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三級ハンター

 再検定の二日後。大和の家にハンターライセンスが郵送されてきた。それを自室で開封する大和。


「三級になってる!」


 同封されている手紙には昇格した旨と、検定の結果に対する説明が書かれている。


「二級相当の力は備えているが、実績がないため三級として活動していただき、その成果によりいずれは二級への昇格を……か。まあ妥当だな」


 強いからと言っていきなり二級に上げて、無茶なゲート攻略でもされたら大変だ。それで死んだりなんかしたら目も当てられない上、協会としての責任も問われる。そのため、滅多なことではすぐに昇格することはないのだが、


「やっぱり愛さんと、かぐやは化け物だな」


 希生愛は国内最速で一級ハンターへと至り、早乙女かぐやもそれに負けず劣らずの速さで二級になっている。


「っていうか、神剣ギルドからの勧誘も受けてんだよなぁ……」


 大和は愛から受け取った名刺を机の上に出しぼんやりと眺める。一級ハンターから直々の勧誘。当然、愛本人が大和に興味を抱いた訳ではないが、滅多にない事態に興奮が抑えられない。


「あのゲート攻略の救援で神剣ギルドが来たから目に止まったのか……どうしようぅ!」


 大和は悩んでいた。国内に無数にあるギルドの中でも神剣ギルドは最大手。活動拠点も東京で大和の家からも近い。何よりも愛が所属している。


 だが、日本国内にあるギルドは神剣だけではない。他にも有力なギルドが多数存在しており、ギルドの活動方針や特色などの相性もある。さらには、フリーランスとして個人で仕事をする方法もあるため、取れる選択肢は様々だ。


 ギルド選びはかなり大事で、犬猿の仲のようなギルドも存在している。神剣ギルドでいえば、同じ東京を拠点としてる破邪ギルドとは仲が悪い。同じ土地でゲートを取り合う仲であり、ギルドのトップ同士の仲が険悪なことが要因とされる。


 そのため、神剣ギルドに所属したハンターは破邪ギルドへの再就職はほぼ叶わないなどといった問題がある。あとは所属ハンター同士の恋愛なども色々と軋轢を生む。


「こういう時は、」


 大和はスマホを取り出し電話をかける。自分よりも先を行くハンターで気軽に相談ができる仲の友人かぐやに。


「もしもしー、神剣ギルドから誘われたんだけどどうしたらいいかな?」

『はいかぐやですけど──どぅえええええっ!?』


 電話が繋がって開口一番に相談事を投げた大和に対し、かぐやは大きな声で驚いた。


『四級のあんたが神剣ギルドに!? 寝言は寝て言いなさい!?』


 かぐやは大和の報告に疑いの声を上げる。それも無理はないが。


「今日から三級になりました!」

『まあ、あんたがそういう冗談言うタイプじゃないのは知ってるけど。でも三級で神剣ギルドから勧誘って、それもおかしな話だけどね』


 大和の性格から報告内容を信じたかぐやだったが、それでも神剣ギルドからの勧誘という点においては納得していない。


『それで、自慢したかったの? あいにく私も神剣ギルドから誘われてるしぃ、破邪ギルドからも、その他にもいっぱいスカウトされてるんだからね!』

「負けず嫌いめ……」


 ものすごい勢いで捲し立てるかぐやに大和は呆れて苦笑いを浮かべる。


「フリーの良し悪しを聞きたかったんだよ。そんなにオファーが来てるのにどこのギルドにも所属してないなら、それなりのメリットがあるんだろ?」

『はあ、そういうこと』


 大和からの問いに合点がいったかぐやは「最初からそう言いなさいよ」と理不尽に怒りながらも説明してくれる。


『私は今のところフリーだけど、ずっとそうであるつもりはないわ。でも、あんたもギルド間の確執だったりがあるのは知ってるでしょ?』


「ああ」


『だから、ギルドを見定めるための時間としてフリーでやってるだけ。フリーのハンターなら、バイトでいろんなギルドの人たちと仕事ができる。神剣とも破邪ともね。あ、それは私が強いからか』


 嫌味を挟むかぐやだが、本当に強いため大和は言い返せない。


『そうやって各ギルドの実態を見てるの。それに、一つのギルドに所属すると他のハンターと組みづらくなるからね。ギルドの人数が多いと、その中だけでパーティーが組めちゃうし。神剣ギルドなんか粒揃いだから、外で強い人を探す必要なんてないだろうしね。その点私は強くて可愛い上に名前が売れているから、神剣ギルドであっても協力要請をもらうこともあるけどね』


「はいはい。分かりました」

『何よその適当な返事は!』


 軽くあしらわれたかぐやはキーキーと怒っている。かぐやの話を聞いた大和は電話の向こうにいるかぐやへ礼を言いながら決断を下す。


「俺、神剣ギルドに入る!」

『まあ妥当ね。この後一生オファーもなくて、自分から入社希望を出しても採用してもらえない可能性だってあるし』

「怖いこと言うなよ」


 かぐやの言う通り、三、四級のハンターにはギルドに所属したくてもできず、フリーターとして働いている人もいる。この機会を逃せば二度と神剣ギルドに入れない可能性だってある。


『ねえ、あんた今度土曜暇?』

「え?」


 大和の相談事が終わると、不意にかぐやから予定を問われた。


「暇だけど」

『ちょっと付き合いなさいよ』

「ゲート攻略?」

『違うわよ! ばか! 土曜の八時に舞浜駅集合! いい!?』

「は、はい!」


 鬼のような剣幕で怒鳴られた大和は驚き、反射的に姿勢を正して返事をした。負けず嫌いで少し怒りっぽいかぐやであるが、ここまで怒鳴られたのは初めてで、大和はびっくりして心臓が止まる思いだった。

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