毒を盛られた?! 猿になったマリーヌ
夜中、マリーヌは息苦しさから目を覚ました。
(何なの?苦しい。胸が締め付けられるようだわ。)
胸を抑え、誰かを呼ぼうと声を出そうとするが、苦しくて声が出ない。
(毒を盛られたかしら?こんなに苦しいなんておかしいわ。)
ベッドの上で苦しみに耐えるのが精一杯で、助けを呼ぶことができない。必死に、ベッドサイドにある本に手を伸ばし、ドアに向かって投げつけるがそこまで大きな音は出なかった。苦しくて手に力が入らない。
そのうちに、自分の体に異変が起きた。どんどん小さくなっていく感覚、見ると、腕は毛むくじゃらである。
(何??どうなっているの?こわい‼)
マリーヌは自分の体が変化していく様子に、恐怖を感じた。
気づけば、来ていた寝巻は、大きすぎてダボダボになっている。鏡の前に走っていくが、何故か4足歩行である。鏡の前に行き、驚きすぎて声が出ない。
(何なの??なんで猿になっているのよーーーーー!!!!)
夢かと思って必死に頬を抓るが、全然起きる気配はない。
(まさか、本当に猿になっちゃったの・・?すごく苦しかったし、毒を盛られたのかした?でも、誰が?毒の失敗で猿になっちゃったとか?犯人がわからないし、生きているってバレたら殺されるかもしれない。)
マリーヌは混乱している中で、必死に考えた。
(昼間のお茶会が怪しいかしら?でも、お兄様もリリアンもそんな人じゃない。後継者なんて、お兄様に決まっているんだし、誰もが認めているんだから。
でも、もしかしたら、私を後継者にって推す人がいて実は邪魔だったりして?それとも、新薬開発を断ったから?
リリアンも聖女として成功しているし、妬むはずないじゃない。
でも、美容部門で成功しているのを実は良く思ってなかったりした?
ああ、私が天才であるばっかりに罪な女だわ。)
マリーヌは迷走した。
変身前の苦しさから、すっかり毒を盛られたと勘違いしたのだ。それほどつらかった。
(兄妹を疑うなんて嫌だわ。侍女かもしれない。もう誰を信じていいかわからないわ。
毒を盛られた以上、犯人がいるのよ。それが誰かわからない以上、助けを安易に呼べないわね。」
マリーヌは、一旦隠れることにした。
(でも、部屋の中にいては危険だわ。猿になったけど、瞳の色もそのままだし、毛も私の髪と同じ色だわ‼猿になったなんて予想外のことかもしれないけど、万が一犯人にバレたらこんな姿じゃ抵抗できないし殺されるわ。とりあえず逃げないと。)
窓から、静かに外に出て、何とか脱出した。
マリーヌは生粋のお嬢様である。木登りなんてしたことはない。
でも、できないなんて言ってられない。汚れるのも構わず、無我夢中で外に逃げ出した。
(本当はお兄様やリリアンに助けを求めたいけれど…。仕方がないわ。)
マリーヌは、白亜の城を名残惜しそうに1度振り返り、その後、再び歩き出した。もちろん4足歩行で。