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「さて、どうするかな。」鞄に押し込まれ、折れ曲がった智佳を、自室の机に放り出して同級生が呟く。憎いライバルの持ち物だったマスコットだ。辱めてやりたいと思っているのだろう。彼は人形を握り潰した。持ち主が負けたのだから、智佳はもう彼の物だ。好きにされるしかない。哀しかった。裕樹が大切に扱ってきたので傷みは少なかったが、元々は古い人形だ。投げられたり、叩き付けられたり、乱暴に弄ばれる内、縫い目が緩んでくる。同級生の手汗が体に滲む。
「みすぼらしくなったな。少し伸ばしてやるか。」同級生が腰を浮かせ、ぐにゃぐにゃになった智佳を尻と椅子の間に押し込む。人形の体でも息苦しい。思春期の男子特有の脂に加え、青臭い陰部の匂いまでもが全身に染みていく。マスコットの体では逃げ出すことすら出来ない。ただ嬲られるばかりだ。今、自分にされていることを、裕樹が見たらどう思うのだろう。こんな屈辱的な姿を見られるのは、恥ずかしく、惨めだった。すっかり平たくなってしまった智佳が再び机に置かれる。
同級生が引き出しから何か取り出す。体に痛みが走る。縫い針が刺さっていた。繰り返し貫かれ、糸が通されていく。彼は不器用な手付きで、自らの名前を刺繍していた。自分を蹂躙した男の名が、智佳の体に醜く刻み込まれていく。痛みで心が屈伏しつつある。もう彼の持ち物にされてもいい、早く終わって欲しかった。人形の動かない体の中で智佳はもがき苦しむ。一突きごとに頭が痺れた。針仕事が終わった頃、智佳はすっかり逆らう気持ちを失い、同級生に隷属していた。