表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

巨躯 3

磁気ボードに張られていたメモをとりカヅキがだるそうに外に出る準備を進めるユウスイの背中を押す。


「それじゃ僕らお昼の買い出しにって来ます。留守番お願いしますね」

「ええ、行ってらっしゃい。待っているわ」


部屋にはルツキ一人になる。

冷めたコーヒーを飲みながら彼女はユウスイの座っていた席に座り彼女の端末を使って防衛軍のデータベースにアクセスする。

今までの巨躯との戦闘記録が並びその中の一つを再生させた。


巨躯との戦いが再生されのんびりと過ごしていると部屋の扉が叩かれる。


「失礼します。本日よりこちらに配属になりましたハナミネ・ハクマですよろしくお願いします」


額から耳にかけて火傷跡のある顔をした青年が入ってきた。

ハクマと名乗った青年はがらんとした部屋を見渡しルツキを見つけて尋ねる。


「えっと……ここ護祈さんのサポートチーム部署でいいんすよね?」

「ええ、ようこそ影刃青輝のサポートチームへ。ところでメノウ……ギンナギさんと一緒に来たのではなくて?」


「基地までは一緒でしたけど、駐車場で他の部署に呼ばれて別れました。とりあえずこの部屋に来れば誰かに合えるから挨拶を済ませておいてくれと」

「そうなのね。まぁ入って楽にしてて、とりあえず私の自己紹介ね」


動画を消し席を立つとルツキはハクマの方へと歩み寄り握手を求めた。


「初めまして。私はヨサキ・ルツキ、影刃青輝の護祈。これからは私のためにしっかり働いてくださいね。仕事内容はメノウや隊長から聞いて頂戴」


自己紹介をしルツキは手を差し出すハクマは握手をかえすと握った手に一瞬力が入る。

ルツキはふっと笑うと彼女が何か言う前にハクマは口を開く。


「ああ、あなたが護祈なんですね。今まで他の方を遠目に見たことはあったのですがこうして近くで見ると、その、普通の人だ」

「ええ、護国獣に変身できる力を与えられてい入るけども普段は普通に人として暮らしていますよ。意外と皆さん私たちを殿上人のように考えているんですよね。確かにある程度のわがままを聞いてもらえる立場ではありますが」


デスクの並ぶ仕事スペースとソファーとそれぞれの私物が置いてあるくつろぎスペースが一体となった大部屋。


「えっと、ここって巨躯が現れたら出撃するんですよね? ほとんどいないようですけどいいんですか?」

「ああ、護祈に関しての知識はないのね。巨躯が現れたからってすぐに出撃するわけではないの。防衛隊の方々が都市から引き離している間に準備を整えるから、私たちは巨躯との戦闘が始まってから動き出す。お姉さま方、というか他の護祈の疲労度と誰が近いかを加味してね。だから他の部署と違って常に警戒態勢で待機というわけではないわ」


ルツキとは熊が話していると遅れてもう一人部屋に入ってくる。


「あらあら、ルツキはまたお客様しているの? ハクマ君は座っていて今お茶いれますからねぇ」

「あ、すみません」

「おかえりなさいメノウ。ちゃんともてなしていたわ、挨拶も済ませたし」


メノウと呼ばれた女性はぱたぱたと小走りで走り部屋の奥にある小さなキッチンへと向かう。


「立ち話で、椅子もソファーもあるのにねぇ。さぁさ、今日は簡単に仕事内容の確認と基地の案内でもしましょう」


お茶を汲んできたメノウがテーブルにカップを並べていると、唐突に基地内のサイレンが鳴る。

サイレンの種類にはいくつかあり、ハクマもルツキも聞きなれた音に大きな反応もなく次の放送に耳を傾けた。


『巨躯出現! 場所は瑠璃色海岸沖合18キロ地点。白帝港へとむけて時速約30キロで移動中!』


基地内の空気が変わりルツキが大きなソファーに腰掛け端末の操作のため宙で指を振る。


「あらあら、ゆっくりする間もなく。カヅキが帰ってきていないし待機かしらね」

「白帝港はここから車で二時間もかからない距離。装甲車か何かでなら現場には行けるわよ」


「この基地にはもう一人護祈がいますしぃ、そちらに任せるのもいいんじゃない? 道路を進だなんて危ないわぁ」

「まぁ、これからの巨躯の動き次第よ。もしかしたらこちらが動く前にまた防衛隊だけで倒してしまうかもしれないし」


ルツキとメロウはそれぞれが巨躯の情報を集める作業に入ってしまい、ハクマはその場に放置された。


「あの~、俺も見たいんですけど。巨躯の情報」

「ああ、モニターに出すわねぇ、ええとぉ?」


少し手惑いながらもメロウはくつろぎスペースにある大型のモニターに情報共有された巨躯の映像が映し出される。

映像は航空機からの様で海上を俯瞰した視線、雨で映像は多少白んでいた。


鱗のついた植物の蔦が絡み合った手足のない蛇のような巨躯が体をくねらせながら海を進んでいる。

ところどころ鱗が棘のように逆立っており頭に当たる花弁の部分が赤く発行していた。


「以前に目撃例はなし、今回初めて見る巨躯ねぇ」

「逃亡や分隊の見逃しがあるといろいろと厄介だから、戦う側としては初見は助かるのだけど」


陸地から複数の高速戦闘船が接近し巨躯の作る高波に巻き込まれないように距離をとりながら主砲がその体を狙う。


「海洋に陽動できないか試すようです」

「海で戦える護国獣は少ないのに、無駄よさっさと陸に上げでしまえばいいのよ」


攻撃を行うと体表で激しく爆破し巨躯の体から煙が立つ。


「艦砲サイズでまったく効いていないわね。今回のは硬い、少なくとも護国獣じゃないと倒せないのはわかった。外に出る準備するわ」

「車か~、う~ん。あ、出撃要請まで来ちゃった。これより護祈ヨサキ・ルツキは現地に赴き巨躯を迎え撃ちます」


「了解よ。隊長も情報補佐もいない泥臭い戦いになるわね。買い物に出かけているユウスイに連絡してこちらの支援を」

「怒るわね~あの子」


体に頭と同じ発行する花弁を複数付けると緑色に光り輝く液体をまき散らす。

液に触れた高速船は熱せられた蝋のようにドロドロと溶けていく。


「ああ、船が!」


思わず声の出るハクマ。


「うそでしょ、落ち着きなさいあれは無人船。有人の司令船は巨躯の後方を追っている大型船よ。一年ここで働いてきたのよね? ほら出るわよ、あなたの装備はまだ届いていないから着の身着のままでメロウについていって」


三人は部屋を出て足早に通路の先のエレベーターに乗り込み地下の駐車場へと向かう。

メロウは駐車場にいた整備士からキーを受け取り他の車両と塗装の違う護祈のサポートチーム専用の装甲車に乗り込む。

いつの間にかにいなくなったかと思えば雪のように白い服に着替えたルツキが合流し装甲車は基地を出る。


「巨躯の名前は蛇茨腐液と決まりました。以降その名で呼びます」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ