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護国獣 1

巨躯脈晶砕地、体はやじろべえのような逆三角形で銀色や金色の鉱物の原石な姿、そして体の各所から無数の結晶が生え体の上から三本の腕が伸びている。

体から生えた青と紫の結晶は太陽の光を反射して輝いていた。

巨躯は海上を泳いで進んでいるわけではなく水面からわずかに浮いており滑るように移動していた。


『まもなく自走榴弾砲射程圏内、20.3口径、15.5口径でダメなら現場は護国獣に任せ都市の守りを固める』


水面からは浮いているが巨躯の移動で海面には大波が立っているのが見える。

しばらくして脈晶砕地が上陸を果たす。

直後に遠方に控えていた自走榴弾砲からの砲弾が弧を描いて巨躯の頭上に降り注ぐ。


戦場から離れた場所で光が瞬き別の護国獣である正龍爆拳が姿を現す。

護盾蒼鱗と同じ二本の足と太く長い尾で体を支えた、銀色の体表に赤いラインの入った無機質なシルエットの怪物。

角や鱗の形状、腕の形などに違いがあるが、その見た目に大きな違いはない。


戦闘の主導権が護国獣へと移り戦闘ヘリと高速船も引き返していく。

ハクマたちを乗せたティルトローターは戦闘区域の近くを飛び、戦闘が終わるまで機体を止めておける場所を探している。

遠くで起きている戦闘を遠目に見ていてハクマは尋ねた。


「俺後方部隊で戦闘のことはいまいちなんですけど、戦車の砲撃は巨躯に効かないのはどうしてなんですか?」

「ただ単に火力が足りないからだ」


レオは一蹴しハクマの質問は終わりメロウとカヅキが呆れた笑いをする。


「たすけて~ユウスイ~」


無線の切替えか舌打ちか、わずかなノイズのあとにユウスイの声が響く。


『基本的に防衛隊の盾鬼11型戦車と後継の12型もスケール2程度の巨躯を相手に作られた。だから今回のようなスケール3の巨躯には大した効果がないの、最もアースライトの密度が薄い箇所ならダメージは通るけど。バリアーがあるからどのみちダメージは与えられない』

「もっと強い戦車を作れば、とかじゃないんですか?」


『はあ……そうだね、アースライトを武装に使ってるから、変換装置を大型化させれば火力は上がるね。で車体重量が上がる、巨躯が現れた際いち早く展開する盾が後手に回るわけにもいかないからねエンジン出力もあげなきゃね。変換装置が大きくなったから車体を大型化しても問題なく動かせる動力も積めるでしょう。大きくなった車両が道路を走る、素早い移動が求められて避難する人を乗せたバスらを道路の脇に押しのけて戦場に向かわないとね。今度はどうする道路広げる? 国を守るために費用と基地のスペースの圧迫、知っての通りアースライトで物質を作ればサイズ問題は消えるけどいちいち作ったり消したりするにもアースライトを使うよ、護祈のあれだって毎回アースライトを使っているんだ』

「護国獣をそのまま兵器として巨大な大砲とかには」


『うんうん、前線に連れて行って待ち構えて攻撃。巨躯同士の殴り合いでなくてデカい砲撃でズドン、隣国がそうしているね。この国より厳しい情報統治されていて知らないだろうけど、攻撃外したらその先にある町が吹き飛ぶよ。海岸線で仕留めても大波が襲う。都市に人が集中していても白帝港みたいに漁港や娯楽施設だって存在する。自由と正義の国と違って巨躯での家財被害の保証も手厚くない。法律も変えなきゃね』

「ごめんなさい」


『気にせずなんでも聞いて。護国獣の理解を深めるのなら答えるから仕事でしょ、実物を見ながらの方がわざわざ資料を探すより話しやすいし。何でも聞いて!』


静かに聞いていたメロウとカヅキが口を開く。


「護祈マニアの発作が出た」

「非常に攻撃的でトゲトゲした言葉使いだけどねぇ~」


話している間に影刃青輝と正龍爆拳が進行してくる脈晶砕地へと接近、戦車隊が引き返していく。

護国獣の接近に今まで静かに移動していた脈晶砕地に動きがあった。

体に生えるいくつもの結晶が輝きだし無数の光弾をばらまき着弾地点に色とりどりの結晶が生え始める。


『すごいなスケール3はやることが派手だ』

「あれは何ですか?」


『結晶』

「いやその」


『そのまんまだよアースライトの特性、思い描いた好きな物質に変換することができる。それを使った創作物、それ以外の何物でもない。巨躯はプログラムも何もない短銃な物しか生み出せない。前にも水晶の柱や氷の球体、霧とかも作り出してたな』

「あれに攻撃能力は?」


『あったりなかったり。ほら戦車隊が結晶の破壊に移った。どうせアースライトの創作物だからいつかは消滅する偽物の物質、希少鉱石に似ていても偽物オブジェとして取っておく必要はない』


脈晶砕地に近づいた護国獣二匹が吠える。

音は遠く離れたティルトローターにも響き機体が揺れた。


「吠えてますね、記憶にある護国獣はみんな吠えてきた気がしますがあれに何か意味が?」

『あの衝撃波で家が壊れたりするよ、よっぽど近くないとそんなことにはならないけど』


「どうしてそんなことを」

『アースライトの密度の調査。音の反射率で巨躯の弱点を探すんだ。巨躯の体すべてが一定の密度じゃないから、どこか必ず脆い部分がある。できれば三方向、複数の方角から調べたほうがより精度が高くなる。弱点がわかれば戦車隊の攻撃の通る個所も見つけられてスムーズに巨躯を倒せる。戦車が何もできないわけじゃない』


咆哮が終わると正龍爆拳は拳を合わせ接近、脈晶砕地は体を回転させ3本の腕を振り回す。

影刃青輝は体を引いて攻撃範囲から離れ、正龍爆拳の装甲ように分厚い鱗で攻撃を受けとめて鉄鉱石や銅鉱石のような個所が鑢のようになって護国獣の体は激しく火花を散らせる。


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