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移動災害 5

スケール4の出現とそのごたごたでハクマが解放されたのは夜も遅い時間。

オレンジ色の球体に閉じ込められていたハクマは回収され、その効果時間が切れるまで放置されていて軽い身体検査を受けてサポートチームの宿舎へと返される。


食堂で食事をしているとラショウの護衛の一人がハクマを呼びに来た。


「ラショウ様がお呼びだ。すぐに食事を済ませて応接室へと来るように」

「了解です。応接室は突き当りの手前でしたよね」


無言でうなずき護衛は素早く去っていき、食事を終えたハクマは応接室へと向かう。

護祈の方ではいまだにスケール4の出現は大きな影響を与えているようで、情報を集めまとめるため多くの人がせわしなくいろんな部屋を往復していた。


部屋の中にも外にも護衛が立っておりピリッとした空気の中をハクマは進み失礼しますと声をかけ部屋に入る。

服から見える白い肌にいくつも大きく目立つ痛々しい痣を付けたラショウが待っていた。

湿布は包帯で痣を極力隠そうとして部屋を漂う香の香りの中に薬草のキツイ匂いが混じる。


「痛々しい姿で申し訳ありませんね、普段は傷が癒えるまであまり人前には出たくないのですが。姉妹以外に巨躯のことでお話しできる人があなたしかいないから。戦闘後で気が立っている私の、私の気晴らしに少しお話を聞いてください」

「わかりました」


体を動かすたびに傷が痛む様で顔をしかめ、紅茶のカップを持ちながらラショウは話を始めた。


「スケール4の巨躯として今回現れたのは弱いほうで、増えた巨躯が分散し個別に対処することで何とかなりました。あれが統率力を持っていたらまだ戦闘中だったかもしれませんね。あなたはあの巨躯を見て感じたこと何かありますか?」

「巨躯はアースライトの力で動いているんですよね?」


「ええ。アースライトが見つかって世界中に普及したころに現れた巨躯は、その体すべてがアースライトを変換したものでできています。護祈のように人が操るでもなくかといって戦車や建物を作るように無機質な物。それを動かすロボットというわけでもない、おじいさまが調べいまだに答えが出ない不思議な怪物」

「分裂できるなら初めから増えた状態で、あるいはその分の力を強化に回せばなんて思ったんですけど」


「どういう事でしょう? 複製できるエネルギーを温存した状態でなぜ出てきたと言うことでいいんでしょうかね? 確かに再生や下位のスケールの巨躯、ビーム等の攻撃にアースライトの力だ必要ですが、まるまる巨躯を作り出すエネルギーがあるならもっと大きなものでも。とはいえ相手は巨躯、不合理な行動、理由不明な無駄な行動もしますし」

「たまたま温存したままの巨躯が現れた」


一呼吸置いてラショウはケーキを砲張りながら話を続けた。


「と考えたほうが普通な感じもしますね。今回現れたサイズは180メートルサイズの大型でしたけど、本当の本体は10メートルほどの塊だったそうじゃないですか。周囲に森まで作り出して」

「やっぱり大変なんですかかき分けるの」


「それはもちろん。折ってもすぐ下から再生してきてひっくり返されないように足元に注意をして……。ああそうそう、またしばらくは戦闘地域の埋め立てをお願いすることになりますね」

「ああ、やっぱりそうですよね」


デバイスを持ちラショウはふっと笑う。


「ルツキからです。タイミングがいいですね、こちらへ来て一緒に写真でも撮りましょうか? ……さて内容は、何であんな場所に転がっていたのか。これは後で返答しますかね」


何かを思い出したのか不機嫌そうな声で話始めラショウの雰囲気が変わる。


「あなたのルームメイトと監視役が負傷しました。犯人は暴れ出した侵入者です、他国のスパイだったようでカモフラージュされた軍用の義手などを振り回して車両を破壊し逃走」

「ならあの巨躯は……」


「早計です、確証もありません。護国獣の情報を集めているのでしょう。巨躯との戦闘で勝つためには護国獣の形と攻防早、より良いアースライトの使い方が必要ですから。ある程度は共有をしていても我が国は世界唯一のアースライトの産出国。知らない技術が使われていないか監視しているのでしょう。とはいえ少し嫌ですね。私のサポートーチームが傷付けられたこともそうですが、ああいう手者もが普通に野放しだということも。手配されてはいるけど、顔も義体化していれば被り物を被りかえれば発見は困難でしょう」


ラショウはイスに深く腰掛けため息をつく。


「すみません、まだ少し精神が乱れていますね。そろそろ時間にしましょうか。お話に付き合ってくれてありがとうございます。ゆっくり休んで明日に備えてくださいね」


ラショウは自分の部屋へと戻っていきハクマも自室へと戻る。


次の日の朝にはすぐに昨日の戦闘でできた破壊の後を埋め立てに向かう。

同室の双子の姿はなくいつも隣に座り空間を圧迫する大男の姿もない。


複数体の護国獣と地面を這うように移動した巨躯の足跡は大きな災害の後の様。

それに加えて、アースライトの力で生み出した植物の成長の後。


百を超える重機が抉れた地面を慣らすためにすでに稼働している。

ハクマはいつも通りにスコップを渡され近場の足跡へと向かう。


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