少女との出会い
マリーヌは夜中から歩き続き、疲れていた。日の出まであと少しというころだ。思えば、こんなに長く、歩いたことはない。
城外の近くの森を抜けて、歩き続けたが、まだ王都内。街中を歩くと目立ってしまうため、なるべく、木々が生い茂る道を行く。貴族街をぬけて、民家が数件建ちならぶ。
(そろそろ、休もうかしら。ああ、喉も乾いたわ。)
ちょうどよく、小川を見つけ、ふらつきながら近づいていく。我慢できず、顔を洗って水を飲んだ。
(うう、川のお水なんて初めて飲んだけど仕方がないわね。歩き続けて、足が痛いわ…)
毒を盛られたという危機感から、必死に歩き続けていたが、気づけば、足の痛みを感じた。
ふと、小川に映った自分の姿を見て、驚く。
「ウキっ???!」
自分は何も着ていないで、裸じゃないか。
驚いて、声がでたが、猿の鳴き声だ。
(えっ、声まで猿なの?!何てことなの…。これじゃ、助けを呼べないじゃない。私が誰だかも伝えられないわ!)
当然のように喋れると思い込んでいたため、落胆した。
(これから、どうしよう…。やっぱり帰りたいわ。どうして私がこんな姿で逃げないといけないの?!)
最早、心細くて泣きそうであった。
(そうだ‼魔法は使えるかしら?不思議と魔力は感じるのよね。)
気を取り直して、自分に洗浄の魔法をかけようと、
「ウキ―っ!(クリーン!)」
詠唱してみたところ、魔法が発動しない。
(どうして?!魔力は感じるのに!詠唱の問題なの??それじゃ、ずっと魔法が使えないじゃない!)
マリーヌは絶望した。
そんな時、
「あれっ?こんな所にお猿さんがいる‼」
可愛らしい少女の声がした。振り返って見ると、10才前後の少女がいた。髪を2つに結んでおり、そばかすのある素朴な少女である。手には籠を持ち、薬草らしきものが入っていた。
「どうしたの?仲間とはぐれたの?」
マリーヌには、それが天の助けのように聞こえた。
「ウキキ――ッ…」弱弱しく、答える。
「お腹が減っているの?今は何も持っていないけど…家にくる?」
「?!ウキ―――!」気づけば、少女の元に走り寄っていた。
こうして、マリーヌは少女の家に行くことになった。