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巨躯 2

背が高く胸と腰回りのふくらみがなければ男性にも見える中世的な顔立ちのカヅキは菓子パンを食べながらテレビを見ており、キーボードをたたく少女のような小柄な女性が手を止めて伸びをしていると。

そこにコーヒーを片手に長袖長ズボンで手袋などで肌を極力隠した長身長髪の女性ルツキが入ってくる。


「おはようカヅキ、ユウスイ、今日は雨ね」

「午後から強くなるらしいですよ、買い出しあるなら午前中にお願いします。僕土砂降りん中を運転するの嫌なんで」

「ていうか今私らしかいないんですよね。買い出し私も行かなきゃダメか」


キーボードから手を放しズズズと紙パックのジュースを飲み干したユウスイが振り返りルツキの顔を見た。

がらんとした室内を見回しルツキは近くの椅子に腰かける。


「あら、なんで? 他のみんなは?」

「なんでしたっけ、レオ隊長は昨日のゆーりんとうこー? とかいう巨躯を含めて最近頻発する巨躯の出現に対する緊急の招集ですって。帰りは夕方くらいになるそうです」

「メノウ先輩は今日来る新人の送迎です、今駅まで迎えに行ってます」


細い腕を伸ばしユウスイが壁に掛けられている磁気ボードに書かれたスケジュール表をゆびさす。


「ああ、今日だったのね新人! 来るとは聞いていたけど、今の今まですっかりだったわ」

「女性ばかりでしたからね。力仕事を押し付けられる人が来てよかったです」

「でもその人ルツキが選んだんだよね?」


カヅキとユウスイが顔をしかめルツキは黙ってコーヒーに口をつけた。


「ええ、防衛隊入隊歴一年、護祈サポーターチームに転属希望者がいたから。隊長がくれた希望者のリストから選んだわ。顔はぱっとしないけど」

「ユウスイ、ストローを噛むのやめなさいって言われてたでしょ。行儀悪いんだから」

「そんなこと言われてもこれ無意識だし、飲み終わったからゴミ捨ててくる。カヅキの食べたごみも捨ててくるよ」


「ちょっと、私の話を聞いてよ」


ニュースで昨日の巨躯のことが語られている。

映像はなく護国防衛隊から提供されたいくつかの画像と、政府から提供された戦闘動画を繰り返し映していた。


「幽鱗凍光、暗くてボヤッとしてたけど体が大きく攻撃はだいぶ単調に見えたわ。透明化の能力が無かったら海上で仕留められたとはおもうけど」

「巨躯が賢かったらスケール3くらいの巨躯で人類つんでますからね、普通に」

「漢字に弱い僕には巨躯も護国獣も、もっとわかりやすく読みやすい名前がいいなぁ」


「無理でしょ。最低限の見た目と能力さえわかれば付けられる名前だし、ファイルのタグ付けみたいなものよ」

「無理です。変にかわいい名前とか付けると愛着などを持たれて、保護活動家みたいのが湧いて出ますから。機械的、無機質、脅威性、などを意識した漢字で付けられます。はじめから呼びやすさとわかりやすさは意識されていません」

「二人して否定することないじゃん」


「神様の名前とか妖怪の名前みたいなものね。難しい漢字や他に何の用途で使うかわからない画数の多い漢字が使われているでしょう」

「それでも昔に巨躯の名前の命名権をかけた競売があったみたいですがね」

「へぇ、おもしろそう。どんな名前になったの?」


手にしたゴミをゴミ箱に捨てユウスイが呆れたように答える。


「企業広告やアホみたいな名前が付きました。政治的圧力で3回で終了です」


ポケットから端末眼鏡を取り出すと何もない空中に指を振りながらルツキがいう。


「ええと、たしかジャイアントスプラッシュイーエックスとアカクテツノガオオキクテシマシマシテテトゲトゲシタヤツとセイフハムノウでしたっけ。マスコミに意図的に連呼されていた記憶があるわね。ジャイアントスプラッシュEXは強壮剤だったかしら?」

「何その名前たち、すごく気になるんだけど動画ある?」


名前に興味を持ったカヅキが目を輝かせるがルツキとユウスイは冷めた目で返事を返す。


「当然検閲され消されているわ。違法アップロードも見つかり次第消されているはず、個人所有はさすがに消せないけど」

「最後のがとどめになったんでしょうね。まぁ、怪獣の命名権を売って稼ごうとしていたのは政府だから最後の名前は正しかったわけですが。情報局の情報の規制かとかかかったのはそのころだった気がします」

「そっか~」


「ユウスイが映像記録持ってそうではあるけど? どうなの?」

「持ってますよ。部屋のどこかにメモリーカードがあるきがする」

「仕事終わったら見に行っていい? お酒とつまみ持ってくから」


気が付けばニュースは別の話題に切り替わっており、画面にはサイバネピック選手へのインタビューの風景が映っている。


「そういやその後、懲りずに視聴者の応募から募るって方法を情報局がやろうとしてたよ」

「へぇ、そっちはどうなったの!」

「投票で名前が決定する前にお姉さま方が潰して回った。最速討伐記録の上位巨躯らはそれよ、護国獣が3体がかり5体がかりでフルボッコ。番組の企画潰しに防衛予算が跳ね上がったわ」


「ティルトローターではなくアースライトで生成したジェット機で各地の基地から飛んでいったんだもの当然。今じゃできない組織体系と役割がフワッとしていた黎明期のみに許された行為」

「今は装甲車一台動かすだけで認可がいるからね。僕ら対巨獣討伐チームジアースの護国獣サポーターチームは事後報告だけども」

「都市に被害が出る前に戦わないといけないのだから、何時間も許可に時間をかけている場合じゃないからね」


「ところでさ、どうでもいいけどさ。対巨獣討伐チームジアースって後半漢字はいらないの? 漢字にこだわってきたのに」

「対の寸を小文字のTに巨獣の巨を大文字にEにして組織ロゴが作りたかったんだって。あとそこは覚えやすさを重視してるよ流石に」

「そうだったの初めて知ったわ」


「知らなかったんだルツキは僕らより長くいるのに?」

「別に知ってても特はないですから」

「雑学にくわしいと賢く見えるわ」


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