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古びたソファーに腰掛けて、明けていく海を眺めている。サークルの合宿も半ばを過ぎ、非日常の生活にようやく体が慣れてきたが、今朝は妙に目が冴えて、再び寝付くことが出来なかったのだ。薄暗い廊下の奥で物音がして、誰かがこちらに歩いてくる。後輩の智佳だった。
「随分早起きだね。」普段は頭の回転が早く、もの静かで控えめだが、テキパキと動くタイプの後輩だ。しかし今は寝ぼけたような顔をしている。彼女は向かいのソファーに座った。
「はい…変な夢、見ちゃいまして。」うなされたのだろうか、汗に濡れた前髪が少し、額に張り付いている。Tシャツが湿って、やや透けていた。女の匂いがする。何か懐かしさを感じる体臭だった。以前、智佳の部屋に行った時も同じ香りがした。
「どんな夢?」あどけない後輩に女を感じてしまい、戸惑いながらも平静を装って尋ねる。
「それが…」口ごもる智佳の唇の端が、唾液で濡れていた。涎を拭う余裕さえなかったのか。息が荒く、胸が波打っている。シャツが密着して、小さな膨らみが二つ、はっきり確認できた。視線を逸らそうとすると、今度は短パンから覗く小麦色の太腿が目に入る。
「怖い夢、だったの?」ドギマギして声が上ずってしまった。薄暗くひっそりとした広間で、寝起きの少女と二人きり。意識したことのない後輩がひどく艶かしい。彼女の首筋を伝った汗が、胸の谷間に吸い込まれる。
「どうだろう…」しばらくの沈黙の後、智佳は少し首を傾げ、答えた。
「話したら、すっきりすると思う。」何だか秘密を共有するみたいで、少し興奮する。彼女は潤んだ瞳でこちらをそっと見つめた後、小さく頷く。夜明けの静寂の中に智佳の息遣いだけが聞こえた。
「中学の頃、好きな男の子がいました…」羞じらいからか、少し声が震えている。その甘く柔らかな声に心をくすぐられながら、目を閉じて聞き入った。