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つまりそれは溺愛希望ってことで合ってる?  作者: 佐伯帆由


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18/35

17.本題までが遠すぎる

間に合ってヨカッタ!!

今回もどうぞよろしくお願いします。


 学園には大きな図書館がある。これは私が一番、楽しみにしていたものだ。

 だけど、図書館の仕組みも前世と全く違った。棚に本がいっぱい並べてあって、歩き回ってお目当ての本を見つける……、という、馴染み深いやり方ではなかった。

 図書館の入り口を入ると小さな引き出しがいっぱいついた棚がずらっと並んでいて、引き出すとカードが詰まっている。前世の昔の図書館には同じものがあったから、使い方がわかってよかった。

 一枚のカードには一冊の情報が書いてあって、コレにしようかなという本が決まればカードにある番号を控えてカウンターの職員さんに申し込むと、職員さんが奥から本を持ってきてくれる、という仕組みだ。そこで初めて本を手に取ることができる。

 本は貴重品なので、気軽にパラパラと立ち読みする、なんてことはできないし、端を折ったり落書きなんてしようもんなら弁償と反省文提出らしい。図書館の入り口横の棚の中には、なんと歴代の反省文が氏名罪状(?)付きで晒しモノ、いや展示されていた。卒業しても残るんだよ、これ。怖。


 そして、図書館は男女で使用できる日付が違うとわかった。だから、図書館でヤバい人に遭遇!とかもないはずだ。やったぜベイビー。


 寮の部屋は、自分の部屋なんかとは別に、使用人の部屋も付いていた。マリさんはここに寝泊まりして私の世話をやいてくれることになる。学園内には使用人の控え室もあって、炊事裁縫なんかもできるそう。私が授業を受けている間は、マリさんはそこで過ごしたり寮の掃除をしたりして過ごすんだそうだ。なんというか、もう、異次元すぎて、かえって諦めがついたよ。マリさんよろしく。


 マリさんがいないと、お義姉様の侍女がいなくなってしまう。うちの誰かが付くのかな?と思っていたら、お義姉様の婚約者様は、ちゃっかりと自分の手の者を二人もヨーエンギー家に寄越していた。お義姉様のことを大切にしないような侍女たちなら、やっつけてやる!と思っていたけど、以前から顔見知りでお義姉様がブルックスリスト家に行くたびに世話をしてくれた人たちなんだって。やっつけるどころか、万一私がお義姉様の不興を買うようなことをしでかしたら、私の方がやっつけられそうな勢いでお義姉様を大切に世話している。ブルックスリスト様め、すでにお義姉様囲い込み包囲網を作りつつある。ちっ。ま、逆よりずっと安心だけどね。



 

 初日の授業は、なんとふたつだけ。午前中に二時間で終わり。婆の学習意欲をどうしてくれる。しかも、ひとつが外国語で、もうひとつは刺繍だ。でもまあ、刺繍もスキだ。婆もよくやってた。レース編みなんかもよくやったな、前世では。手芸は嫌いじゃなかった。外国語ももうある程度わかる言葉だったから、二時間とも問題なく終えることができた。ふう。


 けど、この学校には恐怖の芸術系授業もある。ひーえー。芸術からは逃れられないのか。音楽と絵画から選ぶんだって。どっちも苦手だけど、まだ絵画の方がマシかな。楽器弾けないし。え、歌?……聞かないで。絵もヒドいけどね。前世でも飼ってた猫の絵を描いたら、生命体としてあり得ないとか悪夢に出てきそうとか散々言われたっけ。モルズベリー様みたいな才能が本当、羨ましいよ。


 モルズベリー様といえば、モルズベリー様から頂いた絵(例の私が寝コケてるやつだ)は、あまりにも上手に綺麗に描いてもらったので捨てるに捨てれず、日記の最後にこっそり挟んである。で、時々引っ張り出して眺めてはぎゃーって叫んでる。じゃ最初から見るなよって話だけど、そういうのって、見ちゃわない?で、また叫んじゃう。メッチャ変顔で映っちゃった写真みたいに……私だけか。


 そんなこんなで、しばらくはお義姉様にくっついて色々な授業を見学し、進行度合いなんかと私の学力を照らし合わせながら時間割を決めていくことになった。ありがたし。




 さて、学園生活第一関門の「交流の時間」。お義姉様はお友達の皆様に私のことを話しておいてくれたらしく、ご令嬢方はにこやかに受け入れてくれた。もちろん、貴族スマイルなので「平民上がりのクセに」とか思っているかもしれない。淑女の皆さん、大人だな。前から思ってたけど、こちらの子供たちは心身ともに早熟だ。平均寿命が短いからかな?文化かな?

 けどまあ、表面だけでも穏やかに接してくれれば、私としては当面は十分だ。


 お義姉様に誘われてお友達の皆さんと食堂で昼食をとっていたら、事務員さんが私を探してやってきた。校長先生がお呼びとのことだ。

 もう昼食も食べ終わって、お義姉様たちのお話をただにこにこと拝聴していただけだったので、私はこれ幸いと立ち上がった。お義姉様に「また授業で」と言って淑女の礼をする。コレ本当に頑張って練習してよかった。周りの人達が目を丸くして見てたもん。

 間の悪いことに明日から十日休みの始まりだ。お義姉様に会えるのはずいぶん先だな。くすん。


 さて、フェルワース校長先生と対決だ。




 実は男子生徒との遭遇率が一番高いのは、職員室をはじめとするスタッフルームだったりする。私はあたりをキョロキョロして誰もいないことを確かめつつ、校長室へと向かった。事務員さんが案内してくれてよかった、迷子になんて絶対になりたくない。


「どうぞ、お入りください」


 事務員さんがノックをしてドアを開けてくれた。中には、校長先生だけではなかった。ブルックスリスト様と、モルズベリー様がお揃いだ。どうしてお二人が?

 学園の制服ですら華麗に見えるお二人は、椅子から立ち上がって挨拶してくれた。ブルックスリスト様はいつも制服姿でお義姉様を迎えにくるから見慣れてるけど、モルズベリー様の制服姿は初めてだな。本当に学生さんだったんだ。二人ともキラキラの貴族様だ。眩しいぜ。


「まあ、入って」


 驚きすぎて礼すら忘れていた。慌てて中に入ると、壁際に目つきの鋭い従者さんがいるのに気付いた。この人、校長先生と一緒にウチに来た人だ。

 校長先生は私に椅子を薦めると、ブルックスリスト様とモルズベリー様にも座るように促した。


「この二人にも同席してもらうことにした。今から話すことは私たち以外には話さないでもらいたい」


 なんだかずいぶん物々しいな。一体なんだろう。私、何をしたっけ。


「君の提出した論文なんだけどね」


 前置きも世間話もなくフェルワース校長先生は話し出した。合理的なのかせっかちなのか。そういや、ウチに来た時もそうだったな。


「他国についても同じように調査をお願いしたい」


 先生は私の驚愕は置いてけぼりで、どんどんと説明した。私は頷くのがやっとだ。


 要するに、私が提出した郷土料理と地形を結びつける研究を、他国に関してもやってみてほしいという話だった。

 自国の地形や道路の位置などは、安全上外国には詳しくは公表していない。逆に、我が国でも他国に関しては、ぼんやりとこの辺に山、この辺は海に面しているとかいう程度にしか知られていないのだ。


「そのぼんやりとした他国の地図に傍証がほしいのだよ、確かにこの辺りには山脈がありそうだ、という程度でかまわない」


 ……えっと。つまり、そんなぼんやりした情報でさえも必要な状況だということかな?まさか隣国に進軍するとか、旗頭はモルズベリー様とか、そういう物騒な話じゃあるまいな。


「君がなにを妄想したのかわかるような気がするが、そういったことではない。単に、仲良くするにも喧嘩をするにも、まずは相手をよく知っておくべきだという程度のものだよ。君の研究はあくまでも、すでに知られていることへの裏付け程度だと思ってもらえればいい」


 納得がいくのかいかないのか、よくわからないような話だ。


「ルルーシュ嬢」


 モルズベリー様が柔らかく話しだした。この方だって学生のはずなのに、校長先生の話の最中に割り込んでくるとはいい度胸だと思ったけど、それができるほどの立場の方だったのだなと改めて感じてしまった。


「僕がここにいるのはね、君の論文の危険性を校長に知らせたのは僕だから。君の保護を頼んだ」


 驚きから未ださめない私はどう反応していいのかもわからない。発言していいのか、頷いていいのか。


「僕にはいつものように話してもらって構わないよ、ルルーシュ嬢」


 無反応な私に気付いたのか、モルズベリー様が柔らかく言ってくれた。でもさ、いつものようにって言われてもな。


「……ではその。私を保護、でしょうか、モルズベリー様」

「そう。君の論文が広く世に知られるようになったら、君の身が危ないかもしれないだろう?」

「まさかそんな……」

「君、危機感が足りないよ。他国にも、我が国の地形風土は知られていない。が、君の論文を読み解いて、利用しようとする輩が現れるかもしれない」


 そんなバカな。と、口を開こうとする私を、モルズベリー様は柔らかい笑顔で制した。ある意味怒鳴られるより(アツ)を感じるよ。

 

「だからね、他国が手を出せないほど君の研究が有名になるか、逆にあまり利用価値がなく、他国の興味をひかないか、どちらかはっきりするまでは君の身柄を保護するべきだと思ったんだ」


 私は口を開きかけ、閉じた。危機感が足りないと言われれば反論できない。このくらい用心するのが、この世界では普通なのかもしれないからだ。

 フェルワース先生は私をじっと観察していたが、やがてニッコリと笑いかけた。いや、こちらも怖いです。帰っていいですか?

 

「とまあ、そういうわけなんだが、先ほども言ったが君自身は気負うことなく研究してもらえればいい。成果を上げなければならないということではない。

 君は乗り気ではないようだが、これは決定事項だよ。研究場所や時間などの詳細は後で知らせるとして。

 さてと、これからが本題なんだが」

「ええっ!?」


 今までの、前置きだったの!?


「君の論文に興味を持たれた方がいる。君よりひとつ年下だが、同様の研究をされている方だ」


 ……ん?

 私よりも年下に対して、校長先生が、敬語?


「いたく感心されてね。共同研究をお申し出なのだ」


 ……ヤバい。これ絶対、すごくエラい人だ。まずい。こ、断ってもいいかな?私はモルズベリー様とブルックスリスト様を交互に見つめた。助けて、ヘルプミー!


「どうかしたかな、ルルーシュ嬢」


 モルズベリー様が助け舟を出してくれた。あ、ありがとう!!


「大変光栄なのですが、私にはとても務まりませんので、辞退させていただきます」


 私の早口に、校長先生は呆れた顔をした。


「そんなに急いで結論を出さなくても。最後まで聞いてくれ」


 最後まで聞いたら断れなくなるヤツだからですっ!!


「共同研究をお望みなのは、第三王子殿下だ」


 そんな。一番近寄っちゃいけない、顔が良くて家柄が良くて頭のいい人じゃないか。その人と共同研究!?私の今までの苦労は一体。

 私の視界は暗転した。



ありがとうございました。

次回は来週末を予定しています。

またどうぞよろしくお願いします。


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