過去 3
ユウスイにせかされてフォークとナイフを持ちハクマがパンケーキを食べだし、それを確認してからルツキにアイコンタクトをおくってユウスイ達も食べだす。
甘い香りが漂うゆっくりとした時間だったが唐突にアラームが鳴り始めた。
それはサポートチームの一人が持つ通信デバイス。
護祈達は食事の手を止めてそれぞれのサポートチームのテーブルへと向かった。
「巨躯がでたのね」
「ああ、だがルツキに出撃命令は出ていないな。まだ休暇中だ」
レオは自分の携帯デバイスを確認し答える。
「でも私たちに連絡が来たのならこの近くなんでしょう?」
「呼び出された護祈からの応援要請がなければ我々は動けない。私たちは待機だルツキ席に戻ってお昼を食べなさい」
数人のサポートチームメンバーが駆け足で店を出ていき、さらに数人を連れてエイアが店を出ていく。
「エイアお姉さまが戦うのね」
別れを言う暇すらなく店を出ていきいなくなってしまいルツキが去っていくエイア背中を見送る。
残されたメンバーは手つかずのパンケーキをテイクアウトする相談をし、食べかけを紙の箱に詰めて名前を書き込み去っていく。
収集がかからなかったラショウはスーツ姿の仲間と別れ静かに席へと戻りルツキの帰りを待つ。
「ユウスイ、映像見せて」
「今パンケーキ食べてるんだけど。休暇中なんだからルツキも仕事のこと忘れてパンケーキ食べなよ」
「意地悪しないでほら早く」
「わかったよ」
ポケットから液晶デバイス取り出し何処かで戦っている映像を映してルツキに渡す。
それを受け取ると彼女はラショウの待つ席へと戻っていって二人並んで画面を見ながらパンケーキを食べ始めた。
しかし先ほどまでの和気あいあいとした話ではなく、巨躯の動きや発光器官の位置などを護祈同士が話し合い分析をしている。
三十分ほどして護国獣が到着したようで巨躯の分析から戦いの応援へと変わる。
それを見ていたハクマはユウスイに訪ねた。
「本当に護国獣は最小の数で巨躯と戦っているんですね」
「希少なアースライトを使っているから、そう簡単に大勢で袋叩きにはできないよ。前のことで厳しい制限駆けられちゃったから」
「前のこと?」
「巨躯の命名権がどうのの時に総出でつぶしに回ったって話したじゃん」
その後、巨躯の討伐は無事に終わったようで戦闘の際にルツキとラショウが応援した以外にハクマには戦況がどうなっているかわかる方法はなくパンケーキを食べ終えた。
パンケーキを食べラショウとも別れるとルツキたちは基地への帰路のつく。
来た時と同じ何車線もある大きな道路から別れ、だんだんと細い道路へと入っていく浮遊車。
「エイアお姉さまの正龍爆拳は戦い方は正面からの殴り合いでうらやましいわ」
ユウスイが寝息を立てている横で先ほど見ていた戦いを思い出したルツキが呟く。
「そういえば影刃青輝は激しく動き回って戦ってますね。走り回るというか飛び掛かるというか、側面に回り込もうとしている姿も」
「私の戦いをよく見ているわね。それとも護国獣に興味がある? ユウスイの部屋に戦闘記録を編集したものがあるのだけど、影刃青輝意外に知っている護国獣とかいる?」
「ま、まぁ、時間があるときにでも」
「いいわ、いつか時間があるとき私の戦いを解説付きで見ましょう。休暇だからこの間にでも、そうねユウスイと相談して見ごたえのあるものを探しておくわ」
夜になってハクマたちは基地へと帰ってくると車を宿舎の前に止めカヅキを残して下車し部屋へと戻ろうとする。
「私は帰ってきたことを報告してくる。明後日は皆外出するよな。ここには誰もいなくなるルツキは部屋に籠っているように。この後はカヅキは浮遊車の返却を任せる、メノウはルツキと夕飯の準備を、ハクマは荷物を部屋に運んでおくように。では解散」
それぞれが別々の方向へと向かう。
その後、就寝時刻まで各々時間を過ごし部屋へと帰っていく。
ハクマが就寝前のランニングを終えシャワーを浴びて部屋へと戻ってくるとユウスイがモニターでどこかの巨躯との戦闘を映し鑑賞していた。
「また巨躯が出たのか」
「ここからは遠いよ。それと珍しく海洋航海型の護国獣が出撃した」
「普通の護国獣と何か違うんですっけ?」
「海洋型陸上では性能が落ち、戦闘力も低い。大波とか地形破壊しないよう低く設定されているといった方がいいか。ルツキと似た試験型の護国獣」
「特別なんでしたっけ。能力こそ違うけど、普通の護国獣は性能を整えてあるとか」
「ちゃんと勉強してるんだな、荷物持ちしかやらないもんだと思ってた」
「ひどいですね、いつも同じ部屋で作業しているのに」
察しがよくルツキが起きてくる。
「また巨躯が出たのね」
「次々起きてくるじゃん、いつもなら寝てる時間でしょルツキ」
「なんか胸騒ぎがしたのよ、私も見たいわ向こうのモニターに出して」
「はいはい、メノウがいないからポップコーンとかは自分で用意してね」
映像の中で巨大な樹木が森の中を移動しており対処に向かった海洋型の護国獣が正体不明の攻撃に劣勢な状況。
海洋型の護国獣は陸上型とは違い船や潜水艦を思わせる長く太い体をした鯨のような鰭がある。
他の護国獣と同じく銀色の体表に識別用のマーキングが描かれていて発光器官から小さな光弾をどこかへとむけて放っていた。
着弾地点が爆発し火の手が上がる。
「あれは蛸、蝸牛?」
「どっちでもいいよ貝類だし」
「蛸ッて貝なの、というか海の中よねどうして森が?」
よく見れば巨木に見えるそれは幹ではなく茶色い筋肉と葉ではなく小さな鱗が重なり合った異形の巨躯。
森が筏のように浮き巨躯が海の上を進んでいる。
頭部に集まった洞のような空虚な目玉が距離をとって泳ぐ護国獣を追って動く。




