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うちの隣にいるエジプト王子が爽やかに猫を被ってエジプト語の悪態と甘い言葉を聞けてしまうわたしはどうすればよいのだろうか

作者: リーシャ

今日は幼馴染な男がいつものように女子へ爽やかな男へキャアキャアと黄色い声をかけるのを少し離れたところで見る。


彼は学園でエジプト王子なんてあだ名で呼ばれている。


確かに言い方は古くなるが2枚目でハンサムでイケメンなので、かっこいい。


それは彼の血筋に、エジプトのものが確かに入っているから。


父親がエジプトの方の血筋なので顔つきをしている。


堀が深く肌はチョコレート色をしていて、その瞳は茶色。


髪色は黒いが、しっとりとしている。


よく街頭でスカウトされるが爽やかな顔をしていた。


「アマトくん、これあげる」


女子から誕生日プレゼントを渡されて彼がありがとうございますと敬語で述べれば彼女達はきゃー、と言って去っていく。


『おれのカバンに荷物を増やしやがって』


(!!……もう、本当にやめてほしい)


彼は悪態をつくときに誰にもわからないと思ってエジプト語でいう。


それを、幼馴染でありお隣に住むスミカたる己にバレているとは知らない。


「スミカ、これ欲しいか?」


「いらない」


お隣だから気安い態度でプレゼントをプラプラさせる男。


「こら、もっと優しくして。ものに罪はないんだから」


「あるだろ、おれはいらないと思ってるモノなんだからな」


(エジプト王子はただの子供なんだけど、顔って全部覆い隠すんだよね)


エジプト王子というあだ名にされて彼は優しさの仮面をつけるようになった。


それは、きっと昔嫉妬した女子からスミカが攻められて怪我を仕掛けたことが原因なのだろう。


それについては悪かったなと思う。


彼のせいではない。


彼は昔は今とは別人のようにそっけなかったから。


「ねぇ、近くに美味しいアイスクリームの店がオープンしたから食べに行こうよ」


「今冬だぞ。正気か」


「正気だよ」


仕方ねぇなと彼は笑って付き合ってくれる。


『冬のアイスクリームに付き合うなんてお前くらいだけどな』


「…………なっ」


「ん?」


「いや、今空に飛行機が通ったから珍しいって驚いただけ」


なんとか誤魔化す。


最近はこれに参っている。


ほとほと。


困っているといえば困る。


なんというか、いつもなにも言わないのに、フッと甘い言葉を述べるのだ。


スミカとて現代人。


なにをどうしても、鈍感に考えられない。


「アイスクリームの店に行くんだろ。鼻水対策にティッシュを忘れるなよ」


「少女に鼻水とか、王子はデリカシーがない」


「はは、王子よりは俺の方がデリカシーを持ち寄ってる」


「はいはい」


お店に向かうために学園からお店の通りを行く。


ここが地元なので地元の人も有名なアマトを知っている。


小さな頃から知っているということ。


「お、アマト。学校帰りか」


「ああ。そうだ。今からアイスクリームの店に行くんだと」


こちらを指さして彼はなんてことないように言う。


「スミカちゃん。今日は冬で一番寒い日だよ?」


肉屋のおばさんが心配そうに言う。


「大丈夫だろ。こいつの胃はダイヤモンドだしな」


「そこは鋼でしょ。なんで数段上になるの」


やりとりしていると、おばさんはおやおやと暖かな目で見遣る。


「二人とも甘党だからね。そうだ。アイスクリームを食べたらお肉も食べたくなるでしょ。これ、持っていって」


「は、払うよ」


「半額でいいからね」


地元の人なのでかなり親しいとはいえ、財布を出そうとするとアマトがスッとスマホを出して電子決済。


「いや、おばさん。おれが払う」


「あらら、じゃあもう一つね」


と、半額よりも正式な金額だったので二つ目のコロッケを渡してきた。


受け取ると鞄にしまう。


「悪いから払うよ」


「いや、奢る」


「じゃあ、もらうね。アイスクリームは半分払う?」


「いらない」


それじゃあ奢られっぱなし。


「それじゃあ私はいつまでも払えないからなにか奢るとき用に、早めに言ってね」


「わかったわかった」


彼はおざなりにスミカをあしらうとアイスクリーム屋に辿り着き、並ぶ。


「ねえ、あの子かっこいい」


「うん」


コソコソと女子生徒らしき子達がアマトを見ては囁き合う。


『鬱陶しいなあいつら』


「え、何語?」


「海外の言葉を話せるなんてもっといいかも!」


何を言っているかが問題なのだけど。


彼女達にとっては顔だけしか見ておらず、中身を見た方が後々後悔しないのではとしか思えない。


「はぁ、いつになれば進むんだこの列。寒い日なのに結構並んでるし」


「新作あるし、開店したばっかりなの」


「こんな寒い季節にアイスの専門店なんてよく開けたと思える」


「でも、うちの学園から近いし、商機は計画的にだと思ってるよ?」


学園の近くなので、売れるという理由がなにより大きいと思うのだけどね?


こうやって列ができているということは、大受けした証拠。


「さみぃだろ」


「美味しいに寒さはない」


「ある」


彼は文句を言うが帰ろうと言うことはなく、最後まで列を並び切った。


注文してアイスクリームを持ちながら帰る。


「流石に口を付ける気になれない」


「そこは血筋パワーでなんとかかぶりついてもらっていい?」


「人類だから人類以上のことはできないんだが?」


「あはは、ごめんごめん。食べなくていいよ。普通に冷蔵庫に入れて家の中で食べよう」


「お前んちに行っていいのか?」


「うん。母さんは多分手習いのお琴で二時間くらい居ないしさ」


「普通はいるときに誘うだろ」


「そこは幼馴染特権だよ」


ふらふらと道を行く足音。


アイスクリームの入った箱を持ち家に入る。


「本当に入るのか」


「なに?今更……昨日まで言わなくても入ってたくせに」


「いや……別に」


「あ!」


声をあげるとビクッと彼の肩が揺れる。


「わかったー」


「なんだ、大声出すな」


「いやいや!だってさ、昨日幼馴染系のドラマ見たっしょ」


「…………見てない」


嘘が下手だ。


こういうときこそ、いつもの母国語を振るえばいいのに。


「あはは!アマトも同じの見たよね?私も見たもん」


内容は幼馴染を恋愛対象に見てくれない理由として、家に上がらせるというもの。


確かに、そういう見方もあるがなかなか深刻な理由もある。


「入れなかったら、母さんに怒られる」


「それも、そうか?」


「アマトのお母さんだって逆の立場にさせたらアマトのこと怒るよ。寒いのに入らせないなんてって。思春期小僧めって言われるけど?」


「言うだろうな。うちの母さんは」


アマトの母とスミカの母は仲が良い。


「いーから入って」


半ば、無理矢理中に入らせた。


でないと、渡したいものがあるから。


「待ってて」


リビングにアマトを置き、部屋へ行くと必要なものを引っ掴んで戻る。


「はい!お土産」


手渡すそれに、彼は目をぱちくりとさせる。


「ん?」


「旅行のお土産」


「そうなのか。どこ行ってきたんだ」


「北海道」


「はあ?こんな寒い時期にか?」


「こんな時期じゃないとキツネは見れないし」


「家族ごとはすごいぞ」


と言いながらお土産を見る。


「これストラップだから」


「キツネだな」


「うん。わたしは牛ね」


「逆だろ。お前がキツネでおれが牛だろ」


「え?」


スミカは目を丸くしてストラップを見るが、どちらも対して可愛さは変わらない。


なにが逆なのか、彼の言い分には理解が及ばなかった。


「冷蔵庫にアイスクリーム入れるね」


「ああ」


アイスクリームをキッチンにある冷蔵庫に入れると、戻ったあと例の幼馴染系ドラマを再生した。


「お前キモが座りすぎだろ」


「え〜?別に〜」


気にしすぎなのは彼の方だと思うのだ。


急に異性の幼馴染ぶるとは。


「気にしすぎ」


『こうやって上がるから男として見られてないのか?』


「もう、二人の時に言わないでよ」


「悪い。癖で」


母国語をボロッと出す彼はハッとした。


ほんとうに無意識だったらしい。


許そうではないか。


「コロッケを食べようよ」


「アイスクリーム食べないのか」


「夜ご飯食べてからにする」


そう告げて、男は今日は食べていかないのかと聞く。


「今日は餃子だよ」


「お、このうちの餃子は手作りだから絶品なんだよな」


「うちは中華美味しいしね」


そうして、彼はうちで食べていくことになった。


アイスクリームは食べた。


めちゃくちゃ美味しかった。


暖かな部屋で食べるアイスクリーム程、贅沢なものはなし。


アマトも美味しいに食べていたのでやはり美味しいでしょと自慢。


そうしたら、彼は笑って寒い日はあまり関係ないだろと部屋の温度を確認して述べる。


『ドヤ顔も可愛いな』


「くっ!」


なんとか耐えていたら、呑気に何も知らない幼馴染は首を傾げてこちらを怪訝そうに、見ていた。


あなたのせいですけどねっ!

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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