過去 2
ルツキを乗せた浮遊車の後ろに5台、ついてくる浮遊車が見える。
「ああ、食事に行くとルツキが言ったらしく二人護祈が、あとそのサポートチームが付いてくる。店は貸し切っているから入る分には問題はないが」
「エイアお姉さまとラショウお姉さまね。隊長に聞いた後、メールで話したの」
「ルツキちゃんは優しいからいいけど~、護祈との接し方に厳しい他の護祈がいるのは胃が痛いわねぇ。普段みたいになれなれしくしていると注意は受けなくても睨まれるわよぉ~」
運転席でカヅキが渇いた笑いをし、ユウスイがだるそうに座席を倒し大きく息を吐く。
護祈ごとにそれぞれサポートチームとの距離感が違う、ハクマの頭には今朝であった不思議な空気感を持った護祈を思い出す。
「普通の護祈ってどういう感じなんですか?」
「まぁ、直接的な防衛隊を動かす命令権限はないけど~、少なくとも護祈は上官や立場上は上の人間になるから隊長と接している感覚って考えたほうがいいわねぇ。発言に許可をもらい、必要のない会話は慎む感じ~。そもそも護祈は階級にするとレオ隊長よりずっと上だしね~」
「隊長より階級が上なんですか」
「階級というか~使用権限というか~」
通行人、光る看板、ホログラムなどを興味深げに外の景色を見ているルツキが振り返らずに答えた。
「戦車とかと一緒よ、防衛隊所有の護祈を巨躯出現の出動命令後に現場の判断でそれぞれの隊長の指示で動かせる。‥‥‥うわっ変なとこさわちゃった、ジュースが出てきたわ、誰か飲む人いる?」
都市の中はいくら走ってもいくつ道を曲がってもほとんど同じような景色が続く、信号で停車した際ルツキが近くの建物を見上げる。
「外観は違う風にも見えるけど、遠目に見たらみんな一緒ね。このビルの前さっきも通らなかった?」
「まぁ、個性出して変な装飾や形は作の手間だし建物としての機能性落としても仕方ないし。中身は工場だし、普通の建物も外観より内装にお金かけるよ」
横になるユウスイが天井を見上げながらジュースの飲みながら返答を返しルツキはフーンとつぶやく。
店に到着し安全にビルの壁を登り駐車場へと入る。
「はい到着」
「本当に垂直に上ったのは何だったのよ」
遅れて他の護祈が乗った車両が駐車場に入ってくるとレオとルツキは彼女らに挨拶に向かっていった。
車から降りてきた護祈の一人に今朝ハクマが出会った護祈の姿。
彼女は朝より多く8名のスーツ姿の従者を引き連れレオと話している。
「あっちの人は今朝あったな、誰だかわかります?」
「カラ・ラショウさんね~。護国獣、夢龍聖懐の護祈。相手の心を見透かし独特なプレッシャーを放つらしいわよ~」
「ああ、なんかわかります。なんか」
「護国獣とかはよくわからないからぁ、そっちが気になるならユウスイちゃんかルツキちゃんに聞いてね~」
もう一人の護祈はエレベーターで出会った赤毛の護祈。
彼女らとそのサポートチームを連れて店に入る。
パンケーキ屋ということもあり甘い香りが漂う明るい壁紙の店内。
貸し切りということもあり店内には従業員以外に人はおらずがらんとしている。
従業員が整列し到着を歓迎し席へと案内する。
護祈達三人は談笑しながら同じテーブル席に着き、ハクマたち他のサポートチームのメンバーはその周囲の席に座る。
そしてメノウと他数人の護祈サポートチームの人間が厨房へと入っていく。
「メノウさんが厨房に行きましたね?」
「外に出るとメノウは仕事がいろいろとあるからね。ルツキちゃんの好き嫌いとか厨房の衛生環境のチェックとか、後は‥‥‥」
厨房の方を見ていたカヅキはそこで言葉を止めてユウスイを見る。
「てか、ユウスイはルツキちゃん取られてむくれてるの?」
「べぇつぅにぃ」
「あはは、これは午後まで尾が引くねー。ルツキもまるで気が付いていないし。でもまぁ護祈がまとまってくれたおかげで僕らが見られることはなくなるかな。悪口とか言えば目を付けられるだろうけど。楽しそうだねルツキちゃん」
「年に数回しか会えないし仕方ないんじゃなぁーい」
「あー、めんどうだなぁ~ゆーすい~」
料理を作っているのか店内に甘い香りが漂ってきた。
店内で話しているのは護祈たちだけ、時折ハクマたちのようにぽつりぽつりと会話することはあっても彼女たちのように話が止まらないなんてことはない。
「そういえば、誰も注文取りに来ませんね」
「多分前もって何食べたいかルツキちゃんに聞いておいて、それが全員分来る感じだと思うよ。どの料理が誰に振舞われてもいいように」
「そうなんですか、護祈のルールはなんか変わってますね」
「まぁ色々あるんだよ。長く働けばわかる」
しばらく待ち配膳されるパンケーキ。
護祈三人それぞれが違うものを頼んだらしく、すべてのテーブルに三種類見た目の違うパンケーキが並んだ。
「さぁハクマ君、好きなの食べて感想聞かせてよ。ほら取り皿あるからまんべんなくとって」
「いいんですか」
レオが黙って頷いて、いつの間にかユウスイが小皿に皆の分をとり分けていた。
「珍しいユウスイさんがみんなの分を」
「早く食べなよ」




