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過去 5

式典が終わると防衛隊は護祈たちがいた建物の前へと移動した。

建物の地下駐車場から防衛隊のロゴの入った純白な4台の強襲用の重装甲の装甲車が出てきて式典会場を出ていく。

6輪の大きなタイヤ、ゴテゴテとした装甲と天井の上に生えるいくつものアンテナ、アースライトを燃料にしているのか静かなエンジン音。


「あんな車両、防衛隊にあったんですね」

「滅多に使わないけどね。今日みたいな護祈が集まる式典みたいな時しか使わないよ」


防衛隊は建物と公園の外までの道を警備するように配置され、ハクマたちは数合わせの様で警備の隙間を埋めるように立たされる。

大勢の参加者や防衛隊員が遠巻きにゆっくりと進む装甲車を見送った。


「なんで式典に強襲用の装甲車が必要なんですか」

「大きくて威厳がある。ハクマ君は式典出るの初めて?」


「防衛隊に入ってからは初めてです」

「そっかなら見たことないか。毎年あの車両で護祈はここにきてるよ、誰が来るかは上の人しか知らないから今日誰がいたかわからないけどね。みんな同じ服装出し顔隠してるし」


カヅキは公園を後にする最後の一両を見送り、交通整理をしている警備員を残して再度集合がかけられ隙間を開けないよう整列し移動する。


「何も聞いてないのに移動が多いですね。てっきり話を聞いて終わりだと」

「まぁ、非番の隊員集めて防衛隊もたくさん参加しているよってアピールでしょ。でももうすぐ解散になるよ」

「喉渇いた」


すぐ近くを歩いていたユウスイが二人の間に割って入ってきた。


「いたのユウスイ、背が低いから僕一瞬見失ってたよ。ちゃんと起きてた?」

「うっさい。この後駐車場で解散だからさっさと帰ろう」

「意外と早く終わりましたね」


駐車場まで来るとハクマたち防衛隊の式典での役割が終わり、それぞれの車両に乗り帰路に就く。

本会場の外はまだお祭り騒ぎが続いており、人の波の間にいくつもの屋台が見える。


「外側は毎年賑やかねぇ~」

「ここの人たちはほとんどあの戦いの関係者じゃないから、観光やお祭り気分で来てるからね。関心の有無にかかわらず人が集まってる」


「まぁ、知らない人に知ってもらえて風化しないのならお祭りでもいいのかもね~」

「悲しいことを楽しく面白く騒がれるのはあんまりいい気分にはならないけどね。何年たっても気持ちの整理がついていない人だっているわけだし」


レオは眼鏡型のデバイスで作業をしており、ユウスイは疲れて寝てしまった。

メノウとカヅキの会話を聞きながらハクマは外の景色を見る。

遠くからも木々の間から少し見える本会場の慰霊碑。


ハクマの脳裏に崩れた建物が映る。


作業をしていたレオがデバイスを取り外してカヅキに話しかけた。


「すまない式典会場で用事ができてしまった。戻らなくていい、ここで降ろしてくれ」

「了解」


車両を路肩に寄せてレオが降ろす。


「私は別の手段で会えるから、ルツキが一人で寂しがっているだろうからまっすぐ帰るように」

「了解」


式典会場から基地へと帰ってくる。

効率的に道路を敷いたとしても遠方から帰るには時間がかかる、長距離の移動でユウスイは基地に到着することには深い眠りに落ちていた。


「予定より少しだけ早く戻ってきたわねぇ。私は基地の方に行ってくるわね~、隊長の代わりに戻った報告してこないといけないから~。宿舎の鍵は渡しておくから先に戻ってて~。ユウスイ完全に寝ちゃってるわね~。ゆすっても起きなかったらハクマ君が運んであげて、よろしく~」

「わかりました」


メノウを降ろし倉庫と隣接する宿舎へと戻る。

すでに日は落ち、地平線の果てがわずかに明るい程度。


「僕はこのままこの車置いてくるから先に行って鍵開けといて。ユウスイは放っておいていいから。ほら鍵」

「でも、俺ユウスイさん運べって言われてませんでしたっけ。鍵開けてからユウスイさん取りに来ますんで」


「いいよいいよ、先に宿舎の扉開けてもらった方が入るの楽だから。ユウスイは僕がたたき起こして連れていくから」


カヅキはハクマを宿舎の前に降ろすと鍵を渡して駐車場へと走り去ってしまった。



その場に鍵だけを渡され置いていかれたハクマ。

鍵を開け階段を上り大部屋へと帰ってくるとルツキがいた。


彼女はいつもユウスイが飲んでいるものと同じ紙パックのジュースを飲んでおり、予定より早くハクマが返ってきたことに驚き席を立ち出迎える。


「あらお帰りなさい、ハクマ君だけ? ユウスイやメノウたちは?」

「他のみんなはまだ下にいます」


「意外と早かったのね、もっと遅くなるって聞いていたから徹底的に掃除でもしようと思っていたのだけど」

「留守の間は部屋にいるんじゃなかったんですか?」


「まぁ、人が来ればわかるし。部屋に居続けるのは飽きるのよ、だから部屋の掃除していたわ。重たいものを移動させないところだけね。式典のニュース見ていたけどあなたたちが一瞬映ったわ」


ハクマは重たく口を開く。


「ルツキさんは今日の式典に何で出なかったんですか?」

「なんでって、今日はお留守番をするって言ったじゃない」


不思議そうな顔をしてジュースを飲むルツキ。


「ずっと、毎年慰霊祭の時に探してたんですよ。あの戦いの町を破壊した護国獣、あの他の護国獣と違う独特の形、あの時町で戦っていたのは影刃青輝、なんですよね、ルツキさん」


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