木登りに挑戦
マリーヌは、人生で断トツに心細かったときに、救ってくれたような少女に恩返しがしたかった。
(そうだわ!私は猿なんだし、木登りが得意よね??高い木になっている食べられる実をとってくればいいんじゃない?!)
マリーヌは意外と行動的であった。
早速、近くの小さな森に向かい、食べられそうな実がなっている木を探す。
しばらく、歩いていると、目当ての木を見つけた。甘い果実がなる、ヤンガーの木だ。
その木に登ろうとするが、登り方がわからない。手をかけるが、握力がなくて、落ちてしまう。
(うう、痛い!木登りって難しいのね…)
でも、負けず嫌いなマリーヌ。
何度も挑戦して落ちてを繰り返していると、ウキッキッキーと声がしてきた。
見ると、木の上から、猿が馬鹿にしたように笑っている。
(くっ!!猿に馬鹿にされるなんて!!)
マリーヌは悔しくて、歯を食いしばった。もう一度挑戦しようとするが、登れない。
(猿になったからって、木登りできるようになるわけじゃないのね…)
マリーヌは自嘲気味であった。
「ウキっ!ウキキッーウキウキキキーー!!(おい!そこの猿!果物を寄越しなさい!)
どうせ、伝わらないと思い、身振り手振りで乱暴に伝える。もう投げやりであった。
「ウキっ、ウキキキキキキー。ウキキウキ―。ウキっキキ、ウキキキーウキー。
(ハンっ、お前みたいに木登りができない奴初めて見たぜ!仕方ない、可哀そうだから、1つ俺様が恵んでやろうじゃないか。俺様優しいー‼)」
(あれっ?猿の言っていることがわかるわ!やった、通じたわ!)
言葉が通じることに気づき、マリーヌは嬉しかった。
落ちてきた果実を拾い、「ウキ―!(ありがとう!)」と素直にお礼を言い、少女の元に戻った。
いつものマリ―ヌなら、もっと果実を寄越しなさいとか、偉そうだとか文句を言ったが、この時は言葉が通じた嬉しさと果実を手に入れたことでやり遂げたような気分であった。
「あれっ?!お猿さん、戻ってきたんだね!いなくなっちゃったから、帰っちゃったのかと思ったよ!」
少女は明るく出迎えてくれた。
「ウキーっ(どうぞ)」
果実を差し出すと、「わぁ!ありがとう!!ヤンガーの実って、木が高すぎて採れないんだよね!採ってきてくれたんだね!ありがとう!みんなで分けて食べよう!」
マリーヌは少女と母親に採ってきたつもりであったが、少女は当然のようにマリーヌにも分けてくれた。
(なんていい子なのっ!こんな猿にも優しくしてくれるなんて…。まるでリリアンのよう。)
マリーヌは感動し、自分とは似ていない優しいリリアンのことを思い出した。
(リリアン、今頃どうしているかしら…。いなくてびっくりしているかしら。でも、もしかしたらリリアンが毒を盛ったかもしれない…。いなくなって清々しているかもしれないわね。)
マリーヌは自嘲気味にそんなことを思った。
一方、当のリリアンが猿になってウキウキでいることを知りもしない。