここにあなたを呼び出していたのは話を聞いてもらうのが半分、あなたの心の様子を覗くのが半分だったんですよ。……いえ、前者が8割くらい? 愚痴や話を聞いてもらうとストレスが減るそうで」

「すごいんですね護祈は」


「体に残留したアースライトの力ですかね、研究所に引き取られて私だけ物心ついたころ昔からあるんですよねこの力。護国獣での戦いに生かせればよかったんですけど、巨躯には通用しませんでした。でもいいこともあるんですよ、雰囲気でまじめな人かどうかわかる、まぁその程度ですけどね。あなたも過去に縛られていなければとは思うのですが」

「俺の今があるのは、あの日姉さんが死んだからだ。突発的だか返り討ちにあっただか一体の巨躯を倒せなかった防衛隊も護国獣も、いないと巨躯と戦えないとわかっていても俺は嫌いだ」


「あれは……そうですね。あの時ルツキ以外に戦った護祈か護国獣の名を知っていますか?」

「影刃青輝意外に二体いたと聞いたけど名前までは。その時の戦闘映像とかもないし、知っているのは見たことがあるのはルツキさんの護国獣だけ」


「そうですか、今日はこのくらいにしましょう。早ければ来週くらいに迎えが来るそうです。それまでは私の付けた足跡の修繕をお願いしますね」


ラショウとはその日以降呼び出されることはなく、毎日巨躯の足跡を埋め立てる作業を続ける。



カヅキの運転で懐かしさを感じる基地へと帰ってきた。

車両を返しにカヅキは入ってしまいハクマはメノウの案内で宿舎へと入る。


「到着の報告があったから迎えに来たわ~。ルツキは今は部屋よ~さすがにねぇ、あなたに合わせるには少し準備が必要だから~。部屋に籠るように言ってあるのよぉ」


アンティークな物もお香の香りもない静かでサッパリとした廊下に、気持ち程度の観葉植物が置いてあった。


「この宿舎シンプルでしょ~。ラショウさんところは人が多くて騒がしかったぁ? まぁそれはさておきさっさと隊長に挨拶しちゃいましょうかぁ」

「よそから帰ってくると驚くくらいに静かですね」


「でしょ~、護祈のメンタルケアに人が必要だからね。カヅキちゃんが何でもできるけど乗り物だって必要だしね~。車両のメンテは基地の人がやってくれるけど、運転は免許ないとできないからねぇ」


足音が廊下に響き二人は大部屋に入る。

部屋には隊長のレオとユウスイが座っておりハクマの脚をとこ聞いて振り返った。


「良く戻ってきた。このまま断って他の護祈のもとで働くのかと思ったぞ」

「それじゃあ改めまして、ようこそハクマ君。荷物は君が出ていった時のそのままだよ」

「すごく歓迎されてない気が」


ジトリと睨みつけるユウスイ。


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