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燻る煙 2

掴まれていた首を抑えて咳き込むルツキは二人とハクマの間に立つ。


「待って、彼は私を殺す気はなかった。私が怒らせてしまっただけだから」

「それが通じると思ってるのルツキ。いいから早くこっちに来て」


ユウスイに手を引かれルツキはカヅキたちの方へと行きハクマは銃を突き付けられながら壁の方へと追いやられる。


「両手を上げて膝をついて、非戦闘員の僕らじゃハクマ君を取り押さえられないから。悪いけど部屋の隅でじっとしててもらうよ。だからほらそっちに移動して」

「膝付かせて移動してってなかなか無茶な事させるわね」


「ルツキは余計なこと言ってないで離れて、部屋に戻ってなさい。それで場が和むって空気じゃないのわかってるよね。ユウスイ、メノウに連絡してすぐ戻ってくるように」

「でもほら話し合えばまだ分かり合えるかもだし」


「それは隊長が帰ってきたら聞いてみて、とりあえず今は襲撃者と防衛対象なんだからルツキちゃんの安全が最優先。わかったらほらルツキちゃんは部屋に戻って」


ユウスイに呼び出され状況もよくわかっていないまま帰ってきたメノウに事情を説明し彼女はため息をつく。


「とりあえず~隊長に連絡するわねぇ。一緒に帰ってって言ったのに一人で先に行かせたカヅキと言いつけを破って部屋を出ていたルツキちゃんにはあとでお説教かしらねぇ。ハクマ君は自室で待機をお願いできるかしら~」

「この銃を持って僕、見張りしてるよ。ユウスイじゃ無理でしょ」


「ならカヅキに任せるわ。ほらルツキこっちへ来なさい」


ハクマは自室で待機するように言われカヅキに銃を向けられながら廊下を歩く。

カヅキのやや後ろをユウスイがハクマを睨みつけて無言でついてくる。


「や~、びっくりしたよハクマ君。まさかなりふり構わずルツキを襲うだなんてね。ほんと」

「毎年あの建物にいる護祈の誰かがルツキだと、あの時の護国獣の中に奴思っていた。町を壊し多くの人の未来を奪った犯人がまさか式典会場に来てもいないなんて思ってもみなかった。同じく家族を理不尽に奪われたカヅキさんは何とも思わないのか」


「この部隊ができたのは去年だから、それ以前のことは僕も知らないけどね。思うことがないと言われれば少し引っかかる部分もあるけどね」

「なら、どうして止めたんだ」


「僕の家族を殺したのは結局のところあの日あの場に出現した巨躯だよ、護国獣じゃない……そこを間違えたんだよ。部屋に着いたよ。ほら入って、隊長が帰ってくるまで」


連絡を受けてレオが返ってきた。

メノウやルツキから事情を聴きハクマの部屋へとやってくる。


「ルツキたちから話を聞いた。とんでもないことをしてくれたな」

「……家族の仇を、理不尽に未来を奪われた姉さんの……」


「とりあえず、上に報告だ。私だけの判断で処分はできない、とりあえずルツキにこれ以上危害を加えられないよう今日のうちに別の基地へとお前を移送する。そこで処罰が下るまで待て。いま移送車の手配を済ませてきたから1時間もかからずここから出られるぞ」


ハクマは目隠しと手錠で両手を拘束された状態で部屋を出る。

目を塞がれていてもメノウたちを話すルツキの声が聞こえ彼女は宿舎の前までついてきて車両に乗ったハクマに別れを告げた。


「できれば今度はしっかり話せる機会が欲しいわ。またねハクマ君」


装甲車に乗せられて基地を出るハクマ。



数時間ほど長距離の移動ですっかり眠っていたハクマを誰かがゆすり起こす。


「相手を間違えないようにお願いしますと申し上げたはずなんですがだめだった、ようですね。この間あったときより怒気が強くなっていますね。護祈に対する怒気が、ふふふ……」


何処かで聞いたことのある声。


「こんばんわ。といっても目隠しをしていて見えないですね」

「ついたのか。この後はどこに連れていかれる」


「さぁ、護祈の暗殺未遂。決して軽い罪ではありませんよ、この国に50名といない貴重な人材。それもこの国を脅かす巨躯に対抗するために必要な護国獣を扱う護祈の暗殺未遂」

「あんたプールの時に出会った護祈か、名前は……」


「カラ・ラショウと言います。ハナミネ・ハクマさん」

「どうして護祈がいるんだ?」


「ルツキから連絡がありまして。殺されかけたと、まぁ直接的にではなくかなり遠回しに言ってたんですけど」

「認めるよ、護祈を殺そうとした」


声とは別に誰かに強く腕を引かれ車から降ろされ、そこで目隠しを粗っぽく外された。

知らない地形と建物が見える別の基地。

護祈ラショウの周囲に立つ義手や義眼のスーツ姿のサポートチームたち。


「ようこそ影幽凱基地へ。あなたは本日からしばらくうちで預かることになりました」

「いいのかよ、俺は犯罪者だぞ」


「ルツキちゃんに不運の積み重ねで起きた事故だと、もう一度チャンスをあげてほしいと頼まれましたので。私のサポートチームは約60名と数が多いですからね、私に危害を加えることは無理でしょう。あそこは人が少なすぎると前々から忠告をしているのに。それでやっと数を増やしたと思ったら襲われて」


ラショウは手を叩くとハクマの両腕を掴んで護祈の宿舎へと連行される。


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