詐欺によく会う青年
光一「ふぃ~。終わったぁ~。あ~。疲れた」
乙女「お疲れ様です。おじさんくさいですよ、先輩」
光一「しょうがないでしょ。だって4件だよ? 今週で。まだ水曜なのに」
乙女「それを全部一人で、ですもんね。さすが出世頭。先輩の業績、すごいことになってますよ? いい加減私にもコツとか教えてくださいよ。何をしたんですか?」
光一「いやー。偶然だよ。偶然」
乙女「またそうやって誤魔化す。偶然がそんなに続くわけないじゃないですか」
光一「いやほんと、たまたまなんだって」
乙女「も~。その冗談は聞き飽きました。ね~。どうやってるんですか~」
光一「おっと。今日は午後休でね。おじさんは退散させて貰います。おつかれさんでした~」
乙女「あ。コラ! ……もう。またこのパターン。また1件追加かなぁ」
場面転換 自宅
チャイム音
光一「ん? はいはーい」
ドアを開ける
詐欺師1「こちら、真鍋光一様のお宅で間違いないでしょうか?」
光一「真鍋光一は私ですが……。どちらさんです?」
詐欺師1「失礼。私、こういうものでして」
名刺を差し出す
光一「……はぁ。役所の方ですか。あぁ、すみません。中へどうぞ」
詐欺師1「失礼いたします」
移動
光一「それで、本日はどのようなご用件で?」
詐欺師1「誠に申し訳ございません!」
光一「お、おおぅ?」
詐欺師1「我々のミスで真鍋様の個人データが流出してしまいました」
光一「…………マジか」
詐欺師1「誠に申し訳ございません。真鍋様は既に個人データカードを発行されておりますので急ぎ新たなカードへと取り換える必要があります」
光一「郵送とかでは出来ないと?」
詐欺師1「ええ。既に個人データカードの利用は停止していますが、流出させてしまったデータがデータですので直接参りました」
光一「ほう。なるほど」
詐欺師1「誠に申し訳ありませんが、個人データカードを預からせていただきたく」
光一「分かりました。ちょっと取ってきますんで少々お待ちください。あ。飲み物いります?」
詐欺師1「いえ。お気になさらず」
部屋を離れる。
光一「えっと、確かここに。お。あったあった」ガサゴソ
部屋に戻ってくる。
光一「すみません。お待たせいたしました」
詐欺師1「いえ。こちらこそお手数をおかけして――――」
ガチャン。と手錠がかけられる。
詐欺師1「―――え?」
光一「えー。13時32分。詐欺罪で現行犯逮捕します」
詐欺師1「……は? え? けい、さつ?」
光一「そうですよ。お巡りさんです」
詐欺師1「はぁ!? おまっ。ラーメン屋のバイトじゃねぇのか!?」
光一「……名前まで調べてるのに何でみんな僕をラーメン屋のアルバイトって勘違いするの? どこの真鍋さん?」
場面転換
職場(警察署)
光一「お疲れ様で~す」
乙女「あ。先輩お疲れ様です。後ろのは詐欺師ですか?」
光一「正解。よく分かったね~」
乙女「そりゃ分かりますよ。今週5件目ですね」
光一「今日は午後休だった筈なんだけどなぁ」
乙女「今日『も』、ですよね?」
光一「そうなんだよね。これ、働いた扱いになって有休消化されないんだよ。パトロールしてたことになる。いや、とても良いことなんだろうけどね」
乙女「実際してたから捕まえたんでしょう? 流石ですね先輩。ところで詐欺師を見極めるコツは―――」
光一「あー。取調室に行かないとー。じゃまた。あ、後、明日はまるっと休むから」
乙女「了解です。いい加減ちゃんと有休消化してくださいね。上から『先輩に言っといて』って私に来るんですから」
光一「あはは。僕も取りたいよ」
場面転換。翌日
光一「さて。昼ご飯を……」
電話がなる
光一「はい。もしもし?」
詐欺師2「もしもし、オレオレ。オレだけど」
光一「…………どちら様?」
詐欺師2「オレだよ。声でわかるだろ?」
光一「…………あぁ。光二? どうした?」
詐欺師2「いやー。実は会社でミスして……ちょっと金欲しいんだけど……」
光一(はぁ。誰なんだろうね光二って。そんな人知らないんだけど。えーっと。逆探知機は――――)