都市 1
「そこに、人が住んでいて。それぞれの人生送っているんですよ、それを数だ影響がだなんて……まるで物のように」
「都市の開発と発展を理想から離れて暮らすのだから、都市の恩恵は受けられない。都市ではお金がすべて、能力があれば評価の分だけお金が集まり、お金がなければ価値はなく人の命もその価値で決まる。頑張った人が評価される正当な世界、都市に住まないのは助け合い協力分担などと秀でた能力がなく都市での重要度の低い仕事を任されるだけ」
「お金がすべてじゃないだろ! 近所の人との付き合いや友達との約束、お互いの信頼関係、命の在り方がお金で解決されない、一日一日がかけがえのない大切なものだから」
「効率的じゃない」
ハクマとユウスイの会話に空気が張り詰めレオが机をたたいて立ち上がる。
「さて、今回現れたスケール4の巨躯については見たな。ユウスイとルツキはあの巨躯がこの国に出現した際の必要戦力と戦闘予測をまとめて報告するように」
その流れに乗ってメノウとカヅキも立ち上がり食器を片付けたり自分のデスクへと戻っていく。
レオは部屋から出ていき、カヅキもメノウからメモを受け取るとハクマを呼ぶ。
「ハクマ君~お買い物行こうか」
「……はい」
階段を下り駐車場。
カヅキは止めてあった軽装甲車に乗り込みエンジンをかけ、ハクマが乗ると基地を出て都市へと向かって走り出す。
かつて町があった場所は自動管理の巨大な畑へと変わっており、遠くに見える都市の高層ビル群は太陽の光をビルの窓が反射し水面のように揺らぎ瞬いている。
「いや~、最後すこしピりついちゃったね。小さいころからユウスイは都市で育ったから、生粋の都市の思考に染まっちゃってるんだ。未来への希望技術の発展、皆が競争相手、友達って言えるのもルツキくらいなんじゃないかな。……僕はわかるよ、ハクマ君の言いたいこと。数字にされた人たちにも人生があって巨躯が現れるまでそれぞれ幸せに暮らしていた」
「そうですね」
「あはは、困った信じてないな。少し昔話を聞いてくれるかな……僕はね7年前の巨躯の戦闘で妹と弟を失ったんだ、二人は友達と旅行に行った帰りでね最寄りの駅まで僕が迎えに行くはずだったんだ。ほら当時は町のも電車が走っていただろ、待ち合わせの時間まで余裕があったから僕は出かけててね少し遠出をしてたんだ、そんなときに限って弟と妹は予定より早く解散になって駅に向かってたんだ」
「そんな時、巨躯が現れた……あとは言わなくてもいいよね」
「はい」
「あの日二人が着くのを家で待っていれば、もっと速い車があれば迎えに行けたのにって思っちゃうんだよね、国の賠償金でヘリとかこの車の免許とかもそれで取り始めた。当時の情報局の報道でさ。わずか30名程度の犠牲で勝利とか書かれてて、さっきのハクマ君と同じ気持ちになったよ。だからあまり悩まないでね」
「ありがとうございます」
「ユウスイは別に悪気があっていっているわけじゃない。今の時代、都市に暮らしている人間を最優先で守る。これはどの国でも一緒だよ」
窓の外へと目をやるとちょうどランドシップ社の超巨大貨物輸送車が軽装甲車を追い越していくところだった。
一軒家ほどある大きな貨物輸送車をはじめだんだんと近づく都市に周囲の交通量も増えはじめ、軽装甲車はその車両の流れ埋もれに消えていった。
基地ではハクマが居なくなりルツキが自分のデスクに戻るユウスイに語り掛ける。
「大国だとしょっちゅう地中から現れるわね。うちは海中か他国から逃げてきたやつばかりなのに、地中から出てくるのは本当に稀。違いは何かしら」
「この国はまだ安全な方なのに」
ルツキの疑問は彼女の耳には入らなかったようで、なぜ怒鳴られたか納得のいっていないユウスイがストローを噛みながら呟く。
「そんなことはあまり関係がないでしょ、あなただって逆上したでしょ。配慮が欠けていたと謝りなさいよ」
「私が悪いの?」
むすっとしたままユウスイはヘットセットをつけて音楽を聴き始める。
食器を洗い終えテーブルを拭いていたメノウは困った顔をするルツキに話しかけた。
「あらまぁ、ルツキちゃんがユウスイちゃんを叱るだなんて珍しいこともあるのねぇ」
「やめてください。7年前の戦闘を最後にこの国では死者は出ていないわ、私たちはそれを守り続けるために戦っているのよ。私だって物心つく前に両親を失い孤児として施設で同じく被害にあった他のお姉さまたちと育った身。別の生活があったと考えていた日もありました、私は次の私たちが生まれないように戦っているんです」
「あのルツキちゃんがこんなことを言うなんて、少しウルッと来ちゃった~。初めましてしたときは物静かでぬいぐるみを手放せないような子だったのに。ちょぉっとユウスイちゃんの影響を強く受けちゃったけど~、しっかり育ってくれて」
「やめてください恥ずかしい。誰かに聞かれたらどうするの」
「護祈の精神管理担当として、本部に上げる記録にも~この感動はしっかり伝えておきますから~」
「もう、好きにしなさい」




